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Are managerial pressure, technological control and intrinsic motivation effective in improving data quality?.
Reliability Engineering & System Safety 119 (2013): 26-34.
Molina, Roger, et al.[要旨] 本研究は、人手によって収集されるデータの品質を高めるために、外的動機づけ(上司による監視や懲罰とPDAによる入力管理)と内的動機づけ(self-concordance)の、どちらが有効であるかを検証した。水道事業体の作業員を対象に、まず20人に面談して質問紙を作成し(質的研究)、次に109人に質問紙調査を実施した(量的研究)。得られたデータを階層型重回帰分析で分析した結果、外的動機づけは内的動機づけされていない作業員に有効である一方、内的動機づけされている作業員には、有意に負に働くことがわかった。この結果から、2段階の管理手法が推奨される。第1段階では作業員の内的動機づけを実施する。ここでは、管理者は内的動機づけを支援する。第2段階では、それでも内的動機づけされない作業員に、外的動機づけを実施する手法である。作業員が内的動機づけされているか否かを判断できる管理者の能力も重要である。
(佐藤恵 特任助教,2014年3月20日)
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Analysis of cash flow in academic medical centers in the United States.
Acad Med. 2011 Sep;86(9):1100-7.
McCue MJ, Thompson JM.[要旨] 米国の教育病院におけるキャッシュ・フローを分析し、高または低キャッシュ・フローに影響を与えている経営指標を明らかにすること等を目的とする。著者らは決算書のうち損益計算書のデータを用いた間接法にてキャッシュ・フローを推測した。Medicare cost report dataから103の教育病院のデータ3年分を抽出し、高キャッシュ・フロー群と低キャッシュ・フロー群でt検定を実施した。高キャッシュ・フロー群は病床規模が大きく、より複雑な患者を治療し、患者あたり収益が高くメディケア患者割合が低く、手元現金割合が高く、未収金の回収が早いことが明らかとなった。高キャッシュ・フローの教育病院がより多くの現金を作り出している要因は、低報酬であるメディケイド患者の受入れを抑制することで高収益を上げているからかもしれない。
(新城大輔 特任助教(国立大学病院データベースセンター),2014年3月13日)
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A unified structural/terminological interoperability framework based on LexEVS: application to TRANSFoRm.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Sep-Oct;20(5):986-94.
Ethier JF, Dameron O, Curcin V, et al.[要旨] 異質なデータソース間の相互運用性を高める取り組みです。生命医学研究において複数の異なるデータソース統合の重要性が高まっているという背景があり、異質なデータソース間の相互運用を容易にするためにオントロジーベースの統合フレームワークを提案しています。構造とターミノロジー(意味的)のモデルを1つの統合フレームワークで表現するものです。これはEU Framework Program 7のTRANSFoRmプロジェクトにおいて、臨床データを用いて検証されました。その結果、臨床データ統合モデルが生成され、プロジェクト内において情報検索を容易にするマッピングが生成できました。情報モデル、ターミノロジー、マッピングは全てLexEVSターミノロジーサーバに保持し、共通の方法でアクセスすることが可能です。提案するシステムには柔軟性があり、データソース統合を容易にするでしょう。
(服部純子 特任研究員,2014年2月20日)
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Personal health records: a randomized trial of effects on elder medication safety.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Dec 10.
Chrischilles EA, Hourcade JP, Doucette W, et al.[要旨] オンラインPHRは健康情報管理ツールとしての可能性があるが、高齢者が受け入れ易いPHRとその影響についてはあまり知られていない。高齢者のPHRの薬物使用安全に及ぼす影響を調べた。アイオワ州で実施した非盲検無作為化並行群間試験である。65歳以上の登録有権者から、コンピューター使用についての調査票で研究参加者を抽出し、(この研究のために開発された高齢者用アプリケーション)アイオワPHR供与群と非供与群に無作為に分けた。薬物使用について開始時と6か月後に調査した。供与群の61.2%がPHRにログインし、16.1%が頻回に使用した。PHR供与群の中で、低/非使用群に比べ高使用群の方が、明らかに薬の容量や強さを変更する傾向にあり、現在の使用薬剤の内服理由を答えられ、副作用を知っている割合が多かった。アドヒレンスの違いはなかった。PHRは高齢者の薬剤自己管理を良くするが、使用を継続するためには更なる機能が必要である。
(林亜紀 特任助教,2014年1月30日)
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Nationwide online social networking for cardiovascular care in Korea using Facebook.
J Am Med Inform Assoc. 2014 Jan 1;21(1):17-22.
Kim C, Kang BS, Choi HJ, et al.[要旨] 本研究では、韓国の循環器系疾患治療のための、会員298人で構成されたFacebook上のグループの使用状況を調査した。2011年6月から2012年5月までの全ての投稿とコメントを精査したところ、277の投稿のうち26.7%が早急な返答を要求する症例、50.5%が他のメンバーと共有すべき興味ある症例であった。質問の投稿に対する応答時間の中央値は16分であったが、これは参加メンバーが増えるにしたがって短くなっていく傾向にあった。37.4%のメンバーが一日2回以上アクセスしており、64%のメンバーは新しい投稿があった時にリアルタイムに通知されるよう設定していた。また、ほとんどのメンバーは、投稿内容に信頼をおいていた。以上より、Facebookは医師同士のリアルタイムのオンラインソーシャルネットワーキングを可能にし、臨床経験を共有したり意思決定における支援を要請したりするための有用なツールたり得ると考えられる。
(桜井亮太 特任助教,2014年1月23日)
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A collaborative approach to developing an electronic health record phenotyping algorithm for drug-induced liver injury.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Dec;20(e2):e243-52.
Overby CL, Pathak J, Gottesman O, et al.[要旨] 筆者らは、3つの医療機関で、電子健康記録(EHR)に含まれる傷病名、薬剤の処方オーダ、臨床検査に関する情報を用いて薬剤性肝障害の症例を特定するアルゴリズムの作成に取り組んだ。薬剤性肝障害を表現する傷病名、薬剤の処方、臨床検査及び除外症例に関する基準に関して予め合意を得た後に、各医療機関が個別にアルゴリズムの作成、実行及びバリデーションを行った。その結果、各医療機関の保有するデータの集団特性やデータへのアクセスのちがいから、最終的なアルゴリズムは各医療機関で異なったが、得られた症例の陽性的中度等には差は見られなかった。筆者らは、薬剤性肝障害等の稀で、複雑な病態を特定するアルゴリズムを複数の医療機関が共同で実行する際には、目的、データソース及びバリデーションの方法を初期に合意を得ることが、アルゴリズムの可搬性を向上させる可能性があると結論づけた。
(林裕志 氏(SPH1年),2014年1月16日)
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Determining molecular predictors of adverse drug reactions with causality analysis based on structure learning.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Dec 11.
Liu M, Cai R, Hu Y, et al.[要旨] 薬の副作用の要因を明らかにすることは重要である。そこで、薬の化学的および生物学的特徴を用いた構造学習をベースとした因果分析により、薬の副作用を起因する分子を予測するモデル(CASTLE)を提案する。このモデルは、これまでの副作用予測モデルでの二つの問題点 「(1)抽出する特徴と副作用との間の関係が、因果関係を示さない (2)生物学的な解釈が乏しい」を解決する。CASTLEでの予測は、ベイジアンネットワーク構造学習で因果特徴を抽出した後、サポートベクターマシン(SVM)により分類することにより行った。評価は、830の承認薬を用いて、12の器官レベル副作用を予測する精度により行った。F1スコアはSVMのみの場合と比較して、有意に増加した。また、生物学的因子と器官レベル副作用の間で認められた関係の一部は、OMIMにも記述されていた。CASTLEは、予測能力がSVMより優れているだけでなく、副作用の生物学的因子も導出可能である。
(早川雅代 氏(医学博士課程3年),2014年1月9日)
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Harvest: an open platform for developing web-based biomedical data discovery and reporting applications.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Oct 16.
Pennington JW, Ruth B, Italia MJ, et al.[要旨] 生物医学分野の研究者は、異種のデータにおいて属性間が本来持っている関係を見つけられるようにしたい、複雑なデータに関しても理解可能に、アクセス可能にしたいという共通の課題を有している。このようなデータ発見(Data Discovery)において、データモデルを操作することなく、個々の変数間の関係を効果的に示すことができるクエリーシステムが不足しているという現状がある。我々はモジュール化されたコンポーネントのオープンソースフレームワークであるHarvestを開発し、Harvestを用い、いくつかのデータ発見ソフトウェアアプリケーションの短期間での開発と展開を行った。Harvestは、生物医学情報のすばやい探索とエクスポートを促進するウェブベースのインタフェースに、高次元データの可視化を組み入れている。その際、研究者が基本となるデータモデルの操作を行うことはない。我々はHarvestを2つのケース(小児心臓病の診療データとOpenMRSプロジェクトのデータ)において評価した。Harvestのアーキテクチャとオープンソースのコードは、ドメイン特有の生物医学データリポジトリにおけるデータ発見アプリケーション開発ツールのセットを提供する。すべてのリソースはhttp://harvest.research.chop.edu/で見ることができる。
(新田見有紀 特任助教,2013年12月12日)
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The safety of electronic prescribing: manifestations, mechanisms, and rates of system-related errors associated with two commercial systems in hospitals.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Nov-Dec;20(6):1159-67.
Westbrook JI, Baysari MT, Li L, Burke R, Richardson KL, Day RO.[要旨] 異なる処方システムを採用している2つの教育病院で、処方エラーの率や種類について調査した。一方は、薬剤名・力価等を設定済みのメニューからの選択が中心(Cシステム)、もう一方は各情報を選択・入力する方式が中心(Mシステム)である。薬剤師が全入院患者の処方を調査し、エラーの有無や種類を精査した。システムCでは処方エラーが有意に多かった。システム関連ではメニュー選択ミスが最多で、特にシステムM(大半が力価選択ミス)ではシステムC(経路選択ミスが最多)の4倍だった。その他のミス率に有意差はなかった。この研究で発見されたエラーの大部分は通常見過ごされている。人間による発見は限度があるため、効果的モニタリングシステムが必要である。この研究は、全処方を確認してエラーを調査した点において、エラー報告を用いた先行研究より優れている。異なるシステムの比較は、エラーにつながる機能の特定にも有用と思われた。
(野口貴史 助教,2013年12月5日)
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Mining clinical text for signals of adverse drug-drug interactions.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Oct 24.
Iyer SV, Harpaz R, Lependu P, Bauer-Mehren A, Shah NH.[要旨] 診療録のテキスト部分から薬剤相互作用による有害事象シグナルを検出する研究。数千万件万件以上の診療録、1000以上の薬剤を対象にした大規模なもので、自発報告(FAERS)からの不均衡分析と同程度の成績が得られた。診療録からの分析は、自発報告と異なり報告漏れや偏りがないため、自発報告よりも早期にシグナル検出ができたり、シグナルの強さを危険度の強さとして利用できる可能性がある。薬剤組み合わせ別の有害事象発生率も公開している(信頼性は不明なので利用は慎重に)。
FDAのミニセンチネル等では構造化されたデータを利用しているのに対し、この研究では非構造化データを使用しているのが特徴。非構造化データからの事象の抽出は不正確なものになりがちだが、それでも大規模なデータから統計的な処理を行うと、マクロとしては現象を把握できるということを示したことに意義がある。(平松達雄 特任助教,2013年11月28日)
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A method for controlling complex confounding effects in the detection of adverse drug reactions using electronic health records.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Aug 1.
Li Y, Salmasian H, Vilar S, Chase H, Friedman C, Wei Y.[要旨] 電子健康記録(EHR)に含まれる情報を用いて薬物有害反応のシグナルを正確に特定するためには、交絡の調整が課題となる。筆者らは、横紋筋融解症及び膵炎を対象とし、約26万人の患者の記録を用いて、臨床検査値の基準値から薬物有害反応を特定し、可能性のある交絡因子を調整するデータ・ドリブンな手法として、Lasso型の罰則つきロジスティック回帰を適用し、薬剤と有害反応の関連の推定を試みた。既存の薬物有害反応の報告がある薬剤を正解例とし、適用した手法の感度を算出した結果、横紋筋融解症及び膵炎それぞれ83.3%及び60.8%であり、Propensity Score法等の他の手法と比較し、同等以上の感度が得られ、また今後さらなる臨床的検証が必要と考えられるシグナルもまた検出された。筆者らは、適用した手法が交絡の調整に有用であり、特定の医薬品と薬物有害反応の組み合わせにおける交絡要因に関する洞察を与え、また容易に他のEHRシステムに適応可能であると結論づけた。
(林裕志 氏(SPH1年),2013年10月31日)
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An ontology-driven, diagnostic modeling system.
J Am Med Inform Assoc. 2013 Jun;20(e1):e102-10.
Haug PJ, Ferraro JP, Holmen J, et al.[要旨] 診断支援のアルゴリズム構築を支援するシステムを紹介する。このシステムは、短時間でアルゴリズムの初期バージョンを自動構築し、その後必要に応じてモデル構築者が調整を行うという利用方法を想定したものである。
システムはオントロジーと臨床データを用いて解析/機械学習を行う。オントロジーは独自のもので、ICDのような疾患階層および検体検査等の所見の知識が含まれている。臨床データの取得にはオントロジーで定義された概念との間に既にマッピングが取られているデータウェアハウスを利用した。テキスト中にしか存在しない情報もあるため、NLPコンポーネントも組み込んである。解析/機械学習部分は既存システムを組み合わせる方針で作っており、現バージョンではベイジアンネットワークに焦点を当てている。
過去に人手で作成し実用化されているアルゴリズムを、本システムにより再度作成し、作成時間とアルゴリズムの精度を比較したところ、作成時間は大幅に短縮され、精度はあまり変わらなかった。(篠原恵美子 助教(疾患生命工学センター),2013年10月24日)
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Large-scale prediction and testing of drug activity on side-effect targets.
Nature. 2012 Jun 10;486(7403):361-7.
Lounkine E, Keiser MJ, Whitebread S, et al.[要旨] 薬物の副作用の原因となる意図しないターゲットを実験のみで見つけることは難しい。さらに、薬物は複数のターゲットに作用することがあり、副作用とターゲットは、従来の分子的な指標だけでは関連づけられない。そこで、本研究では、656剤の73の意図しないターゲットでの活性を計算により予測した。その約半数をデータベースまたは実験により確認した。確認した「薬剤と意図しないターゲット」の親和性は1nMから30μMの範囲であった。さらに、「意図しないターゲットと副作用」の関係を検討するための評価指標を開発し、「薬剤-ターゲット-副作用」のネットワークを作成した。この作成したネットワークにより、合成エストロゲンであるクロロトリアニセンによる腹痛が酵素COX-1の阻害によるものであるという予測が得られた。この阻害作用を、ex vivoでの血小板凝集試験で確認した。この手法は、創薬において問題となりやすい毒性のリスク回避に利用可能である。
(早川雅代 氏(医学博士課程3年),2013年10月17日)
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Effect of home blood pressure telemonitoring with self-care support on uncontrolled systolic hypertension in diabetics.
Hypertension. 2012 Jul;60(1):51-7.
Logan AG, Irvine MJ, McIsaac WJ, et al.[要旨] 本研究では、予備研究で血圧コントロールへの効果が証明された家庭血圧の遠隔モニタリングシステムの有効性を、収縮期血圧のコントロールが不十分な糖尿病患者に対するランダム化比較試験で検証した。このシステムは、高血圧をもつ糖尿病患者のスマートフォンに、読み取り後すぐに自動でセルフケアメッセージを表示するものである。105名が1年間のアウトカム調査を完了した。主要エンドポイントである日中の自由行動下収縮期血圧の平均は、介入群のみで9.1±15.6mmHg(P<0.0001)と有意に低下し、平均の群間差は7.1±2.3mmHg(P<0.005)であった。またセルフケア支援の提供は病院不安・抑うつ尺度における抑うつを悪化させた。本研究により、自動化したセルフケア支援を組み合わせた家庭血圧の遠隔モニタリングは、血圧コントロールを改善することが証明された。自己血圧測定単独では血圧への効果がなかった。しかし、患者のセルフケアを促すことは心理的によくない影響をもたらす可能性がある。
(澁田朋未 氏(保健医療情報学特論1受講生 修士課程1年),2013年6月27日)
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A classification of errors in lay comprehension of medical documents.
J Biomed Inform. 2012 Dec;45(6):1151-63.
Keselman A, Smith CA.[要旨] 参加型医療では医療文書を患者が理解することが求められるが、素人では理解が難しい場合が多い。何らかの支援をするにしても、どのように難しいか、すなわちどう読み間違えるかという知見が必要である。本稿では、実際の間違いを観測し、分類体系を構築する。この体系は完全なものではないが、基盤としては利用可能と考えられる。研究協力者は80人、全員健康なボランティアで、二つの医療文書(臨床試験の説明と外来診療録)を読み、内容を説明してもらい、著者2名が間違いの抽出と分類を行った。得られた分類体系は、9カテゴリーと23のサブカテゴリーから構成される。最も頻度が高かったのは薬剤のブランド名の間違いだった。その他では、臨床概念の誤解、臨床研究の目的の間違い、所見の間違い、医学用語の間違いやスペルミスが多かった。
(篠原恵美子 助教(疾患生命工学センター),2013年4月4日)