紹介

医療情報学の目標

医療・医学においては、電子カルテに代表される診療情報の電子データ蓄積や全ヒトゲノム解析におけるゲノム情報が爆発的に増加しています。この膨大なデータを解析してそこから新たな知見を得て、医療・医学の新たな発展に貢献することが、医療情報学の目標です。
そのためには、まず医療・医学で発生し蓄積される電子データをコンピュータ処理できる適切なデータ形式にすること、多施設からのデータを統合解析できるようにデータを標準化をすること、大規模な解析に耐えられる精度と質の高いデータが得られるようにすることなど、が求められます。また、電子カルテの自然言語(文章)データの解析や、ゲノム情報と診療情報との統合解析などの新しい手法の開発も必要です。
また、診療では患者から得られる大変多くの診療情報を総合的に分析して意思決定をし、診療(診断、検査、治療)を行います。この診療の過程、つまり診療という医療者の高度な知的活動そのものを、IT(情報技術)で支援し、コンピュータシステムにより効率化することも医療情報学の目標です。こうした診療の効率化は医療の質、安全性の向上にも繋がります。
医療・医学を情報技術と情報学的手法により変革しようとするのが医療情報学であり、その医療の現状を分析し医療経済的に見て効果的に社会資源を配置し活用できる医療に変えていくこともまた医療情報学の目標です。

対象領域のキーワード

医療情報システム、次世代電子カルテ、医療情報ネットワーク、バーチャル医療情報環境、医学概念のコンピュータ表現と標準化、オントロジー、医用知識工学、病院情報疫学、医療の質の評価、プライバシー保護と暗号化、情報セキュリティー、医療分析、病院経営分析、医療安全管理、など

教室の特徴
医学部附属病院の中に研究教育環境をおき、日常の東大病院医療情報システムの運用管理業務を行いながら研究することで、実データを実システムを研究フィールドにできることが最大の特徴である。この環境の中で、個人個人のバックグラウンドの多様性を尊重するとともに、それを最大限生かした研究組織の構築を行い、研究者と学生のオープンな議論の場を形成することにより、各人の能力を生かせる自由で自主的な医療情報学の研究教育環境を提供する。

スタッフの現況
医学系研究科公共健康医学専攻教授、病院スタッフ、疾患生命工学センター、医療経営政策学寄付講座、健康空間情報学社会連携講座のスタッフも必要に応じて支援する体制をとっている。
詳細は【スタッフ】のページをごらんください。

大学院生・学生の状況
院生・研究生のページをごらんください。

社会医学専攻の医療情報経済学分野について
東京大学大学院医学系研究科には12の専攻があり、そのひとつが社会医学専攻です。当教室は社会医学専攻に所属しています。
医療情報経済学分野では、医学博士課程(4年制)を受け持っており、医学部(医学科)6年制を卒業した人および、本学または他大学の修士課程を終えた人が入学することができます(医師である必要はありません)。規定の単位を修得し博士論文が合格すれば博士(医学)を取得することができます。

公共健康医学専攻の医療情報システム学分野について
東京大学大学院医学系研究科には2007年度から公共健康医学専攻が新設されました。この専攻は、専門職修士課程と呼ばれるもので、1年コースと2年コースがあり、修了すると公衆衛生学修士(専門職)-英名:Master of Public Health(MPH)-が授与されます。
当教室はこの専攻の医療情報システム学分野を受け持っています。詳細は公共健康医学専攻のホームページもごらんください。http://www.m.u-tokyo.ac.jp/sph

医科学修士専攻の医療情報経済学コースについて
医学系研究科には医科学修士専攻があります。これは医学部6年制以外の学部を卒業した人で本研究科の医学博士課程に進みたい人が、将来博士課程で所属する予定の教室に修士課程の段階から所属して教育を受けられるようにという趣旨で設置されました(博士課程入学時に面接試験はあります)。

この修士課程では、まず医科学修士課程に入学し、最初の4ヶ月間程度で全専攻の共通講義を受講した上で、所属する教室を決めます。その後の約1年半はその教室で修士学生として研究を行い、修士論文を作成します。規定の単位を修得し修士論文が合格すれば修士(医科学)を取得することができます。
当教室でも医科学修士専攻の学生を受け入ることができますので相談ください。

医学部附属病院企画情報運営部
教授または准教授は東大病院の企画情報運営部の部長を併任しており、同部所属のスタッフとともにこれらの組織を運営していることから、大学院教育と研究の場は、医学部附属病院企画情報運営部と一体となっています。企画情報運営部は医学部附属病院の将来計画や企画に関する情報分析を医療情報システムにより行う実践の場であるとともに、病院全体の医療情報システムの企画・設計・開発・運用など実務のすべてを行っています。