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広報・プレスリリース情報(2012年(平成24年))

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バングラデシュの内臓型リーシュマニア症研究拠点の設立を全面的に支援
  ~「顧みられない熱帯病」の撲滅に向けた取り組み~

内臓型リーシュマニア症は、節足動物サシチョウバエの媒介による感染症で、世界中に分布し、2 億人が感染の危険に晒されています。特にインド、ネパール、バングラデシュに跨がる地域に高度に蔓延しており、貧困で恵まれない暮らしの人々が脅かされています。この内臓型リーシュマニア症を撲滅するためには、臨床及び環境衛生面からの複数国間の同時進行的アプローチが必要です。

今回、東京大学医学部附属病院 血液浄化療法部の野入英世准教授、同大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻の松本芳嗣教授らは、同大学院医学系研究科 国際保健学専攻とともに、独立行政法人科学技術振興機構(JST)/独立行政法人国際協力機構(JICA)による地球規模課題対応国際科学技術協力事業を通じて、icddr,b、DNDiと連携し、バングラデシュ政府が12 月2 日に同国マイメンシンに内臓型リーシュマニア症研究拠点Surya Kanta Kala-azar Research Center(SKKRC)を設立するにあたり、当初より全面的に支援を行いました。この研究拠点では、内臓型リーシュマニア症が蔓延する地域における臨床・研究を充実させ、日本発の臨床診断技術や感染を媒介する昆虫の発生などをコントロールする技術等を投入します。今後も、世界保健機構が示した内臓型リーシュマニア症の撲滅ための取り組みに協力していきます。

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(2012/12/27掲載)

筋萎縮性側索硬化症ALSに特異的病理変化の謎解明
  ~変異AMPA受容体により活性化されたカルパインがTDP-43を切断~

国際医療福祉大学臨床医学研究センター 郭伸特任教授(東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 臨床医工学部門 客員研究員)、東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 臨床医工学部門 山下雄也特任研究員らの研究グループは、科学技術振興機構・戦略的研究推進事業(CREST)研究において、理化学研究所 西道隆臣チームリーダーらとの共同研究で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因メカニズムを、世界に先駆けて明らかにしました。

ALSは筋肉を動かす運動ニューロンの変性・死滅が、呼吸機能も含む進行性の筋力低下を引き起こす主に初老期以降に罹患する難病で、発症から数年のうちに死に至る病です。患者数は日本だけでも8,000人を超え、加齢と共に頻度が増し60歳以降の罹患危険率は300人に一人とも言われている、決して稀な難病ではなく、病因不明のため有効な治療法がありません。

これまでの研究で、病因に関わる遺伝子やALSに特異的に見られる分子異常は特定されてきましたが、未だその因果関係や運動ニューロン死に至るまでのメカニズムが解明されておらず、病因判明には至っていませんでした。

研究グループは、ALSの病因に関わる疾患特異的分子異常として異常なカルシウム透過性AMPA受容体が発現していることを既に発見しており、今回この異常がカルパインの活性化を通じてもう一つの疾患特異的分子異常であるTDP-43病理を引き起こしているという分子連関を解明しました。本成果により、これまで知られていたALSの病因に関わる二つの分子異常のメカニズムと分子関連が初めてわかりました。特にこれは、ALS患者の大多数を占める、遺伝性のない孤発性ALSの病因を説明するメカニズムであり、治療へ向け一歩前進したといえます。

以上の成果は、「Nature Communications」(12月18日オンライン版)に掲載されました。

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(2012/12/19掲載)

自閉症に対する新しい薬物治療
  ~ラパマイシンは結節性硬化症モデル動物の社会的相互作用障害を改善する~

東京大学大学院医学系研究科の水口 雅教授らは、東京都医学総合研究所の池田和隆参事研究員ら、順天堂大学の樋野興夫教授らとの共同研究により、自閉症の主症状である社会性相互交流障害がラパマイシン(mTOR阻害薬の1種)。 mTOR阻害薬は、抗腫瘍薬、免疫抑制薬として複数の国で認可されているにより改善することを、2種類の結節性硬化症モデルマウスを用いた動物実験により明らかにしました。

自閉症は社会的相互交流障害、コミュニケーション障害、反復的・常同的行動を主症状とする発達障害です。結節性硬化症は自閉症を高率に合併し、自閉症の基礎疾患の中では頻度が最も高いものです。 水口教授らは、結節性硬化症1型、2型のモデルマウスに社会的相互交流障害があること、おとなに対するラパマイシン投与によりこの障害が改善されること、2型モデル動物の脳内でmTOR系の遺伝子発現や蛋白リン酸化に複数の異常があり、その多くがラパマイシンにより正常化することを見いだしました。

自閉症に対する薬物治療は、従来表面的な対症療法がほとんどで、社会的交流障害を改善する効果は乏しかったのです。 本研究における成果は、mTOR阻害薬を用いた薬物治療により自閉症の症状を成人患者においても改善しうることを示し、今後の薬物治療の可能性を大きく切り開きました。

なお、この成果は「Nature Communications」(12月18日号)に掲載されました。

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(2012/12/19掲載)

世界の疾病負担研究(GBD 2010)
  ~世界の疾病構造の劇的な変化がはじめて明らかに~

米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)、東京大学大学院医学系研究科、豪州クイーンズランド大学、米国ハーバード大学公衆衛生大学院、米国ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院、英国インペリアル・カレッジ、世界保健機関(WHO)の7つの機関の共同研究として2007年から始まった「世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study、GBD 2010)」では、過去最大規模の健康調査でこれまでにない量・種類のデータを収集、包括的で多面的な新手法で分析し、このほど研究成果をまとめた。研究成果は7本の学術論文として、英国王立協会とランセット誌で発表された。

今回の論文では、最初のGBDが実施された1990年以来、健康の世界動向は大きく変化していることが明らかになった。具体的には、医療の進歩や開発の進展によって、食糧不足の解消と死亡数の減少が進み世界人口の大幅な高齢化がおこっている一方、精神疾患・慢性疼痛・負傷などによる負担や肥満・運動不足などの危険因子を抱えながら、多くの人が生きていることがわかった。

本研究成果は、世界の主要な健康課題を評価し、それらに対応する最善の方法を見つけるための新たなデータを提示するものである。個人レベルで高齢期の人生計画の再考を促すのみならず、各国レベルで、健康に関する新たな研究プロジェクト遂行や政策立案、自国の国民を対象とした詳細な疾病負担研究などに生かされることが期待される。

なお、この成果は「ランセット誌」(12月15日号)に掲載されました。

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(2012/12/14掲載)

環境化学物質が子どものこころの健康に影響することを動物実験で実証
~マウスにおいて、微量のダイオキシン摂取が脳の柔軟性と集団行動の異常を引き起こす~

東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門の遠藤俊裕大学院生、掛山正心助教、遠山千春教授は、環境化学物質が脳発達に与える影響を動物実験により明らかにしました。 ダイオキシンは、環境・食品中に広く存在している残留性有機汚染物質(POPs)の一種です。ダイオキシンの母胎への取り込みが、生まれてきた子どもの脳発達に影響を及ぼすことが示唆されていますが、そのメカニズムは十分解明されていません。 同部門を中心とした研究グループは、マウスを集団で飼育しながら行動観察を行う新規の行動試験技術を開発しました。その結果、微量のダイオキシンを投与された母マウスから生まれたマウスでは、成熟後において状況変化への適応が遅くかつ社会的競争状況で活動レベルが低下することが分かりました。 さらに、こうした行動異常の背景として、高次の脳機能をつかさどる前頭前皮質と扁桃体において脳の神経活動のアンバランスが生じていることを突き止めました。

今回の結果は、そのままヒトには適用できませんが、母体・母乳から体内に取り込んだ微量の化学物質が、子どもの「こころの健康」の発達に影響を及ぼす可能性を示唆しており、今後より詳しく検討していく必要性があります。

以上の成果は、環境省・環境技術開発等推進費により2007年に研究がスタートし、その後文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム(以下、脳プロ)の一環として本研究が進められ、今日の報告に至りました。 また曝露実験の一部は厚生労働科学研究費補助金の助成を受けて、免疫組織化学解析の一部は文部科学省科学研究費補助金、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(CREST)の助成を受けて行われました。
この成果は「PLOS ONE」 2012年12月12日オンライン版に掲載されました。

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(2012/12/13掲載)

細胞内輸送の破綻がてんかんを引き起こす
  ~モーター分子KIF5Aがてんかん発症に関与することを解明~

てんかんとは、脳の神経細胞の異常興奮が広がって制御不能になり、様々な神経症状を引き起こす疾患です。てんかんは最も発症頻度が高い精神神経疾患のひとつであり、わが国では約100万人の患者さんがてんかんに苦しんでいます。てんかんの原因解明は不十分で、まだ根本治療は確立していません。

今回、東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任教授、中島一夫特任研究員らのグループは、分子モーターKIF5Aの遺伝子欠損マウスを作り、このマウスがてんかん症状を示すことを見出しました。更にこのマウスの脳を詳しく調べたところ、KIF5AがGABAA受容体の細胞内輸送を通じててんかんの発症に関与することをつきとめました。今回得られた知見は、これまで不明であったKIF5Aの神経細胞における特別な役割を明らかにしただけでなく、てんかんの病態の分子的理解・治療法の開発にも貢献することが期待されます。

本研究は、文部科学省科研費・特別推進研究「キネシンモーター分子群の機能と制御の統合生物学的研究」の助成を受けて行われました。
本研究成果は『Neuron』(2012年12月6日号)に掲載されました。

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(2012/12/6掲載)

繊毛の長さを決めるメカニズムの解明
  ~繊毛のハサミKIF19Aの発見~

東京大学大学院医学系研究科 廣川信隆特任教授、丹羽伸介特任研究員らの研究グループは、繊毛の長さを決める新しいモーター蛋白質KIF19Aを発見しました。

我々人間を含む哺乳類の脳室や卵管などには、繊毛と呼ばれる長さ5〜10ミクロンほどの「動く毛」が生えており、この繊毛の運動によって脳脊髄液の循環や卵巣から子宮への卵子の輸送などが行われています。 繊毛の運動や長さの異常は、水頭症や不妊症などの病気を引き起こすことが知られていますが、50年以上もの間、繊毛の長さを決めるメカニズムは謎のままでした。

研究グループは、新しいモ―ター蛋白質KIF19Aが繊毛の先端に局在することに着目し、試験管内の実験でKIF19Aタンパク質が伸びすぎた繊毛の先端を切りそろえるハサミとして働くことを発見しました。
また、KIF19Aタンパク質が働かないマウスを作成したところ、繊毛の長さが2倍から3倍になり、繊毛がうまく動けずに適正な水流を生じることが不能となることを発見しました。 このマウスでは水頭症や卵管閉塞による女性不妊といったヒトの病気と同じ症状が見られます。

今回の成果より、水頭症や不妊症のリスクの予測や予防、正確な遺伝子診断や遺伝子治療に結びつく可能性があります。

この成果はDevelopmental Cell誌電子版に11月15日付で掲載されました。

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(2012/11/20掲載)

東京大学とアステラス製薬:「顧みられない熱帯病」の抗寄生原虫薬の標的探索で共同研究開始
  ~標的候補の妥当性検証により創薬標的分子を選定~

国立大学法人東京大学(所在地:東京都文京区、総長:濱田 純一、以下「東大」)とアステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区、社長:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は 本日、「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases)、以下「NTDs」」の治療のための抗寄生原虫薬の探索を目的とする共同研究契約を締結しました。

NTDsは、主に発展途上国の熱帯地域において、貧困層を中心に蔓延している寄生虫や細菌による感染症で、世界で10億人以上が感染していると言われ、地球規模での保健医療問題として国家間を超えた取り組みが行われています。 NTDsの中でも、寄生原虫により引き起こされるリーシュマニア症、シャーガス病、アフリカ睡眠病といった疾患は、いまだ効果的な治療薬が存在せず、その研究開発が求められている疾患です。

本契約のもと、東大大学院医学系研究科 生物医化学専攻分野の北 潔 教授とアステラス製薬は連携して、抗寄生原虫化合物探索に適すると予想される複数の標的候補分子の妥当性に関して実験検証し、創薬標的分子を選定します。
研究は大きく二段階に分けて進めます。第一段階は、国内で寄生原虫酵素群の分子特性と低分子薬開発を手掛けNTDs研究の実績のある生物医化学専攻分野とアステラス製薬の共同で、抗寄生原虫治療薬の創出につながると期待される複数の標的候補分子を選定します。 このとき、生物医化学研究室に長年蓄積されてきた情報に加えて、アステラス製薬が現在公開されている寄生原虫治療薬探索に有用な知識・情報(ゲノム情報、蛋白の立体構造、抗寄生原虫化合物の情報)をもとに、標的候補となる可能性のある標的候補分子を選択します。
第二段階では、東大において、その標的候補分子が寄生原虫に対する治療薬の薬剤標的となる可能性、及び創薬研究の実行可能性について、遺伝子工学的手法(遺伝子過剰発現株や遺伝子破壊株の使用)や生化学的手法(酵素反応系の構築など)を用いて標的候補分子の妥当性を検証し、創薬標的分子を選定します。

東大とアステラス製薬は、世界で寄生原虫によるNTDs感染で苦しむ患者さんのために早期に治療薬が生み出されるよう、本共同研究を通じた取り組みでグローバル規模の保健医療問題の改善に寄与します。

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(2012/11/12掲載)

世界初!シナプス形成の可視化で発見した「小さな突起」
  ~自閉症など脳の発達障害の病態解明へ道~

東京大学大学院医学系研究科の岡部繁男教授・石田綾特任研究員と慶應義塾大学医学部の柚﨑通介教授らは、発達期の脳で神経細胞同士がつながる仕組みを解明しました。
神経細胞は「シナプス」を介して結合し、脳の回路を形成しています。発達期の脳が多彩な機能を獲得するためには、一つの細胞に数百~数百万個のシナプスが正確に作られることが必要といわれています。 近年、自閉症などの発達障害や多くの精神疾患の原因が、シナプスの異常であると考えられるようになり、シナプス形成の分子の仕組みを解明するため世界中で精力的な研究がなされています。 しかし、どのようにしてシナプスができるのか、その分子の仕組みは不明な点が多く、神経科学の最大の課題となっています。
本研究グループはマウスの神経細胞を用い、運動制御を担う小脳において、シナプスが形成される過程を可視化することに成功しました。その結果、シナプスの形成過程で神経線維から「小さな突起」が伸び、 シナプスの成熟を促すことを世界で初めて発見しました。さらに「小さな突起」は、Cbln1(シービーエルエヌ1)という分泌因子と、デルタ2受容体、ニューレキシンの3つのタンパク質の相互作用により形成されることを解明しました。
「小さな突起」を見出した今回の知見は、脳の正常な発達とその障害の原因を解明の重要な一歩となると期待されます。
本研究成果は、科学雑誌「Neuron」(11月8日号)に公開されました。
なお、本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、また、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業、科学研究費補助金などの助成を受けて行われました。

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(2012/11/8掲載)

「健康いきいき職場づくりフォーラム」設立のご案内
  ~個人と組織の新しい枠組みを創出する~

日本生産性本部(理事長:松川昌義)と東京大学大学院医学系研究科 精神保健学専攻分野(教授:川上憲人)は協同し「健康いきいき職場づくりフォーラム」を設立いたします。
また、これを記念して設立記念シンポジウムを開催いたしますのでご案内申し上げます。

Ⅰ.「健康いきいき職場づくり」とは
職場のメンタルヘルスの一次予防(メンタルヘルス不調者を出さない)の新しい枠組みとして、いきいきした労働者、および一体感のある職場づくりによって不調を予防し、 組織の生産性向上を目指すものです。これは従来の不調者対応を中心にしたアプローチからの転換であり、職場のメンタルヘルスの取り組みを大きく変え、 職場のメンタルヘルス不調者の減少の一手となる可能性があります。この概念は、東京大学大学院医学系研究科 精神保健学専攻分野 川上憲人教授が、 平成21~23年度厚生労働科学研究費補助金 労働安全衛生総合研究事業「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究」において提唱しているものです。

Ⅱ.健康いきいき職場づくりフォーラムとは
「健康いきいき職場づくり」の概念と具体的方策を国内に広く普及し、労働者の健康とこれを通じた企業の生産性向上を支援します。また「健康いきいき職場づくり」に関する最新情報の発信母体となり、 この考え方に則って組織運営を考える企業人、商品開発を考えるEAP等メンタルサービス事業者、専門知識の収集・発表を考える医療従事者、研究者らのプラットフォームとなります。 このために以下3点を実施します。
 (1)「健康いきいき職場づくり」に関する具体的方策についてノウハウを蓄積する
 (2)「健康いきいき職場づくり」推進のためのツール類を整備する
 (3)「健康いきいき職場づくり」を国内に普及する方策を検討する

Ⅲ.健康いきいき職場づくりフォーラム設立記念シンポジウム
日時:2012年12月17日(月)13:00~17:00(開場12:30) 懇親会17:20~18:30
場所:伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール(東京都文京区・東京大学構内)
参加者:企業関係者(人事・経営企画等)、労働組合幹部、研究者、産業医、看護職等
人数:約300人
主催:公益財団法人日本生産性本部 東京大学大学院医学系研究科 精神保健学専攻分野
費用:無料
後援:(予定)厚生労働省 経済産業省 日本商工会議所 東京商工会議所 日本労働組合総連合会 健康保険組合連合会 日本産業衛生学会 日本産業ストレス学会 日本産業精神保健学会 中央労働災害防止協会 全国労働衛生団体連合会 全日本能率連盟ほか(順不同)

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(2012/11/6掲載)

生体組織の微細断片における遺伝子発現量測定の新技術を開発

東京大学 大学院医学系研究科・疾患生命工学センター健康環境医工学部門は、Leica Microsystems社との国際共同研究により、レーザーマイクロダイセクション法(LMD)と 逆転写DNA増幅定量法(RTqPCR)を改良し、生体の顕微鏡組織切片のごくわずかな断片における遺伝子発現の程度を高感度に測定する新しいLMD-RTqPCR法を開発しました。
さまざまな器官や部位における遺伝子発現の程度を測定する技術はこれまでに数多く存在しますが、その感度や定量性には克服すべき問題が残っていました。 極めて微小な部位や細胞レベルにおける遺伝子発現の定量にはさらに多くの制限がありました。今回開発したLMD-RTqPCR法は、これらの問題を大きく改善することに成功しました。 また本技術を用いることで、新しい環境に置かれたマウスの特定の脳部位(海馬)において特定の遺伝子群が短時間に顕著に発現することがわかりました。 本技術は、さまざまな病態における細胞機能解明のための新しいツールになることが期待されます。
本研究は文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム(脳プロ)の一環として、また文部科学省科学研究費補助金、厚生労働科学研究費補助金等の助成を受けて行われました。 脳プロでは現在、この技術を用いて、脳の健やかな育ちの解明に関するプロジェクトを中心として、脳機能の解明と精神疾患メカニズムの解明に取り組んでいます。 今回開発した技術は、病理組織と遺伝子発現をつなぐ新しい解析法として、医科学全般、環境化学物質リスク研究等の広い分野での発展も期待されます。

この内容は、「Scientific Reports」10月30日オンライン版に掲載されました。

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(2012/11/1掲載)

日本列島3人類集団の遺伝的近縁性

国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門(総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻教授兼任)の斎藤成也教授、東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学専攻分野の徳永勝士教授、 東京大学大学院理学系研究科・理学部の尾本惠市名誉教授を中心とする研究グループは、日本列島人(アイヌ人、琉球人、本土人)のゲノム解析により、 現代日本列島人は、縄文人の系統と、弥生系渡来人の系統の混血であることを支持する結果を得た。
これまでの遺伝学的研究では、アイヌ人と沖縄人の近縁性を支持する結果はいくつか得られていたが、決定的なものではなかった。今回、研究グループは、 ヒトゲノム中のSNP(単一塩基多型)を示す100万塩基サイトを一挙に調べることができるシステムを用いて、アイヌ人36個体分、琉球人35個体分を含む日本列島人のDNA分析を行った。
その結果、アイヌ人と琉球人が遺伝的にもっとも近縁であり、両者の中間に位置する本土人は、琉球人に次いでアイヌ人に近いことが示された。 一方、本土人は集団としては韓国人と同じクラスターに属することも分かった。さらに、他の30人類集団のデータとの比較より日本列島人の特異性が示された。 このことは、現代日本列島には旧石器時代から日本列島に住む縄文人の系統と弥生系渡来人の系統が共存するという、二重構造説を強く支持する。 また、アイヌ人はさらに別の第三の系統(ニブヒなどのオホーツク沿岸居住民)との遺伝子交流があり、本土人との混血と第三の系統との混血が共存するために個体間の多様性がきわめて大きいこともわかった。
日本列島における人類集団の遺伝的多様性を明確にすることは、人類学的観点のみならず、ゲノム医学にとっても大きな意義がある。 将来は、これら集団間の表現型の違いとゲノムの違いを結びつけることが期待される。

本研究成果は、「Journal of Human Genetics」(2012 年11月1日オンライン版)」に掲載されました。

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(2012/11/1掲載)

胃がんの前がん病変としての胃細胞から腸細胞への細胞変換
  ~胃がん発症における限定的な細胞のリプログラミング~

腸上皮化生(ちょうじょうひかせい:intestinal metaplasia)は胃の粘膜に腸の粘膜を作る細胞があらわれる病変で、ピロリ菌感染によって起きる慢性胃炎が長く続き病態が進んだ状態です。 胃の粘膜にこの変化が現れると胃がんの発症リスクが高まることが知られており、胃がんの予防の観点からも注目すべき胃粘膜の病変の一つなのですが、どのようなメカニズムで胃の細胞が腸の細胞に変換するのかはこれまで不明でした。

本研究では、胃へのピロリ菌感染が腸上皮化生を引き起こす力を持つ転写因子CDX1を異所性に誘導発現することに着目し、CDX1が胃の細胞をどのようにして腸の細胞に変化させるのかを調べました。 その結果、CDX1は胃の細胞内で、iPS細胞やES細胞の樹立・維持に関与するSALL4ならびにKLF5というリプログラミング遺伝子(=幹細胞性遺伝子)を異常に活性化することが明らかになりました。 その結果、胃の細胞は消化管のいろいろな細胞を作る能力を獲得した幹細胞様の状態に一度リセットされ、その後に腸の細胞へと異常分化していくことが示されました。

この研究成果は、ピロリ菌感染が引き起こす胃粘膜病変発症において、限定的な細胞運命の変化ともいえる現象が関与することを示したものです。リプログラミングにより未分化性を獲得した胃の細胞は、 腸の細胞へ分化できる異常な能力を持つとともに容易にがん化しやすい性質を獲得すると考えられます。こうした細胞のリプログラミングを阻止することで胃がん発症の予防が可能になることが期待されます。

本研究の内容は、米国科学誌「米国科学アカデミー紀要; Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に掲載されました。

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(2012/10/31掲載)

変形性関節症の新規治療候補薬の発見
  ~関節軟骨の変性予防・修復などの本質的な治療を目指して~

変形性関節症は四肢や脊椎の関節軟骨が摩耗する病気で、高齢者の生活の質(QOL)を低下させ健康寿命を短縮させる、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の代表的疾患です。 変形性膝関節症に対する治療法は対処療法が主体であり、軟骨組織再生を誘導する根本的な治療法はこれまでありませんでした。東京大学大学院工学系研究科(医学系研究科兼担)の 鄭雄一教授らは、関節軟骨組織を保護し再生させる低分子化合物(TD-198946)を同定し、その作用機序は転写因子Runx1を介していることを発見しました。 Runx1をターゲットとする低分子化合物は将来、変形性関節症の原因療法薬の開発に繋がる可能性があります。
本研究成果は、「Annals of the Rheumatic Diseases」(2012年10月5日オンライン版)に掲載されました。

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(2012/10/9掲載)

日本人原発性胆汁性肝硬変の疾患感受性遺伝子の同定

原発性胆汁性肝硬変とは、中高年女性に多い比較的まれな(患者総数は全国で約5-6万人と推定)原因不明の胆汁うっ滞性肝疾患であり、 進行すると黄疸、肝不全となり肝移植以外に救命方法がない難病である。
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 教授(長崎医療センター臨床研究センター客員研究員)の中村稔博士を代表とする全国規模の肝疾患共同研究グループと 東京大学大学院医学系研究科 人類遺伝学教室 教授の徳永勝士博士らは、原発性胆汁性肝硬変患者1,500名と健常者1,200名のDNA検体を用いてゲノムワイド関連解析を行い、 日本人原発性胆汁性肝硬変の発症に関わる遺伝子(疾患感受性遺伝子)2つを世界で初めて同定した。 同定されたTNFSF15、POU2AF1と呼ばれる遺伝子は、Tリンパ球やBリンパ球などの免疫担当細胞の成熟や分化に重要な役割を果たしている遺伝子であり、 これらの遺伝子の個人差(遺伝子多型)が日本人の原発性胆汁性肝硬変発症に関わっていることが明らかになった。
今後はこれらの遺伝子産物を標的とした原発性胆汁性肝硬変の根治的治療法の開発が可能になるものと期待される。
本研究成果は、「American Journal of Human Genetics」(2012 年9月20日オンライン版)に掲載された。

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(2012/9/20掲載)

シナプス刈り込みに関わる遺伝子の新たなスクリーニング系を開発
  ~発達障害や精神疾患に関わる遺伝子の網羅的な評価などに幅広く応用可能~

社会性障害をきたす代表的な疾患である統合失調症や自閉症には神経回路発達の異常が関わるとされている。特に、生後間もない動物の脳の過剰な神経結合(シナプス)のうち、 必要な結合を強めて不要な結合を除去する「シナプス刈り込み」の異常が、それらの疾患に関係すると考えられている。シナプス刈り込みの異常を分子レベルで理解するためには、 関与する遺伝子を網羅的に調査する必要があるが、これまで、シナプス刈り込みの研究には、遺伝子改変動物や動物の脳内への薬物投与などの方法が使われており、長い時間と多くの手間がかかっていた。

今回、東京大学大学院医学系研究科の狩野方伸教授らは、小脳のシナプス刈り込みに関わる遺伝子を迅速に評価できる培養標本の開発に成功した。 さらに彼らは、この標本を用いてneuroligin-2という遺伝子がシナプス刈り込みに関わることを突きとめた。

近年、全ゲノム解析などの技術革新により、統合失調症や自閉症などの社会性障害を引き起こす可能性のある遺伝子が他にも多数報告されている。今回開発された培養標本は、 薬物投与や遺伝子操作が容易に行えるため、障害に関わる遺伝子の網羅的なスクリーニングや新薬候補の効果を試す際の網羅的なスクリーニングなど、幅広く応用可能である。

本研究は文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、また科学研究費補助金の助成を受けて行われた。
本研究成果は「Journal of Neuroscience」(2012年8月22日号)に掲載された。

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(2012/8/22掲載)

新しい運動ニューロン病の原因遺伝子を発見
  -筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明にもつながる成果-

近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー(Hereditary motor and sensory neuropathy with proximal dominant involvement, HMSN-P)は、日本に多い遺伝性の運動ニューロン病の一つで、 成人期に発症し近位筋(体の中心部に近い筋肉)で顕著にみられる筋力低下が主な症状です。進行期には四肢末端の軽度の感覚の障害を伴うことがあるものの、 その中核的な病変は運動ニューロン(運動神経細胞)の進行性の変性で、同じく運動ニューロン病の一つで難病とされる筋萎縮性側索硬化症(ALS)との類似性が指摘されてきましが、 長らく原因遺伝子が不明でした。今回、東京大学医学部附属病院 神経内科(教授 辻省次)と徳島大学病院 神経内科(教授 梶龍兒)との共同研究で、次世代シーケンサーを駆使することにより、 HMSN-Pの原因遺伝子がTRK-fused gene (TFG)であることを世界に先駆けて発見しました。また、HMSN-P とALS との間には共通した運動神経細胞死のメカニズムが存在することも見出され、 本研究は運動ニューロン病の病態機序の解明に寄与するものと考えられます。

これらの成果は、米国人類遺伝学雑誌「American Journal of Human Genetics」8月号に掲載されます。

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(2012/8/10掲載)

視覚神経系の仕組みの解明に新たな手がかり
  -高等哺乳動物の視覚神経回路に発現する遺伝子を発見-

東京大学医学部附属病院・大学院医学系研究科特任准教授河崎洋志および大学院医学系研究科 大学院生 岩井玲奈らのグループは、視覚神経系の中で色や形の認識に必須なP 細胞に選択的に発現する遺伝子の特定に初めて成功しました。 本成果は、視覚神経系での情報処理や回路形成機構および視覚異常の病態の解明につながることが期待されるとともに、長く議論されてきた視覚系の進化について一定の結論を与えるという重要な意義をもちます。

ヒトは外部情報の8割以上を視覚を通して取得しているとも言われており、視覚障害は生活に深刻な影響を及ぼします。したがって、視覚神経系の情報処理の仕組みや疾患の病態を解明することは重要な課題です。 しかし、研究で多く用いられるマウスは視覚神経系の発達が乏しく、色覚や形態覚の伝達に不可欠な神経細胞であるP 細胞の遺伝子レベルの解析は困難でした。 そこで本研究グループは、視覚神経系が発達している高等哺乳動物フェレットに着目するという独自のアプローチにより、ヒトの言語能力の獲得との関連が指摘されているFoxP2という遺伝子が、 フェレットさらにはサルのP 細胞に選択的に発現することを突き止めました。今後、FoxP2 遺伝子を手がかりとして、ヒトの発達した視覚神経系の仕組みや疾患の病態の解明が加速することが期待されます。 本研究成果は、2012年7月12日午後4時5分(日本時間)に英国科学雑誌「Cerebral Cortex」のオンライン版に掲載されました。

本成果の一部は、文部科学省科学研究費補助金・科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業個人型研究「さきがけ・生命システムの動作原理と基盤技術」、21 世紀COE プログラム、 グローバルCOE プログラムおよびHuman Frontier Science Program の支援を受けて行われました。

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(2012/7/31掲載)

マテリアル工学専攻(医学研究科 兼担)片岡一則教授が第9回江崎玲於奈賞を受賞

東京大学大学院工学系研究科片岡一則教授(医学系研究科教授 兼担)が、財団法人茨城県科学技術振興財団(理事長:江崎玲於奈)より、第9回江崎玲於奈賞を授与されることが決定しました。 同賞は、ナノテクノロジー分野において世界的に評価を受ける顕著な研究業績を挙げた者に授与されるもので、授賞式は2012年10月につくば市にて開催されます。
受賞の対象となったのは、「高分子ナノ構造を用いた薬物・遺伝子キャリアの開拓と難治疾患標的治療への展開」です。片岡教授は長年の研究により、精密に設計された一連の機能高分子を合成、 自己集積させることにより、ウイルスに近いサイズ(数十ナノメートル)の球殻状(高分子ミセル)の薬物運搬体(キャリア)を創り、制がん剤を内包させることによって、 難治固形がんの標的治療に有効であることを実証しました。この成果として、現在4種類の異なる制がん剤を内包した高分子ミセルが、国際的な臨床試験にまで進んでおり、 膵臓がんをはじめとする難治がんの薬物治療にブレークスルーをもたらすものと期待されています。さらに、この様な高分子キャリアが、遺伝子や核酸医薬デリバリーにも有用であることを実証するなど、 有機化学におけるナノテクノロジーを活かして、薬学や医療の新領域を開拓しました。

○問い合わせ先
 東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻 TEL 03-5841-7138

(2012/7/31掲載)

胃がんを引き起こすピロリ菌がんタンパク質の立体構造解明
  -胃がんの新たな予防・治療法開発に期待-

ピロリ菌が産生するCagAタンパク質は、ヒトの胃の細胞内に侵入した後、様々なヒトタンパク質と結合しそれらの機能を障害することで、胃がん発症を誘導することが示されています。 しかしながら、CagAの分子構造に関する情報はこれまで全く得られておらず、CagAの発がん活性を担う三次元的な構造基盤は謎のままでした。
今回、東京大学大学院医学系研究科の畠山昌則教授、産業技術総合研究所の千田俊哉主任研究員らの研究グループは、X線結晶構造解析と核磁気共鳴(NMR)法を駆使して、ピロリ菌CagAの立体構造の解明に成功しました。
彼らは、CagAが、既知のタンパク質と全く類似性を示さないN字型の固いコア構造をもつ「CagA体部」と、決まった構造をもたず可動性に富む「CagA尾部」から成っていることを発見し、 さらに、CagA尾部がCagA体部に付着して投げ縄のようなループを構成する結果、発がん活性が増強するという分子内スイッチ機構の存在を初めて明らかにしました。
本成果は、細菌由来がんタンパク質の初の分子構造解明であり、ピロリ菌による胃発がん機構の理解を加速させるとともに、革新的な胃がんの分子標的治療・予防への道が拓かれることが期待されます。
本研究は米国科学誌「Cell Host & Microbe誌」7月19日号に掲載されました。

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(2012/7/31掲載)

自閉症スペクトラム障害に脳の特定領域の活動不全が関与
  -対人コミュニケーションの障害に特徴的な認知パターンを実証-

自閉症スペクトラム障害は、相手や場の状況に合わせた振る舞いができないといった対人コミュニケーションの障害を主徴とする代表的な発達障害です。 この障害の原因や治療法は未確立で、高い知能を有する人でも社会生活に困難をきたしやすい現状にあります。

東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の准教授 山末英典、同統合生理学分野の大学院生 渡部喬光らのグループは、自閉症スペクトラム障害の当事者では、他者が自分に対して友好的か敵対的かを判断する際に、 顔や声の表情よりも言葉の内容を重視する傾向があること、また、その際には内側前頭前野と呼ばれる脳の場所の活動が有意に弱いことを初めて示しました。 さらにこの内側前頭前野の活動が減弱しているほど臨床的に観察されたコミュニケーションの障害の症状が重いことを示しました(科学技術振興機構「戦略的創造研究推進事業 CREST」および文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」による成果)。

今後はこの研究成果をもとに、これまで乏しかった対人コミュニケーション障害の客観的評価方法の開発や、自閉症スペクトラム障害当事者との相互理解の促進といった展開が期待されます。これらの成果は、日本時間 6月23日午前6時にPLoS One誌にて発表されました。

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(2012/6/8掲載)

アルツハイマー型認知症治療候補物質TAK-070 の譲渡契約締結について

この度、国立大学法人東京大学(本部:東京都文京区)は、武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区)より、同社が創製したアルツハイマー型認知症治療薬の候補物質である TAK-070(開発コード)の譲渡を受ける契約を締結しました。

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(2012/6/8掲載)

神経細胞の情報伝達効率を調節する新たな分子メカニズムを発見

JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京大学 大学院医学系研究科の尾藤 晴彦 准教授と奥野 浩行 助教らは、マウスやラットを用いた実験により、 神経細胞が外部からの刺激に応じて情報伝達効率を調節する新しい分子メカニズムを解明しました。

記憶は、神経細胞のシナプスでの情報伝達効率の変化により保存されていますが、その変化は通常、数分から数時間で消失してしまいます(短期記憶)。 しかし、強烈な経験や何度も同じ経験をすると、情報伝達効率の変化は数日以上の長期にわたり維持され、長期記憶が形成されます。 これは、神経細胞が外部からの刺激に応じてシナプスの性質を長期的に変化させるためであり、こうした仕組みが脳の柔軟性や記憶の形成・保持に必要であると考えられています。 これまでの研究により、シナプスの長期変化には、神経細胞の細胞体で新規遺伝子の発現が必要なことが明らかになっています。 しかし、神経活動によって発現された遺伝子の産物が細胞のどの部位で、どのような方法で神経細胞の性質を調節し変化させているのかについては、これまでほとんど分かっていませんでした。

本研究グループは、神経活動で発現される遺伝子の産物の1つであるArc(アーク)というたんぱく質に着目しました。Arcたんぱく質はシナプス部位に運ばれ集積しますが、 活動性の高いシナプスではなく、逆に活動性の低いシナプスへ運ばれ集積されていることが明らかになりました。さらに、その集積度は神経伝達を担っているグルタミン酸受容体の量と逆相関であることがわかりました。 このことから、長期的な記憶が形成されるにあたって、Arcたんぱく質が不要なシナプスの機能を抑える役割を果たしていると考えられます。

ヒトにおいても、このような遺伝子発現による神経機能調節機構は脳の発達や学習・記憶形成などに必須なメカニズムであると考えられます。 今回の発見は、精神疾患や学習・記憶障害などの病態解明および治療法の開発につながるものと期待されます。

本研究成果は、2012年5月11日付けの米国科学雑誌「Cell」で公開されました。

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(2012/6/4掲載)

70歳時の医療費窓口負担2割減で健康状態改善の可能性

医療費の自己負担率が70歳になると3割から1~2割に低減されます。国際保健学専攻の渋谷健司教授を代表とする厚生労働省科学研究で、 臨床疫学経済学分野の橋本英樹教授とハーバード・筑波大学のグループは、国民生活基礎調査データを用いて負担の低減が健康改善につながることを初めて明らかにしました。
(世界保健機関紀要5月号掲載)

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(2012/4/12掲載)

生活習慣病のひとつ、高尿酸血症の定説を覆す発見
  -新たなしくみに基づく予防法や新薬の開発に期待-

生活習慣病のひとつである高尿酸血症は、激しい関節痛を特徴とする痛風を引き起こすだけでなく、高血圧、脳卒中などの危険因子となることが知られています。 従来、高尿酸血症は「腎臓からの尿酸の排泄能力の低下」と「尿酸産生量の過剰」が原因で発症すると考えられてきました。

この度、東京薬科大学の市田公美教授、防衛医科大学校の松尾洋孝講師及び東京大学医学部附属病院の高田龍平助教、 鈴木洋史教授らの研究グループは、尿酸トランスポーター(輸送体)の 分子機能に基づく大規模な遺伝子解析と遺伝子改変動物を用いた解析から、これまでの高尿酸血症の概念を大きく変える発見に至りました。すなわち、トランスポーターABCG2 の尿酸排泄機能の低下により、 腎臓よりむしろ腸管からの尿酸排泄機能が低下することが、高尿酸血症の主要な原因のひとつであることを発見しました(「Nature Communications」誌 日本時間4月4日掲載)。 今回の研究により、腸管からの尿酸の排泄低下をきたすABCG2 遺伝子の変異が高尿酸血症患者全体の約8 割に認められることがわかりました。

本研究は、高尿酸血症を引き起こすメカニズムとして、今まで無視されていた腸管からの尿酸排泄の重要性を示すものであり、現代医学の定説を覆す発見です。 この新たなメカニズムの発見により、新たな視点からの予防法や治療薬の開発につながることが大いに期待されます。

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(2012/4/4掲載)

東京大学医学部附属病院 全国初の災害医療マネジメント部を設置
  -東日本大震災経験を踏まえ、新たな災害医療マネジメントのモデルを確立-

平成24年4月1日より、東京大学医学部附属病院では、「災害医療マネジメント部」を設置します。当部は、東日本大震災における宮城県エリアでの災害医療支援活動の経験を踏まえ、 大規模災害時の救急医療から中長期的な保健・予防活動までを包括的にマネジメントする「災害医療マネジメント学」の確立と、それを担う専門的医療人である「災害保健医療マネージャー」の育成を目的としています。

設置の目的は、災害発生時の超急性期の医療提供にとどまりません。東日本大震災では、巨大津波により多くの医療機関、自治体が機能を失い、多数の市民が長期の避難所生活を余儀なくされたため、 多チーム・多職種協働による身体・こころのケア活動を中長期にわたってマネジメントできるかどうかが、災害医療活動の成否を分けました。「災害医療マネジメント」はこのような教訓から生まれた新しい概念です。

災害医療マネジメント部は、救急、内科・高齢者医療、小児医療、こころのケア、感染症、看護、薬剤、ロジスティクス、IT などの専門家で構成します。 災害医療マネジメントの方法論の確立、国や地域レベルの災害医療のネットワークの構築や維持、多職種の人材育成・研修を行い、今後のいかなる大規模災害にも被災者に医療を有効に届けるモデルとなることを目指します。

※ 詳細はリリース文書をご覧下さい。
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(2012/3/28掲載)

2型糖尿病発症に関わる遺伝子領域ANK1を発見
  -2型糖尿病発症の仕組み解明へ足がかり-

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と東京大学医学部附属病院(門脇孝病院長)は、日本人集団を対象としたゲノムワイド関連解析を行い、 日本人の2型糖尿病の発症に関わる新たな遺伝子領域ANK1を発見しました。これは、理研ゲノム医科学研究センター(久保充明センター長代行)内分泌代謝疾患研究チームの 前田士郎チームリーダー、今村美菜子研究員らと、文部科学省「オーダーメイド医療実現化プロジェクト メタボリック・シンドローム関連疾患における個別化医療の実現」実施機関である 東京大学大学院医学系研究科/東京大学医学部附属病院の門脇孝教授らとの共同研究グループによる成果です。

今回の成果は、日本人のみならず人種を超えた2 型糖尿病の発症の仕組みの解明につながるとともに、新たな治療薬の開発や予防法の開発にも結びつくと期待できます。

本研究成果は、英国の科学雑誌『Human Molecular Genetics』オンライン版(3月27日付け:日本時間3月28日)に掲載されました。

※ 詳細は下記プレスリリースをご覧下さい。
  独立行政法人理化学研究所 プレスリリース

(2012/3/28掲載)

東京大学大学院工学系/医学系研究科 片岡一則教授がフンボルト賞を受賞

東京大学大学院工学系/医学系研究科 片岡一則教授は、ドイツのアレキサンダー・フォン・フンボルト財団より、本年度のフンボルト賞を授与されることが決定した。 同賞は、ドイツ政府の国際的学術活動機関であるアレキサンダー・フォン・フンボルト財団が創設した賞である。人文、社会、理、工、医、農学の各分野において、 基本的な発見もしくは新しい理論によって後世に残る重要な業績を挙げ、今後も学問の最先端で活躍すると期待される国際的に著名な研究者に対して授与されるもので、 本賞に加えて5万ユーロの賞金およびドイツでの滞在費用が支給される。本学では、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊特別栄誉教授や元東大総長の有馬朗人名誉教授などが過去に受賞しており、 これまでの受賞者のうち43名がノーベル賞を受賞している、ドイツで最も栄誉のある賞とされている。 片岡教授は高分子化学分野での受賞で、本分野において日本人としては7人目の受賞者となった。授賞式は本年の3月23日にドイツにおいて行われ、 さらに受賞者は、同6月にドイツ大統領官邸ベルビュー宮殿で行われる大統領主催のレセプションに招待されている。

今回の受賞の対象となった研究は、「高分子ナノテクノロジーに基づく標的指向型ドラッグデリバリーシステム(DDS)の創出」であり、 特に、高分子型医薬の難治がん治療における優れた効果の実証を通じて、ナノ医療(ナノメディシン)という新分野の確立をもたらしたことが高く評価された。 片岡教授は、精密合成された高分子のナノ分子集積技術を駆使することによって、ウイルスサイズ(約50ナノメートル)の薬物キャリア(高分子ミセル)を世界に先駆けて創出し、 従来の化学療法では治らない難治固形がんの標的治療を成功させた。現在、4種類の異なる制がん剤を内包した高分子ミセルが、国際的な(日本、米国、欧州、アジア)臨床第II相試験 にまで進んでおり、 膵臓がんをはじめとする難治がんの薬物治療にブレークスルーをもたらすものと期待されている。さらに、この様な高分子キャリアの遺伝子や核酸医薬デリバリーにおける有用性をも実証し、 2009年度からは、日本のトップ30の研究者に選ばれ、内閣府最先端研究開発支援プログラムにて、産業界・大学・研究所からなる大規模研究プロジェクトである「ナノバイオテクノロジーが先導する診断・治療イノベーション」を率いている。

※臨床第II相試験:比較的少数の患者に実際に薬剤を投与し、安全性、有効性などの検討を行う試験。
 より大規模におこなわれる第III相試験の前に用量、用法などを検討するのが主な目的となっている。
 第III相試験の後、規制当局に承認されると医薬品として販売することが可能となる。


研究内容に関する問い合わせ先:
  東京大学大学院医学系研究科臨床医工学部門
  准教授 西山 伸宏
  TEL:03-5841-1430
  E-mail:nishiyama@bmw.t.u-tokyo.ac.jp

その他に関する問い合わせ先:
  東京大学片岡研究室
  ヤーネス 聖子
  TEL:03-5841-1509
  E-mail:jarnes@cnbi.t.u-tokyo.ac.jp

  科学技術振興機構ナノバイオファースト支援事務局 
  山本 祐子
  TEL:03-5841-1267、FAX:03-5841-1510
  E-mail:yamamoto@nanobiof.t.u-tokyo.ac.jp

(2012/2/1掲載)