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東京大学大学院医学系研究科研究科長・医学部長からのご挨拶

医学系研究科長・医学部長 宮園浩平 東京大学大学院医学系研究科・医学部はこれまで優れた医師、医学者を育成し、医学・生命科学に貢献することを目指してきました。 最近報告された Nature誌のPublishing Index 2012 によると、東大はアジア・太平洋地域では1位、世界では9位でした。 この指標は各研究機関からNatureの姉妹誌に発表された論文数を基準にまとめたものですが、東京大学の自然科学の研究レベルが世界的に見ても極めて高いことを示すものであると言えます。 一方で、中国の Chinese Academy of Sciences が12位と急速に進出してきたことは注目すべきところです。 私たちはアジア諸国をはじめ世界の多くの研究者と協力しながら、今後も世界の医学・生命科学をリードして行くことを第一の目標としていきたいと思います。

平成16年に東京大学が法人化して以来、大学を取り巻く環境は大きく変わりました。 幸いにも皆様のご尽力で東京大学医学系研究科・医学部は法人化後もほとんどの分野において全般的に右肩上がりの成長を続けてきました。 しかし国からの大学に対する経済的支援は年々減少しており、我々は教育、研究、診療の将来について積極的に議論し、対処して行くことを迫られています。

リサーチマインドを持った研究者の育成

私たちは高い志を持った優れた研究者を育てるために、これまで数多くの取り組みを行ってきました。 医学部医学科のPh.D.-M.D.コースは発足当初はなかなか学生が集まりませんでしたが、最近では毎年1~2名の学生がコンスタントにこのコースに進むようになりました。 このコースの学生には東大医学部の同窓会である鉄門倶楽部の100周年事業などから経済的支援がなされるようになり、学生が早期から研究に触れることができる制度としてようやく定着して参りました。

さらに平成20年からMD研究者育成プログラム、平成22年からは臨床研究者育成プログラムがスタートし、リサーチマインドを持った学生が基礎研究や臨床研究に早くから触れる機会が格段に増えました。 基礎医学者の育成の試みは他大学にも広がり、文科省や民間財団などの支援を受けて連携がさらに深まりつつあります。

一方で、医学・生命科学が目覚ましい勢いで進歩し、研究内容が高度化・多様化するに伴い、研究を施行するさいに遵守すべき事項も急速に増加しつつあります。 本研究科が発信する研究成果の質を向上させ、外部からの信頼を高め、さらに知的財産など研究によって得られる権利を確保するために、平成22年に研究ガイドラインを作成しました。 このガイドラインは実験系と調査系の2つに分かれています。 研究ガイドラインはこのホームページ「教育について」からアクセスできますので参考にしていただければ幸いです。

インフラの整備・健康総合科学科の将来構想・研究成果の社会への情報発信

大学病院の運営が極めて難しい中で、多くの関係者の努力により東京大学医学部附属病院は我が国随一の極めて高い診療レベルを誇っています。 こうした中で附属病院では老朽化した臨床研究棟の全面建て直しを含むクリニカルリサーチセンターと病院第二期棟工事がいよいよ開始されることになっており、門脇孝病院長のもと、準備が進められています。 臨床の教室から世界トップの研究が発表され続けているにも関わらず、研究室は古いままの厳しい状況であったことを考えると遅きに失した感がありますが、新しい臨床研究棟が一日も早く完成することを願い、医学系研究科全体で応援していきたいと思います。

健康科学・看護学科は平成22年より健康総合科学科と名称を変更し、人間の健康を幅広く科学的に解明することを目標として大きな発展を目指しております。 我が国では最近は高齢者がますます増加し、高齢社会から超高齢社会へと移行しようとしています。 そうした中で「健康」をテーマとした健康総合科学は、社会のニーズにもマッチした、今後ますます必要とされる学問領域となっていくと期待しています。 また平成19年に公衆衛生学分野の高度専門職業人を養成することを目的に開始された公共健康医学専攻専門職大学院(SPH)は、多くの学生が集まり順調に進んでいます。 修了者には保健医療行政・健康管理などに携わる公衆衛生医師や臨床疫学・医療経済評価専門家などとしての活躍が期待されており、今後の発展が注目されます。

平成23年に東大医学部・附属病院150周年記念事業募金により医学部総合中央館(図書館)の地下に「健康と医学の博物館」が完成しました。 東大医学部・附属病院の歴史を示す常設展に加えて、情報発信の場として医学の新しいテーマが展示されている企画展もあり、今年4月末の時点ですでに4万人の来場者をお迎えしております。 今後も医療関係者、学生だけでなく患者さんや一般の方々にとっても貴重なものとして親しまれていくことを願っています。

東大医学系研究科・医学部で学ぶ学生へのメッセージ

この場を借りて本学医学系研究科・医学部で学ぶ学生にメッセージを贈ります。

第一に医学という学問を大切にしてもらいたいと思います。 医学・生命科学の進歩は目覚ましいものがあります。 学生諸君には在学中はもちろん、卒業後も新しい知識を得ることが常に求められます。 同時に新しい知識を得ることは大きな喜びでもあります。 診療においては患者さんを前にして、研究においては得られたデータを前にして、なぜかと疑問を持ち、その疑問に真摯に対応してほしいと願います。 社会に出ると答えのない難問ばかりです。 こうした疑問を一つ一つ解決することが明日の医学医療を創造し、牽引することにつながるのだと信じています。

第二に自分の周囲でともに働く人たちを大切にして欲しいと思います。 他の学問と医学の大きな相違は、医学が人を対象とした学問だということです。 このことこそが医学を学ぶ者が社会から尊敬される理由でもあります。 人と協調することは大きな力ともなります。常に謙虚に人と接することを忘れないでほしいと願います。

最後に

平成23年3月に起こった東北地方太平洋大震災は我が国の歴史においても例を見ない甚大な被害をもたらしました。 今回の震災は今後の日本がどのように進んでいくかに大きく関わる重大な出来事だったと言えます。 震災からの復興が進みつつある一方で、長期的には私たちの職場や日常の生活のあり方そのものについても真剣に考えていく大きな転機であったと言わざるを得ません。

東大医学系研究科の使命は生命現象のしくみの解明、疾病の克服および健康の増進に寄与する最先端研究を推進するとともに、医学系領域の各分野において卓越した学識と高度な独創的研究能力を有する国際的リーダーを養成することと謳われています。 世界最先端の研究成果をあげることはもちろんですが、こうした困難な状況の中、高い倫理観を持った医師・研究者を育成するために、医学系研究科をあげて今後も努力を続けていきたいと思います。

(2013年5月)