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A social network of hospital acquired infection built from electronic medical record data.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Mar 6.
Cusumano-Towner M, Li DY, Tuo S, Krishnan G, Maslove DM.[要旨] 目的:院内感染の集団発生シミュレーションを行うための入院患者の社会的ネットワークを、他の目的で集められた既存の電子カルテ(EMR)のデータを利用して作成することを目指す。方法:入院患者間の接触をモデル化した。同室の患者間の接触は入院、退院、転室データから、医療従事者との接触は医療記録から推論される。これらの接触はネットワークの作成に利用される。本ネットワークをMRSAとインフルエンザの院内流行のシミュレーションに用いた。結果:患者隔離、手指衛生の実施、スタッフのワクチン接種は、感染の広がりを減少させた。ディスカッション:EMRのデータから入院患者の社会的ネットワークを生成する方法を開発した。本手法は病院環境を反映し、人手収集データが不要で、ほぼリアルタイムに更新できる利点がある。結論:入院患者の社会的ネットワークはEMRデータの新規的な二次利用を示している。今後の課題は妥当性検証と他のタスクへの応用である。
(新田見有紀 特任助教,2013年3月28日)
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Building a robust, scalable and standards-driven infrastructure for secondary use of EHR data: the SHARPn project.
J Biomed Inform. 2012 Aug;45(4):763-71.
Rea S, Pathak J, Savova G, et al.[要旨] SHARPnプロジェクトは、電子カルテの二次利用を可能にするフレームワークの開発を目的としている。その実現に際して最大の技術的課題は、国内の様々な病院施設からもたらされる多様なデータの標準化である。今回、我々はそのプラットホームの試作品を実装し、それをもとに2つの病院(Mayo病院、Intermountain病院)から数千のEHRデータを対象に実証実験を実施した。プラットホームは以下の機能を持つ。
・各種フォーマットで構造化されたEHRデータを受け取り、
・自然言語による叙述的なEHRデータから構造化データを作成し、
・共通の情報モデルと標準的なターミノロジーを用いてこれらEHRデータを正規化し、
・表現型判別サービスphenotyping serviceによって、その正規化されたEHRデータにアクセスする
実証実験では、2つの病院から受け取った構造化ならびに叙述的なEHRデータの双方を処理していずれも正規化する作業に成功した。そこで、プラットホームのアーキテクチャと、この実験で直面した課題を紹介する。(立川察理 特任助教,2013年3月14日)
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Overcoming challenges to achieving meaningful use: insights from hospitals that successfully received Centers for Medicare and Medicaid Services payments in 2011.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Mar 1;20(2):233-7.
Harle CA, Huerta TR, Ford EW, Diana ML, Menachemi N.[要旨] 2009年に施行されたHITECH法は、EHR(electronic health records)を有意義に使用する(MU; meaningful use)医療提供者に報酬を支払うものだが、支払い初年度の2011年に報酬を受けた病院は少なくMUを達成できなかった病院の課題を理解することは重要である。本研究では2010年に各病院が予想したMU達成に対する課題について、2011年に支払いを受けた病院と受けられなかった病院を比較した。MU要件の項目のうちCPOE(computerized provider order entry)の項目を主要な課題としていた病院は、他の項目を主要な課題としていた病院に比べ支払いを受けている率が18%低く、MUを達成できなかった病院では、CPOEが主な課題であった。インセンティブプログラムの効果を最大化するために政策立案者は、CPOEに注意を強く持つべきである。
(川口英明 氏(医学博士課程1年),2013年3月7日)
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Computerized clinical decision support for medication prescribing and utilization in pediatrics.
J Am Med Inform Assoc. 2012 Nov-Dec;19(6):942-53.
Stultz JS, Nahata MC.[要旨] 臨床意思決定支援(CCDS)機能は、安全で効果的な投薬を保証する目的で、導入されてきた。小児領域の既存文献の包括的分析が無いため、処方と利用についてのCCDS導入の効果をレビューした。その結果、多様なCCDSが小児患者に使用されていることが分かった。投与量計算機は、計算間違いを減らし、重複投与やアレルギーチェックでは、過剰な警告が示唆された。薬品相互作用は、小児領域では、あまり研究は行われていなかった。投与量支援は、副作用を減らし、処方セットオーダは、ガイドラインの遵守状況を改善した。ガイドラインに基づく治療の推奨機能は、薬品の適正使用に影響を与えたが、患者の治療成績が改善したことを示すものはほとんどなかった。処方のCCDSは、小児患者の処方への恩恵を示したが、一方で高い警告拒否率を示したり、患者のケアへの影響が不明であった。今後、個々のCCDS機能の影響についてさらなる研究が必要である。
(美代賢吾 講師,2013年1月17日)
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Spatial-symbolic Query Engine in Anatomy.
Methods Inf Med. 2012 Dec 4;51(6):463-78.
Puget A, Mejino JL Jr, Detwiler LT, Franklin JD, Brinkley JF.[要旨] 「腹部に向けた弾丸によって損傷をうける重要臓器は何か?」のような解剖に関する問いを計算機で応えるために、胸部のラベル付き画像セットを用いて特定の空間的位置関係に存在する臓器の検索を可能とするspatial query processorとsemantic web serviceを開発した。2人の専門家が付けたゴールドスタンダードに対する精度評価の結果、評価者1 の正解に対してはF=0.90、評価者2の正解に対してはF=0.56であった。評価者2の付けた正解に対する低いF値の原因はデータセットに含まれるラベル付けに起因する問題であり、用いた手法そのものの問題ではなかった。現状、開発したシステムはエンドユーザー用のアプリケーションとして利用可能であるが、より進んだ利用として解剖の3Dイメージを表示するようなアプリケーションのフレームワークとして利用できる可能性がある。
(河添悦昌 助教,2013年1月10日)
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Patients want granular privacy control over health information in electronic medical records.
J Am Med Inform Assoc. 2012 Nov 26.
Caine K, Hanania R.[要旨] 健康情報のうち何を、誰と、何の目的で共有するかを、細くコントロールしたいという患者の嗜好が、健康情報の敏感さによって変化するか分析する。30人の患者に対するアンケート、インタビュー、医療者カードと健康情報カードをマッチするタスクによると、ほとんどの患者が敏感な健康情報を保持していた。電子カルテの全情報を、全ての情報の受け手と共有したい患者はいなかった。これは情報の種類と受け手によって違い、患者によっても違った。敏感な情報がある患者もない患者も、敏感な情報の共有を好まなかった。健康情報を共有したいかどうかは、きめ細かいプライバシー制御に依存し、敏感な情報共有の嗜好には違いがあった。電子カルテの設計者は、共有設定のための患者用UI設計に本結果を使用できる。患者の希望通りに医療記録のプライバシーのレベルを維持するには、患者が自分のカルテ内の情報の共有設定を細かくコントロールできる必要がある。
(横田慎一郎 助教,2012年12月13日)
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Processes and outcomes of developing a continuity of care document for use as a personal health record by people living with HIV/AIDS in New York City.
Int J Med Inform. 2012 Oct;81(10):e63-73.
Gordon P, Camhi E, Hesse R, et al.[要旨] PLWH(People Living with HIV)向けCCDベースのPHRである「My Health Profile」に対する運用評価を、RE-AIMフレームワークを使用して、定性的・定量的に分析した。SNP加入者はおもにアフリカ系アメリカン人やラテン系アメリカ人であり、約1/3は女性であること(Reach)、CCDは8249人で作成され、509人が操作訓練を受けており、使用者・未使用者間で、臨床的効果・医療の質への認識・医療サービスの利用において有意な差異がないこと(Efficacy/Effectiveness)、PLWHの高リスク集団への介護支援サービス管理における組織使命、価値観、優先順位に沿うものであること(Adoption)、利用に対する障壁として、機能的非識字や計算機リテラシー、プライバシーや機密性への懸念、技術への潜在的な抵抗感、認知上の課題があること(Implementation)、日常業務に組み込まれHIE標準化基金により維持されていること(Maintenance)が示された。PLWHらは十分なユーザサポートの確保とプライバシー・機密性への対策がされれば、My Health Profileを使用すると考えられる。
(田中勝弥 助教,2012年11月29日)
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Drug-drug interactions that should be non-interruptive in order to reduce alert fatigue in electronic health records.
J Am Med Inform Assoc. 2012 Sep 25.
Phansalkar S, van der Sijs H, Tucker AD, et al.[参考文献] Phansalkar S, Desai AA, Bell D, et al. High-priority drug-drug interactions for use in electronic health records. J Am Med Inform Assoc. 2012 Sep-Oct;19(5):735-43.
[要旨] オーダリングシステムでの、アラート疲れが問題となっている。中でも、薬物間相互作用(DDI)のアラートは、約90%が無視されているという報告もある。そこで、本論ではアラート疲れを軽減するために、ワークフローを中断させるほどではない優先度の低いDDIリストを提案するとともに、その作成プロセスを報告する。
1施設のアラートログから90%以上無視されているDDIを引き起こす薬剤群ペアの内、上位49件を、専門家によるパネルディスカッションにより評価した。その中から、優先度の低い33件(Table1)をまとめた。本リストに関係するアラート数は、全アラートの36%を占めていた。参考文献は、著者らの前報であり、優先度の高いDDIに焦点をあてている。(早川雅代 氏(医学博士課程2年),2012年11月22日)
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A hybrid knowledge-based and data-driven approach to identifying semantically similar concepts.
J Biomed Inform. 2012 Jun;45(3):471-81.
Pivovarov R, Elhadad N.[要旨] * 概念同士の類似度に基づいて、似た概念のペアを特定するというタスクはデータマイニング等では必須である。しかし類似性はコンテキストに高度に依存している。
* 既存の研究では、類似度の計算にコーパスを用いるものと、知識ベースを用いるものに大別されていた。コーパスを用いるものは、周辺のコンテキストは考慮するものの、知識ベースの手法と比べると意味の類似を詳細に調べられない欠点があった。また知識ベースの手法は意味の類似を詳細に調べられるものの周辺のコンテキストを考慮できない、という欠点があった。
* そこで両者の良いところを使うハイブリッドな方法を提案する。具体的には最初にdata-drivenな方法でコンテキストを考慮してフィルタリングし、その後にknowledge-drivenな方法で詳細に類似度を調べる。これにより、ROCカーブのAUC=0.9204という良い結果が得られた。(今井健 助教(疾患生命工学センター),2012年10月25日)