社会医学専攻は衛生学、公衆衛生学、法医学、医療情報経済学、ならびに協力講座である健康環境医工学部門の5分野で構成されている。人間集団全体の健康増進や予防の推進、医学・医療の社会的側面の解明、医学研究の社会的還元の促進などに関わる研究や教育を行っている。社会医学専攻では、このような多様なアプローチと専攻としての有機的なつながりを生かして、人間集団全体の健康増進や予防の推進、医学・医療の社会的側面の解明、医学研究の社会的還元の促進などに関わる研究・教育をさらに発展させたいと考えている。さらに総合大学の特長を生かして、同じ研究科内における健康科学・看護学専攻、病因・病理学専攻、国際保健学専攻、あるいは東京大学に新設された大学院情報学環などとの連係により、教育研究の発展を図りたいと考えている。
上記5分野のうち、現時点で、医科学修士を正式に受け入れている分野は、衛生学と健康環境医工学の2分野である。
1)衛生学分野
がんや炎症・免疫疾患など多種の細胞によって構成される複雑系について、ゲノムレベルで多量のデータ計測を行うことによりその動態を明らかにし、介入可能な予防・治療ターゲットやバイオマーカーになりうる特異的現象の探索と疾患における意義について解析を行なっている。また多量・多次元のゲノム配列・画像等の生物情報のなかから次元圧縮・可視化等により本質的な情報を抽出し人が解釈するためのバイオインフォマティックスの技術開発にも取り組んでいる。
2)健康環境医工学部門
疾患生命工学センターの一部門でもある。環境や食品中の化学物質の健康リスク評価とその毒性が発現するメカニズムの解明の研究を行っている。主に3つのプロジェクトがある。第一は、動物個体や培養細胞を用いて、毒性の表現系を明らかにし、毒性発現に関わる分子の同定を行っている。第二は、胎児期曝露の影響が、大人になってから現れる現象のエピジェネティックな作用メカニズムの研究である。第三は、高次脳機能影響を独自に開発した行動試験装置を用いて、解析することである。2005年1月からスタートした研究室であるが、これまでに医科学修士の大学院学生の諸君が数人、在籍している。研究室の詳細は、ウェッブサイトを参照されたい。<https://lmmhs.m.u-tokyo.ac.jp/>