医学部医学科
医学部医学科・学生の皆さんへ
医学科学生の皆さん、本郷へようこそ。本郷はとてもきれいな街です。まずは本郷の生活を満喫してください。しかし講義はさぼらないようにしましょう。東大医学部の講義は間違いなく世界最高レベルです。この講義を聴けるのは皆さんの特権でもあります。医学科の1年目では4月から解剖学をはじめとした基礎医学や衛生学などの社会医学を学び、2年目からは臨床医学の講義・実習が始まります。医学科では、膨大な量の講義と実習を行う生活が待っていますが、これから4年間の間に医学を学ぶだけでなく、良き研究者、医師となるために多くのことを学んでほしいと思います。 (続きあり)
私が皆さんに特に期待したいことは以下の2つのことです。
まず第一は、基礎医学、社会医学、臨床医学をしっかり勉強すること、そして,医学を学ぶことを通して、学問の素晴らしさに触れてほしいことです。医学・生命科学は近年、爆発的な勢いで進歩して来ました。その結果、例えば、有効な治療が全くなかった慢性骨髄性白血病に対して、今では特効薬ともいうべき分子標的治療薬が開発されて、治療方法が大きく変わりました。これは病気の原因を染色体から遺伝子のレベルまで解明し、病気が発症するメカニズムを明らかにし、そしてそれを標的とする薬剤を開発するという、多くの研究者が何十年もかけて研究を続けてきた成果の結晶と言えます。こうした基礎医学研究と臨床医学研究の成果が医療の現場で活用されているところを見ると、医学という学問の素晴らしさにあらためて感銘を受けます。
教科書を読むことはもちろん大切ですが、講義や実習に出席して生きた学問に接し、医学の素晴らしさに触れることが重要です。教科書に書いてあることを実習で実際に体験してみると、教科書通りには行かない難しさが分かると思います。また、学問を大切にすることは、研究者だけでなく、実地医療に携わる臨床医、社会医学に進む皆さんにもたいへん重要なことです。皆さんには医学科の4年間を通じてぜひとも医学という学問の素晴らしさに触れてほしいと思います。
第二に期待することは、医学に携わる者として患者さんを常に大切にする姿勢を学ぶということです。多くの学問の中で医学の最も大きな特徴は、患者さんと接し、病気の診断と治療を行うということであり、このことが医師、医学者が社会の中で尊敬される理由でもあります。患者さんの立場にたって、病気やその人の背景とも向き合うことは簡単なようで、実はそれほど容易なことではありません。医学は患者第一であることを常に意識し、自らを律することが最も難しく、肝要です。また優れた医療を実践するためにはチームワークをはかることが重要です。友達はもちろんのこと、多くの人とのコミュニケーションを大切にすること、それが、先輩や同僚、コメディカル、パラメディカルの方々とのチームワークを円滑にすることにつながると思います。M2から診断学実習をはじめ病院での実習が始まりますが、皆さんには講義・実習を通じて患者さんを常に大切にすることを学び、先輩・後輩と多くの経験を分かち合う時間をできるだけ持って欲しいと考えています。
医学科では学生が記憶しなければいけないことが数多くあります。とくに最近では医学がどんどん進歩し、覚えなければいけないことが格段に増えてきたように思えます。しかし皆さんが医師あるいは研究者として活躍していくためにはどれだけ多くのことを知っているかではなく、どのような疑問を持つか、どう考えるか、そしてこうした問題にどのように対処していくかということが重要になってきます。よく考えることが優れた研究者になるための重要な第一歩であることは疑いありません。私たちの研究テーマをいろいろと書きましたがきっとよくわからないと思います。「百聞は一見に如かず」です。東大医学部で受けた講義・実習は私自身にとっても生涯の宝となるような素晴らしいものでした。ぜひとも皆さんが充実した学生生活を送り、優れた医師、医学者への道を進まれることを願っています。
医学部長
分子病理学教授 宮園 浩平
(この挨拶は鉄門倶楽部「進学生のしおり」(平成23年度版)に寄せた原稿に加筆したものです)
本学医学部の基礎及び臨床医学研究者を育成する3つのプロジェクト
医学部の教育カリキュラムは全人的にヒトの体の構造と機能を理解する上で最適のものであり、医学・医療の継続した発展を促す為には、大学医学部における基礎研究医および臨床研究医の人材養成は必要不可欠なものである。
- 対象:医学部2年(M2)または3年(M3)
- 目的:基礎医学研究者を育成する
- 特徴:M2またはM3の終了後に医学部を休学し、博士課程大学院に入学する。医学部卒業を待たずに研究に集中したい人に適したコース。博士課程終了後に医学部に戻る事も可能
- 対象:医学部学生(M1-M4)
- 目的:基礎医学研究者を育成する
- 特徴:通常の医学科の授業と平行して、基礎医学研究に必要な素養を身につけ実践するプログラム。(1) 所属する研究室での各個人の研究活動と、(2) 履修生による活動 (少人数ゼミ、英語、他大学とのリトリート、短期留学など) の両輪からなる。
- Link:「MD研究者育成プログラムに期待する」
- 対象:医学部学生(M1-M4)及び研修医
- 目的:臨床医学研究者を育成する
- 特徴:医学における研究の重要性、臨床系研究者としての考え方について学ぶ。週一回の全体レクチャーシリーズと少人数コース(抄読会/ミニレクチャー/実習など)を用意し、教員と履修生の間での議論の場を提供する。発展的に、各臨床科で行う研究への参加も行っている。
- Link:「実行委員長からのメッセージ」
