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広報・プレスリリース最新情報(2022年(令和4年))

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家族のケアを担う子ども・若者の実態把握へ
~ 英国ヤングケアラー尺度の日本版作成と中高生5,000名へのヤングケアラー存在率調査結果 ~

ヤングケアラーとは、ケアを必要とする家族の世話や家事を行うことなど、通常は大人が負うと想定されているような責任を担う18歳未満の子どもや若者を指します。ヤングケアラーは英国で生まれた概念ですが、近年日本でも知られるようになり、国や自治体による実態調査や法整備の検討も含めた支援体制の構築が進められています。しかし、日本にヤングケアラーがどのくらいいて、どのようなケアを担っているのかについて、国際的に比較することができる尺度はありませんでした。

東京大学医学部附属病院精神神経科の笠井清登教授らの研究グループは英国ノッティンガム大学のStephen Joseph博士との国際共同研究により、日本と他の国の状況を比較することが可能なヤングケアラー尺度を作りました。さらに、その尺度を用いて、国内のヤングケアラーの存在率を調べました。これは日本で初めてのことです。

具体的には、英国放送協会(BBC)と英国ノッティンガム大学が共同で行った調査において用いられたヤングケアラー尺度の日本版を作成しました。そして、日本の中高生5,000名にこの尺度を用いて調査したところ、7.4%が「ヤングケアラー」に該当することがわかりました。ヤングケアラーは、そうでない人に比べて不安や抑うつ(気分の落ち込みなど)が強いこともわかりました。

今後、国際的に比較可能なヤングケアラー尺度日本版によって、日本のヤングケアラーの実情を詳しく調べ、教育、福祉、医療などの支援を届ける必要があります。

本研究成果は、日本時間9月21日に科学誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に掲載されました。

※詳細は東大病院HP掲載の リリース文書[PDF]をご覧ください。

(2022/9/21)

再発した乳がんを完全消失させる実験に成功

光免疫治療は切除の難しい進行がんでも、手術なしに近赤外線の照射によって活性化したがん細胞を殺すことができます。しかし近赤外線は人体内で届く範囲が限られており、治療後の再発が課題となっていました。東京大学アイソトープ総合センター杉山暁助教らの研究グループは、抗体ミメティクス治療薬とAx-SiPcを結合させた効果の高い光免疫製剤「FL2」の開発に成功しました。

これまで、マウスにヒト乳がん細胞を移植し成長させ、FL2治療を1回行った場合、肉眼的には腫瘍が消えたように見えても、病理検査ではがん細胞の一部が残存し、5割が再発していました。本研究では、再発腫瘍が大きくなったあと2回目の治療を行った場合、腫瘍が完全に消失し、その瘢痕組織に免疫系の細胞が集簇していることを、病理検査により発見しました。

FL2反復投与は光が到達できる皮膚腫瘍の根治に効果的であり、腫瘍免疫の活性化に有効な可能性があります。今後、光免疫治療とネオアンチゲンへのRNAワクチンを用いた腫瘍免疫治療を併用した実験を発展させることで、より広範な進行がんの治療につながることが期待されます。

本研究成果は、2022年9月20日(火)(日本時間)に「Cancer Science」にオンライン掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF]をご覧下さい。

(2022/9/20)

1・2回目ファイザーワクチン接種者は3回目にファイザーよりもモデルナの方が感染予防効果は高い可能性

新型コロナウイルス感染流行の長期化に伴い、ワクチン一次接種(1回目および2回目接種)完了者に対するブースター接種が各国で行われています。3回目のブースター接種は新型コロナウイルス感染予防に有効であることが知られており、一次接種とブースター接種の組み合わせによって効果が異なる可能性が示唆されていました。

この度、東京大学大学院医学系研究科の大野幸子特任講師、道端伸明特任助教、康永秀生教授、東京大学大学院情報学環上村鋼平准教授らの研究グループは、ワクチン接種記録システム (VRS: Vaccination Record System)、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS:Health Center Real-time information-sharing System on COVID-19)のデータを用いて、一次接種とブースター接種のワクチンの組み合わせの違いによる新型コロナウイルス感染予防効果の違いについて調査しました。その結果、ファイザー社製ワクチンによる一次接種完了者では、3回目のブースター接種でモデルナ社製ワクチンを使用した場合、ファイザー社製ワクチンを使用した場合と比較して、より新型コロナウイルスの感染のリスクが低くなることが初めて明らかになりました。

本研究結果は、未だ不明な点が多いワクチンの組み合わせとその有効性について新たな知見を与え、個人の意思決定やワクチン確保・流通の政策立案に寄与すると考えられます。

本研究成果は、日本時間9月18日に米国医学雑誌「Clinical Infectious Diseases」のオンライン版に掲載されました。なお本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)ワクチン開発推進事業「予防接種情報とレセプトデータの連結データベースの構築および既存ワクチンの有効性・安全性に関する疫学的・医療経済学評価に関する研究開発」(課題番号:21nf0101636h0001、研究代表:康永秀生)の支援により行われました。

※詳細は東大病院HP掲載の リリース文書[PDF]をご覧ください。

(2022/9/20)

マウスを透明にして血管・リンパ管を3次元・高解像度で可視化
~ 位相的データ解析による新たな脈管構造評価法の確立 ~

近年、血管やリンパ管など脈管構造の解析に3次元画像が用いられることが増えています。しかしながら、1細胞レベルの詳細な解析には未だ免疫組織学的手法を用いた2次元の画像解析が一般的です。また、取得された画像の評価には脈管の分岐点や長さ、幅といったパラメータが利用されており、脈管構造を「形」から総合的に評価する手法はこれまで確立されていませんでした。今回、東京大学大学院医学系研究科の宮園浩平卓越教授、高橋恵生助教(研究当時)らの研究グループは同研究科並びに理化学研究所の上田泰己教授との共同研究により組織透明化手法CUBICによりマウスのさまざまな臓器を透明化し、血管・リンパ管を臓器のまま3次元かつ高解像度にて可視化することに成功しました。さらに、名古屋大学大学院医学系研究科の島村徹平教授らのグループとの共同研究により、それら取得した画像を位相的データ解析などの数理学的手法を取り入れて解析することで、3次元の脈管の構造を総合的に評価する方法を新たに確立しました。また、本研究ではこれら新たな脈管構造評価法を用いて、マウス肺線維症モデルやがんの肺転移モデルなどの病態モデルでリンパ管の構造が変化することを数理学的に示しました。本手法はこれまでのように脈管の分岐点や長さといったある特定のパラメータに依存するのではなく、データの「形」から全体の構造の違いを推測できます。そのため、これまでは見逃していた脈管構造の違いをも捉えることも可能となります。今後、本手法は新たな脈管構造解析のパイプラインとして広く活用されることが期待されます。

本研究は日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業、文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究「細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御」、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)などの支援を受けて行われました。本研究成果は「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。

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(2022/9/12)

日本全国の子ども(小中高生)を対象とした「子ども睡眠健診」プロジェクトを開始

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター合成生物学研究チームの上田泰己チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教室教授)らは、全国の子ども(主に小中高生)を対象として、ウェアラブルデバイスを用いた児童・生徒の睡眠測定を実施し、日本の子どもの睡眠実態の把握と、子ども・保護者に対して睡眠衛生に関する理解増進を推進する「子ども睡眠健診」プロジェクトを開始しました。10月22日(土)にキックオフシンポジウムをオンライン開催します。

これまで上田チームリーダーらは、人々の睡眠に関するデータを大規模に取得し、将来的に睡眠測定を日常的に行って健康増進につなげる取り組み(睡眠健診運動)を推進してきました。成長期の子どもにとっての睡眠は、学力や体力、心身の健康の保持増進などに重要であることが示されており、社会的関心も高まっています。これまで、産業界での従業員の健康に対する働きかけや、市販のスマートウォッチでの活動量の計測、スマートフォンアプリによる睡眠把握など、成人の睡眠の実態把握に関する取り組みは進んできましたが、成長期の子どもに関する研究は多くありません。その理由として、適切な技術的支援が不足していたことが挙げられます。

そこで上田チームリーダーらは、特に小学生・中学生・高校生に焦点を当て、学校現場への技術的支援も含めた「子ども睡眠健診」プロジェクトを始めます。参加者および参加者の保護者に睡眠測定を身近に感じてもらうとともに、日々の睡眠に対する意識付けを行うことで、子どもの生活リズムの改善や健やかな発育・発達につなげることを目指します。

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(2022/9/12)

がん患者さんは、高血圧にも要注意!
~ 国内ビッグデータ解析からの最新知見 ~

がん治療の進歩により、がん患者の生存期間が延長したことで、慢性期に発症する心血管イベント、とりわけ心不全が臨床的に大きな課題となり“腫瘍循環器学”という新たな学問領域として注目を集めています。高血圧は、一般人における心血管イベント発症の主要な危険因子であり、がん患者においても高頻度に合併することが知られています。しかし、がん患者における高血圧が心血管イベント発症と関連するのか、これまで明らかにされていませんでした。

この度、東京大学の小室一成教授、金子英弘特任講師、佐賀大学の野出孝一主任教授、香川大学の西山成教授、滋賀医科大学の矢野裕一朗教授らの研究グループは、日本の大規模な疫学データベースを解析することで、がん患者において、血圧が高いことは心不全などの心血管イベント発症と関連することを明らかにしました。本研究の成果は、血圧管理を通じてがん患者の予後が改善しうる可能性を示唆し、腫瘍循環器学という新しい分野の発展に貢献することが期待されます。なお本研究は、厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「診療現場の実態に即した医療ビッグデータ(NDB等)を利活用できる人材育成促進に資するための研究」(課題番号:21AA2007、研究代表者:康永秀生)の支援により行われ、日本時間9月9日に米国科学誌Journal of Clinical Oncologyに掲載されました。

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(2022/9/9)

血管周囲の脂肪組織が過剰な血管炎症を抑えていることを発見
~ 動脈硬化性疾患の新規治療標的として期待 ~

動脈硬化は、高血圧をはじめ心筋梗塞や脳卒中など多くの病気(動脈硬化性疾患)の原因になっています。この度、東京大学医学部附属病院循環器内科の安達裕助特任研究員、上田和孝助教、小室一成教授、糖尿病・代謝内科の山内敏正教授、病理部の牛久哲男教授らの研究グループは、動脈血管が傷つくと、血管の外側にある血管周囲脂肪組織に褐色化という特徴的な変化が起きることを発見しました。そして褐色化した血管周囲脂肪組織は、抗炎症物質(ニューレグリン4)を分泌して、血管傷害後に起こる炎症が過剰になりすぎないように適切にコントロールしていることが分かりました。今回の研究結果により、血管周囲脂肪組織の機能をターゲットにした動脈硬化性疾患の新しい治療法の開発につながることが期待されます。

本研究成果は9月7日に英国科学雑誌Nature Communicationsのオンライン版に掲載されました。本研究は日本医療研究開発機構(AMED)ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業「マルチオミックス連関による循環器疾患における次世代型精密医療の実現(研究代表者:小室一成)」、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究B「血管の組織修復における細胞間相互作用の解明(21H02908、研究代表者:上田和孝)」、日本学術振興会科学研究費助成事業 若手研究「血管周囲組織のストレス応答機構に着目した動脈硬化進展機序の解明(22K16097、研究代表者:安達裕助)」等の支援により実施されました。

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(2022/9/8)

骨形成に必須の転写因子Runx2によるゲノムDNAの制御機構が明らかに
~ DNA設計図に基づく骨の発生機構の理解に向けて ~

東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センターの北條宏徳准教授、鄭雄一教授、大阪大学大学院歯学研究科口腔分化発育情報学講座の大庭伸介教授(研究当時:東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター准教授、長崎大学生命医科学域(歯学系)教授)、米国南カリフォルニア大学のアンドリュー・マクマホン教授をはじめとする国際共同研究グループは、骨組織を構成する主要な細胞である骨芽細胞と軟骨細胞の発生機構の一端を解明しました。

骨の発生には遺伝子発現を制御するタンパク質Runx2が必要であることが以前から分かっていましたが、Runx2がゲノムDNAのどこに・どのように作用するのか、その制御機構は十分に分かっていませんでした。本研究グループは、次世代シークエンサー解析、マウス遺伝学に加えて、ゲノム編集技術と一細胞解析を融合した最新の解析技術を駆使することで、Runx2を介する骨芽細胞と軟骨細胞の遺伝子発現機構の一端を明らかにしました。本結果は、骨発生メカニズムの理解と新たな骨再生戦略の確立へと発展することが期待されます。

本研究成果は、2022年9月6日(米国東部標準時間)に米国科学誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。

本研究は、主に科研費「若手研究(A)(課題番号:17H05106)」、「基盤(B)(課題番号:20H03885)」、「基盤(B)(課題番号:17H04403)」、「挑戦的研究(萌芽)(課題番号:21K19589)」、「先進ゲノム支援 (PAGS) (課題番号:16H06279)」、AMED「再生医療実現拠点ネットワークプログラム(課題番号:JP21bm0704071)」の支援により実施されました。

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(2022/9/7)

細胞小器官の膜リン脂質の新規修飾様式の発見
~ ホスファチジルエタノールアミンのユビキチン化 ~

真核生物に普遍的に存在するタンパク質であるユビキチンは、他のタンパク質に共有結合して、そのタンパク質の分解や性質の変化をもたらすシグナルとして働きます。ユビキチン化が1980年に発見されてから40年以上経ちますが、これまでユビキチン化はタンパク質のみに起きると考えられてきました。

今回、東京大学大学院医学系研究科の水島昇教授らの研究グループは、細胞小器官の膜を構成するリン脂質であるホスファチジルエタノールアミンがユビキチン化されることを発見しました。ホスファチジルエタノールアミンのユビキチン化は、エンドソームやリソソームなどの細胞小器官や一部のウイルスでみられ、ユビキチンと結合する性質を持つ他のタンパク質を引き寄せる働きをしていると考えられます。本研究は、生理的条件下で細胞小器官の膜脂質そのものがユビキチン化されていることを示す初めての成果であり、非常に多くの生命現象や疾患に関連することが知られているユビキチンの働きに一石を投じたことになります。

本研究は、東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教室の上田泰己教授、大出晃士講師との共同研究であり、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)「水島細胞内分解ダイナミクスプロジェクト」(研究総括:水島昇)などの支援を受けて行われました。

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(2022/9/1)

知的障害を引き起こすリン酸化酵素の異常を解明
~ 蛍光を使って病気の仕組みに迫る ~

脳が正常に働くためにはCaMKIIα(カムケーツーアルファ)が適切に活性化することが重要である。東京大学大学院医学系研究科の藤井哉講師、尾藤晴彦教授、名古屋大学大学院医学系研究科の城所博之助教、名古屋大学環境医学研究所/大学院医学系研究科の竹本さやか教授らの研究グループは、CaMKIIαにP212L変異(CaMKIIαタンパク質の212番目のアミノ酸がプロリン(P)からロイシン(L)に変化している変異)があることによって、CaMKIIαが異常に活性化して知的障害を引き起こしていることを明らかにした。

今回、研究グループは知的障害のある患者の全エクソームシークエンス解析を行い、CaMKIIαの遺伝子にP212L変異があることを発見した。以前からP212L変異が知的障害を引き起こすことは知られていたが、この変異によってCaMKIIαの機能がどのように変わって知的障害が引き起こされるのかという仕組みは全く分かっていなかった。そこで、CaMKIIαの活性化を蛍光で測定する方法を独自に開発し、細胞から抽出した溶液や生きた神経細胞・シナプスでCaMKIIαの活性化を解析した。その結果、P212L変異のあるCaMKIIαは神経活動によって異常に活性化されることを世界で初めて明らかにした。また、認知症の治療に使われるメマンチンを使うとP212L変異のあるCaMKIIαの異常な活性化を抑えられることを明らかにした。

この成果はCaMKIIα変異による知的障害の仕組みの解明につながると考えられる。また、CaMKIIαの異常な活性化を抑えることで知的障害の治療法の開発につながることが期待される。

本研究成果は、2022年9月1日(日本標準時)にスイス科学誌「Frontiers in molecular neuroscience」のオンライン版に掲載された。

本研究は日本医療研究開発機構(AMED)・脳とこころの研究推進プログラム(JP19dm0207079)、文部科学省新学術領域研究「記憶・情動における多領野間脳情報動態の光学的計測と制御」(JP17H06312)、科学研究費補助金(JP17K13270 , JP22H00432, JP22H05160, JP21H05091) の支援により実施された。

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(2022/9/1)

乳児期発症急性リンパ性白血病を5群に分類できることを解明
~ 分子診断法の高精度化と治療の最適化への貢献を期待 ~

乳児期に発症する急性リンパ性白血病(乳児ALL)は、小児期に発症するALLと大きく異なり、約80%にKMT2A融合遺伝子を認めることが特徴です(KMT2A-r乳児ALL)。KMT2A-r乳児ALLは今なお非常に悪性度が高く、生存率が50%前後の難しい疾患です。

京都大学大学院医学研究科発達小児科学の滝田順子 教授、腫瘍生物学講座 小川誠司 教授、東京医科歯科大学医歯学総合研究科発生発達病態学分野の髙木正稔 准教授、東京大学医学部附属病院小児科の磯部知弥 研究員、佐藤亜以子特任研究員らは、KMT2A-r乳児ALL 84例のゲノム・エピゲノム異常の全体像を解明しました。

その結果、遺伝子発現、DNAメチル化のパターンから乳児ALLは5群に分類されることを見出し、それぞれの群の遺伝子異常の特徴と臨床的特性を明らかにしました。中でも極めて悪性度の高い群として、IRX転写因子の高発現とBリンパ球の最も未分化な発現パターンを特徴とする「IRXタイプ最未分化型」を世界で初めて同定し、この群がRAS経路の異常を高頻度に重複する特徴的な一群であることを示しました。この成果は、乳児ALLの精度の高い分子診断法の開発と治療の最適化の実現に役立つものと期待されます。

本成果は2022年8月30日(現地時刻)に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

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(2022/8/31)

組織破壊型の線維芽細胞をつくる遺伝子ETS1の同定
~ 関節リウマチ、がん、腸炎など、線維芽細胞が関わる疾患の治療に道 ~

線維芽細胞は、これまで単に体を構成する足場として働く細胞と考えられてきましたが、近年の解析技術の進歩により、病気の組織には組織破壊型や炎症型などの悪玉タイプの線維芽細胞が存在し、関節リウマチをはじめとする多くの疾患をひきおこすことが明らかになりつつあります。東京大学大学院医学系研究科 免疫学講座の高柳 広 教授らの研究グループは、関節リウマチにおいて滑膜線維芽細胞は炎症を誘導するだけでなく、破骨細胞誘導因子RANKLを産生するおもな細胞として骨破壊を誘導することを報告してきました。しかしながら骨破壊を誘導する、組織破壊型の滑膜線維芽細胞をつくるもとになる遺伝子はみつかっていませんでした。

今回、高柳教授らは、滑膜線維芽細胞においてRANKLや軟骨を破壊するたんぱく質の発現を誘導する主要な遺伝子としてETS1を同定しました。滑膜線維芽細胞のみETS1を欠損させたマウスを新たに作製し、関節炎を誘導すると炎症には影響がないものの骨と軟骨の破壊が共に抑制されたことから、ETS1が骨・軟骨を破壊する組織破壊型の滑膜線維芽細胞の機能や運命決定を司る遺伝子であることが明らかとなりました。さらにETS1は関節リウマチだけでなく腸炎やがんの病態形成に関わる組織破壊型の線維芽細胞のサブセットにも高く発現しており、組織破壊型の線維芽細胞の形成を通じてさまざまな疾患に関わる可能性が示唆されました。これらの研究成果は組織破壊型の線維芽細胞を標的とした治療法の開発に大きく貢献するものと期待されます。

本研究は、日本学術振興会 科学研究費補助金(15H05703、21H05046、21H03104、22H02844、20K21515、19J21942、22F22108)や、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)免疫アレルギー疾患実用化研究事業における研究開発課題「関節リウマチの病原性間葉系細胞サブセットを標的とした骨破壊治療法の開発」(研究開発代表者:高柳 広)、革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「生体組織の適応・修復機構の時空間的解析による生命現象の理解と医療技術シーズの創出」研究開発領域における研究開発課題「組織修復型免疫細胞の解明とその制御による疾患治療の開発」(研究開発代表者:高柳 広)などの支援を受けて行われました。本研究成果は、2022年8月23日(米国東部夏時間)にNature Immunologyのオンライン版に掲載されました。

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(2022/8/25)

全身性エリテマトーデスの病態解明へ
~ 疾患の発症・増悪に関わる遺伝子発現異常を同定 ~

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター自己免疫疾患研究チームの中野正博特別研究員、ヒト免疫遺伝研究チームの石垣和慶チームリーダー、自己免疫疾患研究チームの山本一彦チームリーダー、東京大学大学院医学系研究科アレルギー・リウマチ学の藤尾圭志教授らの共同研究グループは、全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に関わる免疫細胞の遺伝子発現異常を多数同定しました。

研究成果は、SLEのさらなる病態理解と新しい治療標的の発見に貢献すると期待できます。

SLEは、発症後に寛解と増悪(重症化)を繰り返し、さまざまな臓器が侵される難治性自己免疫疾患であり、詳細な病態は未解明です。

今回、共同研究グループは、SLE患者と健常人の血液から取り出した27種の免疫細胞(計6,386サンプル)を解析し、疾患に関わる遺伝子の発現パターンを詳しく調べました。さまざまな症状を持つSLE患者に対して、免疫細胞を細かく分けた高精度の遺伝子発現解析を行ったことで、SLEの発症時と増悪時に、異なる免疫細胞がそれぞれ異なるメカニズムで働いていることが初めて明らかになりました。発症時と増悪時を区別してSLEの病態を理解することにより、新たな治療標的の同定につながることが期待できるとともに、今後の遺伝子解析研究の新たな方向性を示すことに成功しました。

本研究は、科学雑誌『Cell』オンライン版(8月22日付:日本時間8月23日)に掲載されました。

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(2022/8/23)

腱・靱帯の修復メカニズムの解明

東京大学大学院医学系研究科の立花直寛(医学博士課程[研究当時])、田中栄教授、齋藤琢准教授らのグループは、腱・靭帯が障害を受けた際に出現する新規のプロジェニター細胞を発見しました。腱や靱帯が損傷を受けると、その修復過程において本来出来てはならない軟骨や骨が生じてしまうことがあり、そうすると痛みが出て、関節の機能が著しく損なわれてしまいます。1細胞毎に発現遺伝子を解析するシングルセル解析の手法を駆使し、腱の修復過程に関わる全ての細胞を解析したところ、プロジェニター細胞集団の中にRSPO2を発現する一群がいることを発見しました。このRSPO2を分泌するプロジェニター細胞は、主にRSPO2の分泌を介して周囲の細胞の軟骨化や骨化を抑制しており、後縦靭帯骨化症の発症にも関わっていることが分かりました。このプロジェニター細胞は腱・靱帯の維持に広く関わっている可能性が高く、本研究の成果は様々な関節や脊椎の変性疾患のメカニズム解明にも繋がる成果と期待されます。本研究成果は日本時間2022年8月20日(米国東部夏時間:8月19日)に米国科学誌「Science Advances」のオンライン版に掲載されました。本研究は、主に科研費「基盤研究(S)(課題番号:19H05654)」の支援により実施されました。

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(2022/8/22)

腎保護作用が最も強いSGLT2阻害薬は?
~ 薬剤間の薬効差を比較 ~

糖尿病の治療薬として開発されたSGLT2阻害薬は、腎臓にある近位尿細管での糖の再吸収を阻害し、糖を尿から排出することで血糖値を下げる薬剤です。SGLT2阻害薬は、これまでの大規模臨床試験において、慢性腎臓病(CKD)の症例に対して腎保護効果が示されたことから、腎臓病の治療薬としても注目を集めています。国内では2014年以降、6種類のSGLT2阻害薬が保険適用され、糖尿病の治療薬として処方されています。SGLT2阻害薬の薬剤間で効果に差が生じるのか、それとも共通の効果(クラスエフェクト)を示すのかについては臨床におけるエビデンスが少ないため、こうしたエビデンスの蓄積が望まれています。

そこで、東京大学の小室一成教授、金子英弘特任講師、南学正臣教授、康永秀生教授、岡田啓特任助教、鈴木裕太研究員および、佐賀大学の野出孝一教授らの研究グループは、国内の大規模なレセプトデータベースを用いて、新規にSGLT2阻害薬が処方された約12,000件の糖尿病症例を解析し、SGLT2阻害薬間で、腎機能の経時的な変化量に有意差がないことを示しました。なお、本研究グループは、糖尿病症例における循環器疾患発症率がSGLT2阻害薬の薬剤間で同等であることを報告していますが、これらの結果も合わせると、SGLT2阻害薬の腎保護作用あるいは心保護作用がクラスエフェクトであることが示唆されます。本研究成果は、今後の糖尿病、慢性腎臓病、循環器疾患の治療におけるSGLT2阻害薬の使用を考えるうえで、重要なリアルワールドエビデンスになることが期待されます。

本研究は、日本時間8月9日に国際腎臓学会(ISN)の学会誌「Kidney International (Article in Press)」に掲載されました。

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(2022/8/9)

ゲノムとAIにより食道がんの術前化学療法の効果を予測
~ ゲノムと免疫情報を基にした精密医療に期待 ~

理化学研究所(理研)生命医科学研究センターがんゲノム研究チームの笹川翔太研究員、中川英刀チームリーダー、近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門の安田卓司主任教授、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター免疫細胞治療学講座の垣見和宏特任教授らの共同研究グループは、食道がんの全ゲノムおよびRNA発現データから腫瘍ゲノムのコピー数異常と腫瘍内の免疫動態を解析し、人工知能(AI)を実現するための手法である機械学習を用いて、術前化学療法の効果を予測することに成功しました。

本研究成果は、事前にがん化学療法の効果を予測するがん精密医療や、新しいがん免疫療法の開発に貢献すると期待できます。

今回、共同研究グループは、化学療法開始前に採取した141例の食道がん組織の全ゲノムシークエンス解析およびRNAシークエンス解析を行い、化学療法の効果との関連性を調べました。その結果、がん細胞のコピー数異常や腫瘍内の免疫細胞の動態が化学療法の効果と関連することが分かりました。さらに、喫煙などの臨床情報と免疫・ゲノム情報を統合し、機械学習によって化学療法の効果を予測するアルゴリズムを開発し、その高い診断精度を確認しました。また、マウス腫瘍モデルを用いて、化学療法の効果と最も強い関連が認められた免疫細胞の好中球を除去すると、化学療法の効果が向上することも証明しました。

本研究は、医学系雑誌『Cell Reports Medicine』オンライン版(8月8日付:日本時間8月9日)に掲載されました。

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(2022/8/9)

東京2020オリンピック 国民のスポーツ・運動実践に影響を与えず(2006-2020年調査分析)
~ レガシー実現に向けた戦略的な身体活動促進の取り組みが必要 ~

オリンピックなどの大規模スポーツイベントの開催においては、そのレガシーとして、開催国・都市の人々のスポーツ実践や身体活動を促進する機会となることが期待されています。

東京大学大学院医学系研究科の鎌田真光講師、天笠志保客員研究員らの研究グループは、東京2020大会の開催が決定した2013年の前後7年間(2006~2020年)の複数の全国調査の公開データを用いて、国民全体および東京都民の身体活動・スポーツ実践がどのように変化したかを検証しました。その結果、どの調査データにおいても、オリンピック開催決定前後で身体活動量やスポーツ実施率に変化は見られませんでした。この研究は、オリンピック開催国において、開催決定をきっかけに身体活動・スポーツ実施率が大会前の期間に変化するか(大会前効果:pre-Games effect)を検証した初めての研究になります。

本研究の成果は、国際誌「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に掲載されました。なお、本研究は、早稲田大学の宮地元彦教授、東京医科大学の井上茂教授、シドニー大学の‪Adrian Bauman‬教授との共同研究による成果で、科研費「身体活動の格差を生み出すメカニズムの解明と新たな普及戦略の構築(課題番号:19H03996 研究代表 鎌田真光)」の支援により実施されました。

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(2022/8/9)

朝食・昼食・夕食・間食ごとの食品摂取量の推定を目的とした簡易食習慣評価ツールの構築

東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎助教、篠崎奈々客員研究員、佐々木敏教授らの研究グループは、日本人成人から収集した詳細な食事調査データと食行動に関する既存の科学的知見をもとに、朝食・昼食・夕食・間食ごとの食品摂取量を推定することを目的とした簡易食習慣評価ツール(MDHQ; Meal-based Diet History Questionnaire)を開発しました。

この研究では、日本人成人222人を対象として、MDHQに回答してもらうとともに、最も正確と考えられる食事調査法である食事記録を4日間実施してもらいました。MDHQから推定された食品摂取量を、基準法である食事記録から推定された食品摂取量と比較したところ、MDHQから推定された食品摂取量が十分に正確であることを明らかになりました。

本研究は、朝食・昼食・夕食・間食ごとの食品摂取量が推定できる簡易食習慣評価ツールを開発した世界初の研究です。MDHQは、食事のタイミングが慢性疾患の発症にどのように関係しているかといった「時間栄養学」に関する研究において有用な食事調査ツールとなるだけでなく、日常の食べ方に沿った食事指導や栄養教育を行なうための土台となることが期待されます。

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(2022/8/8)

大脳神経回路形成の新戦略――大脳皮質の多数の領野を結ぶ結合を効率よく作るための並列モジュール戦略を解明

東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻統合生理学分野の村上知成助教、大木研一教授、松井鉄平講師(研究当時、現:岡山大学大学院自然科学科 准教授)らの研究グループは、大脳視覚野にある多数の領野間結合が、発達時に効率的に形成されるメカニズムを解明した。

ヒトの大脳皮質には180にも及ぶ多数の領野が存在し、これらの領野間を結ぶ数千にも及ぶ精密な神経回路による階層的かつ並列的な情報処理は、私たちの脳が複雑かつ汎用的な知性を獲得するための基盤となっている。従来の神経回路発達の研究では、感覚器から大脳皮質の入り口まで(視覚の場合、網膜から一次視覚野まで)の神経回路形成については詳細に調べられてきたが、大脳皮質の領野間をつなぐ無数の結合がどのようなメカニズムで3次元の脳内で精密に混線なく配線されるのかについてはほとんど分かっていなかった。そのメカニズムの一つとして領野の階層性に従ってより低次な領野からより高次な領野へと順に形成していけば混線なく配線できると考えられるが、マウスでは生後から開眼までの2週間の間に多数の領野間の結合を全て作る必要があり、このメカニズムでは時間がかかり過ぎる。それでは、このような複雑な無数の領野間結合を短時間に混線なく形成するためのメカニズムは何だろうか。

本研究ではマウスの視覚系を用いて、大脳皮質の多数の視覚関連領野間をつなぐ結合が短期間で効率的に形成されるメカニズムを解明した。まず、領野間結合が形成される前に、網膜と大脳皮質の多数の視覚関連領野をつなぐ経路が先に形成されることを見いだした。さらに、この経路を伝播する網膜由来の自発活動により、網膜の場所をあらわす情報が多数の視覚関連領野に伝えられ、これが教師信号となって、大脳皮質の多数の視覚関連領野の網膜座標が対応する場所を精密に結ぶ結合が形成されることが示された。

本研究は大脳皮質の領野間結合の形成メカニズムを明らかにしただけでなく、先天盲や早期失明の病態を理解する上でも重要であり、また汎用的人工知能の開発に寄与する可能性が考えられる。本研究成果は、2022年8月3日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature」のオンライン版に掲載された。

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(2022/8/4)

眼窩内海綿状血管奇形の新規疾患関連遺伝子変異(GJA4変異)を同定
~ 血管奇形の新たな発症メカニズム解明や治療法開発につながる期待 ~

血管奇形は異常血管が集合し形成されるもので、全身に生じ様々な臓器の機能障害をきたしうる疾患です。外科的・内科的治療を組み合わせた治療が行われるものの依然根治が困難な症例も多く、重症例は厚生労働省の指定難病として対策が求められています。

この度、東京大学医学部附属病院脳神経外科の本郷博貴助教、宮脇哲講師、齊藤延人教授らの研究グループは、東京大学大学院医学系研究科衛生学分野の石川俊平教授、東京大学大学院医学系研究科分子神経学の辻省次特任教授(研究当時)、東京医科大学臨床医学系眼科学分野の後藤浩主任教授、東京医科大学基礎社会医学系人体病理学分野の長尾俊孝主任教授、大阪大学大学院生命機能研究科パターン形成研究室の渡邉正勝准教授、東京大学医学部附属病院形成外科・美容外科の栗田昌和講師、岡崎睦教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科大規模オーミクス解析分野の森下真一教授、東京大学大学院医学系研究科人体病理学・病理診断学分野の牛久哲男教授、東京大学大学院農学生命科学研究科動物細胞制御学研究室の高橋伸一郎教授らのグループと共同で、眼窩内海綿状血管奇形を含めた様々な血管奇形の遺伝子解析や血管内皮細胞などを用いた実験を行うことにより、眼窩内海綿状血管奇形にGJA4という遺伝子の体細胞変異が高頻度に同定されること、この変異がヘミチャネルの活性亢進につながる機能獲得型変異として血管内皮細胞機能を障害することを世界で初めて示しました。本研究成果により、血管奇形の発症に関わるメカニズムの解明や血管奇形に対する新たな治療法の開発につながることが期待されます。

本研究結果は、日本時間7月29日に専門誌「Angiogenesis」のオンライン版に掲載されました。

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(2022/7/29)

外科医の手術経験数に男女格差!
~ 外科診療におけるジェンダーバイアスの克服をめざして ~

外科医チームメンバーの手術執刀担当の割り振りは、各施設の外科のトップが決めていることがほとんどです。これまでの海外の研究によって、外科医の手術トレーニングに男女格差が存在することがわかっています。しかしながら、若い研修期間中に限定されている報告がほとんどであり、全ての経験年数別に比較されたものはありませんでした。

大阪医科薬科大学の河野恵美子助教、東京大学の野村幸世准教授、及び岐阜大学の吉田和弘学長らの研究グループは、日本の外科手術の95%以上が登録されているNational Clinical Databaseのデータを用いて、6術式(胆嚢摘出術・虫垂切除術・幽門側胃切除術・結腸右半切除術・低位前方切除術・膵頭十二指腸切除術)における外科医1人あたりの執刀数を男女間で比較しました。その結果、全ての術式で女性外科医は男性外科医より執刀数が少ないことが判明しました。格差は手術難易度が高いほど顕著であり、経験年数の増大とともに拡大する傾向にありました。消化器外科に指導的立場の女性が極端に少ないのは、外科手術のトレーニングの機会が均等に与えられていないことが主たる原因であると考えられました。

この研究成果は2022年7月27日(現地時間)に米国の学術誌「JAMA surgery」にオンライン掲載されました。

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(2022/7/28)

骨膜の幹細胞が骨を伸ばす

脊椎動物の「かたち」を決定している骨格系は、身体を支え運動を可能とする運動器としての役割だけでなく、ミネラル代謝調節や造血といった多様な機能を併せ持ち、生体恒常性の維持に必須の役割を担っています。四肢を構成する長管骨の縦軸方向への成長は、骨内部の成長板軟骨に存在する成長板幹細胞が増殖・分化を繰り返すことにより駆動されており、このプロセスは「内軟骨性骨化」と呼ばれ、個体のサイズを決定づけます。一方で、頭蓋骨および鎖骨の形成と、長管骨の横軸方向への成長は、骨の外周を包む骨膜に存在する骨膜幹細胞により仲介され、このプロセスは軟骨形成を伴わないことから「膜性骨化」と呼ばれています。

生後の急激な身長の増加は、乳幼児期、学童期、思春期にそれぞれ栄養、成長ホルモン、性ホルモンが直接的・間接的に成長板軟骨に作用することにより実現され、思春期以降の骨端線の閉鎖(成長板軟骨の癒合)により停止すると考えられています。しかしながら、内軟骨性骨化による適切な骨成長の維持機構および骨端線閉鎖の分子機構に関しては未だ不明な点が多く、様々な原因で生じる低身長症に対する有効な予防・治療法の開発が重要な課題となっています。また、内軟骨性骨化と膜性骨化は、それぞれ局在の異なる骨格幹細胞によって制御される独立した現象と考えられており、骨膜幹細胞と成長板幹細胞の関係性や相互作用に関してはこれまで分かっていませんでした。

東京大学大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 免疫学分野の塚崎 雅之 特任助教と高柳 広 教授らの研究グループは、骨膜幹細胞が膜性骨化だけでなく生後の内軟骨性骨化にも重要な役割を担うことを解明し、骨膜幹細胞の機能障害が早期の骨端線閉鎖による重篤な低身長症と骨量減少を引き起こすことを明らかにしました。本研究成果は、骨格系制御システムの基本原理の理解を深めると同時に、低身長症や骨粗鬆症をはじめとする多くの骨疾患の原因解明及び新規制御法開発や、新たな骨再生法の創出につながることが期待されます。

本研究は、日本学術振興会 科学研究費補助金(15H05703, 18H02919, 18K19438, 19K18943, 18J00744, 21H03104, L20539)や、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「生体組織の適応・修復機構の時空間的解析による生命現象の理解と医療技術シーズの創出」研究開発領域における研究開発課題「組織修復型免疫細胞の解明とその制御による疾患治療の開発」(研究開発代表者:高柳 広)、革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「健康・医療の向上に向けた早期ライフステージにおける生命現象の解明」研究開発領域における研究開発課題「早期ライフステージにおける骨成長の維持及び破綻機構の解明」(研究開発代表者:塚崎 雅之)などの支援を受けて行われました。

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(2022/7/20)

東大病院、院内完結型「がんゲノムプロファイリング検査」実施体制を構築

これまでわが国では、保険収載されているがんゲノムプロファイリング検査は、医療機関で実施されることはなく、すべて外注検査として行われていました。そのため、エキスパートパネル(専門家会議)では検査機関の解析レポートから得られる情報にしかアクセスできず、レポート作成前のゲノム解析データを自ら確認することができませんでした。この度、東京大学医学部附属病院は、次世代シークエンサー(NGS)を用いたがんゲノムプロファイリング検査(保険収載されたもの)に関して、国内の医療機関として初めて検査室の第三者認定(ISO 15189拡大認定)を取得し、院内完結型の実施体制を構築しました。今後、院内完結型NGS検査室において、院内外の症例を受け入れ、OncoGuide™ NCCオンコパネル システムを用いた解析を行います。自ら検体の品質チェックからシークエンス解析結果まで解析の全行程を統括することで、リアルタイムにゲノム解析データを検証し、エキスパートパネルの議論を深め、患者への還元につなげます。

また当院検査室では、東京大学が独自に開発したTodai OncoPanel検査(DNAパネルのみでなくRNAパネルも搭載した多機能型のがんゲノムプロファイリング検査)も実施しており、先駆的ながんゲノム医療の提供に努めています。OJT(オンザジョブトレーニング)を通して、院内のみならず、国内のゲノム医療の診療・教育・人材育成・研究への貢献を目指します。

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(2022/7/19)

ステロイドの術前予防投与で食道がん手術後の在院死亡および呼吸不全のリスクを軽減できることを示唆
~ 国内医療ビッグデータからの知見 ~

食道がん手術は手術ストレスが大きく、呼吸不全などの術後合併症のリスクが高いことが知られています。手術直前にステロイドを投与することで、術後合併症のリスクを軽減する方法が1990年代に日本で考案され、食道癌診療ガイドラインでも「弱く推奨」されていました。しかし、根拠となった研究はいずれも小規模であり、その有用性は特に海外では議論の的でした。また、在院死亡に与える影響も不明でした。

この度、国際医療福祉大学の平野佑樹講師、板野理教授、東京大学の小西孝明医師、金子英弘特任講師、康永秀生教授、慶應義塾大学の北川雄光教授、国立がん研究センター中央病院の大幸宏幸科長らの研究グループは、国内の大規模な入院データベースを用いて、約35,000症例の食道がん手術症例を解析し、手術日にステロイドを使用した症例は使用しなかった症例と比較して、術後の在院死亡や呼吸不全が有意に少なかったことを示しました。また、近年普及している低侵襲な胸腔鏡下手術に絞った解析でも、同様な結果であることを示しました。本研究成果が、食道がん手術の成績向上につながることが期待されます。

本研究成果は、7月14日に米国医学雑誌「Annals of Surgery」のオンライン版に掲載されました。なお本研究は、厚生労働科学研究費補助金(厚生労働行政推進調査事業費補助金・政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)「診療現場の実態に即した医療ビッグデータ(NDB等)を利活用できる人材育成促進に資するための研究」(課題番号:21AA2007、研究代表者:康永秀生)の支援により行われました。

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(2022/7/19)

医師主導治験において、全身性強皮症に対するB細胞除去療法の長期(48週間)にわたる有効性と安全性を確認

東京大学医学部附属病院皮膚科の佐藤伸一教授、吉崎歩講師、江畑慧助教らの研究グループは、全身性強皮症(以下、強皮症)に対する多施設共同医師主導治験(治験責任医師・調整医師 吉崎歩講師)を行い、B細胞除去薬であるリツキシマブの長期(48週間)にわたる有効性と安全性を証明しました。

この医師主導治験は24週間の二重盲検期と、これに続く24週間の実薬投与期から構成され、二重盲検期にプラセボが割り当てられていた方は実薬投与期ではリツキシマブが投与され、もともとリツキシマブが投与されていた方は実薬投与期においても引き続き、リツキシマブの投与が行われました。その結果、はじめにプラセボの投与が行われた方はリツキシマブの投与後から皮膚硬化と肺機能の改善を認め、はじめからリツキシマブが投与されていた方は、二重盲検期で見られた改善効果が維持されていることが明らかとなりました。実薬投与期における有害事象の頻度は、はじめにプラセボを投与された群と、リツキシマブを投与された群の間に差はなく、リツキシマブの投与回数に比例して増加する有害事象も認められませんでした。はじめの24週間の二重盲検期における結果から、リツキシマブは強皮症に対する新たな治療薬として2021年9月に保険適用となりましたが、その後24週間の実投与期を含めたおよそ1年間にわたる今回の研究は、治験として最も長期間、強皮症に対するリツキシマブの有効性と安全性を検討したことになります。

なお、本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「難治性疾患実用化研究事業」の支援と、リツキシマブの製造販売元である全薬工業株式会社の支援(治験費用の一部と治験薬の無償供与)を受け、東京大学医学部附属病院治験審査委員会の承認のもと実施されました。本治験の結果は、膠原病分野を代表する雑誌の一つである英国誌The Lancet Rheumatology誌(オンライン版:日本時間6月29日)に掲載されました。

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(2022/6/29)

リポカリン15はにおいを感じる嗅粘膜の粘液に特異的に豊富に含まれるタンパク質で、加齢により減少する

東京大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野の近藤健二准教授、山岨達也教授の研究グループは味の素株式会社食品研究所の伊地知千織上席研究員、三重大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科の小林正佳准教授との共同研究により、ヒトの嗅覚を司る嗅粘膜の表面を覆う嗅粘液に含まれるタンパク質を網羅的に解析したところ、疎水性分子の物質輸送に関わるリポカリンファミリータンパクの1つであるリポカリン15(LCN15)が多量に含まれていることを見出しました。また、LCN15の嗅粘液中の濃度が加齢により減少することを明らかにしました。さらに、LCN15は嗅粘膜にある分泌腺であるボウマン腺で産生・放出されており、嗅粘膜以外の鼻粘膜には分布しておらず、嗅粘膜の組織中のLCN15の分布は嗅神経細胞の分布量と相関がありました。嗅粘液は嗅覚受容に重要な役割を果たしていますが、本研究はヒト嗅粘液中の物質の産生のしくみを明らかにした初めての研究であり、今後、ヒトの嗅覚受容のしくみの解明に貢献できると期待されます。また、嗅粘液中のLCN15の濃度測定は嗅粘膜の変性をモニターする臨床検査としての役割が期待されます。

本研究成果は、2022年6月24日(英国夏時間)に英国科学誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

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(2022/6/25)

長鎖シークエンスにより網膜色素変性の原因遺伝子変異を解明
~ 新しいゲノム解析技術が遺伝性疾患の原因遺伝子変異の同定に貢献 ~

東京大学大学院医学系研究科の左野裕介特別研究学生(研究当時)、藤本明洋教授、九州大学大学院医学研究院の秋山雅人講師、園田康平教授、理化学研究所生命医科学研究センターの桃沢幸秀チームリーダーらの共同研究グループは、日本の失明原因の第二位である網膜色素変性患者15名について、ロングリードシークエンス技術を用いて全ゲノムの塩基配列解析を行い、うち2名において構造変異の一種である大きなDNAの欠損(欠失)が疾患の原因となっていることを明らかにしました。

網膜色素変性の日本人患者1,204名を対象に従来の遺伝子解析技術であるショートリードシークエンス技術で遺伝的原因を調べた当グループの過去の報告では、7割以上の患者について原因を同定することができませんでした。しかし、ロングリードシークエンスを用いることで、遺伝性疾患の原因遺伝子変異を新たに同定することができました。ロングリードシークエンス技術は、ショートリードシークエンス技術では解析が困難な構造変異や遺伝子の反復領域の塩基配列決定の同定に長けています。本研究において、ロングリードシークエンス技術は、従来の方法で原因が特定できなかった遺伝性疾患の原因解明に有用であることが示唆されました。

本研究成果は、2022年6月16日に英国科学誌「Journal of Medical Genetics」のオンライン版に掲載されました。

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(2022/6/16)

心臓の線維芽細胞が心不全の発症を制御するしくみを発見
~ 心不全発症におけるHtra3-TGF-β-IGFBP7経路を解明 ~

社会の高齢化が進む中、日本のみならず先進国では軒並み慢性心不全の患者数が増加し続けています。長年の治療開発の進歩にもかかわらず、慢性心不全の治療成績は依然として悪性腫瘍と同等ないしはそれ以上に悪いことが知られています。この度、東京大学医学部附属病院 循環器内科の候聡志特任助教、野村征太郎特任助教、山田臣太郎特任研究員、小室一成教授、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科の岡千緒助教、東京大学先端科学技術研究センターの油谷浩幸名誉教授らの研究グループは、心臓にある線維芽細胞と心筋細胞の相互作用に着目して解析することで、線維芽細胞に存在するHtra3というタンパク質の働きが失われると、心臓に負担がかかった時に線維芽細胞や心筋細胞に異常が生じて心不全が悪化すること、また異常になった心筋細胞が分泌する様々なタンパク質のうちIGFBP7を定量評価することで心不全患者の重症度予測に役立つことを世界で初めて発見しました。今回の研究結果により、心不全に対する新しい治療法や心不全患者の予後予測手法の開発へつながることが期待されます。

本研究結果は6月7日に英国科学雑誌Nature Communicationsにて発表されました。なお、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「心臓ストレス応答における個体シングルセル四次元ダイナミクス」(研究開発代表者:野村征太郎)、ゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム:B-cure(ゲノム医療実現推進プラットフォーム・先端ゲノム研究開発:GRIFIN)事業「マルチオミックス連関による循環器疾患における次世代型精密医療の実現(研究開発代表者:小室一成)」、革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「心筋メカノバイオロジー機構の解明による心不全治療法の開発」(研究開発代表者:小室一成)、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究S「非分裂細胞である心筋細胞のDNA損傷と老化による心不全発症機序の解明と応用(21H05045,研究代表者:小室一成)」、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究A「複合的アプローチによる心臓システム構造の統合的理解とその制御(22H00471,研究代表者:野村征太郎)」、日本学術振興会科学研究費助成事業若手研究「心筋梗塞後組織修復及びリモデリングにおける一細胞レベル病態ダイナミクスの解明(19K17587,研究代表者:候聡志)」等の支援により行われました。

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(2022/6/9)

45歳未満の女性の肥満は乳がんの低リスク
~ 約80万例を用いた医療ビッグデータ解析 ~

乳がんは、現在日本では生涯で9人に1人の女性がかかる増加傾向の悪性腫瘍です。欧米ではBMIが大きいと閉経前に乳がんにかかるリスクが低いとされる一方、日本を含む東アジアではその関連性が不明とされ、むしろリスクの高い可能性が指摘されていました。 この度、東京大学大学院医学系研究科の小西孝明(医学博士課程)、田辺真彦准教授、康永秀生教授、瀬戸泰之教授らの研究グループは、国内の大規模医療データベースを用いてBMIと乳がん発生との関連を調査しました。45歳未満の女性約80万人のデータを解析した結果、BMIが22 kg/m²以上であると乳がんにかかるリスクが低く、欧米と同様の関連を持つことを初めて示しました。

欧米では70歳代で最も乳がんが好発する一方、日本など東アジアでは40歳代以降は横ばいあるいは減少することが知られていました。今回の研究の結果から、その違いは日本など東アジアでは肥満者が少ないことと関連していると推察されます。このため、BMI分布を考慮すると、日本では40歳代を中心に若年からの乳がん検診の意義がより大きい可能性があります。また、BMIと乳がんリスクとの人種を問わない関連性は、未だ不明な乳がん発生のしくみの解明に寄与すると考えられます。

本研究成果は、6月4日に米国医学雑誌「Breast Cancer Research and Treatment」のオンライン版に掲載されました。なお本研究は、厚生労働行政推進調査事業費補助金・政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)「診療現場の実態に即した医療ビッグデータ(NDB等)を利活用できる人材育成促進に資するための研究」(課題番号 21AA2007 研究代表 康永秀生)の支援により行われました。

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(2022/6/7)

細胞にかかるストレスが、がんを発生させるしくみ
~ DNAの異常な修復を誘導する、タンパク質とRNAの「かたまり」 ~

東京大学大学院医学系研究科の安原崇哲助教、マサチューセッツ総合病院のLee Zou教授らの国際共同研究グループは、細胞に紫外線や低温刺激などのストレスを与えると、細胞の核の中にある核小体とよばれる部分にタンパク質とRNAからなる凝集体(かたまり)が形成されることを明らかにしました。この「かたまり」は我々のDNAの中で特に活発に読み出されている、タンパク質の設計図部分を巻き込んで核小体周辺に集合させ、複数の設計図部分が空間的に近づいてしまうことがわかりました。DNAに損傷を与えた状態で「かたまり」を誘導するストレス与えると、複数のDNA損傷部位が互いに近づき、間違えた末端同士をつないでしまうことで2つの遺伝子が融合した設計図ができてしまいました。このような異常な設計図からできた融合タンパク質の一部は、がんを発生・進展させることが知られており、今回発見した現象は細胞にかかるストレスが、がんを発生させるメカニズムの一つであると考えられました。今回、種々のストレスが我々のDNAに異常を発生させるしくみが明らかになったことで、がん以外の様々な病気の原因の解明にもつながると考えられます。

本研究成果は、米国科学雑誌「Molecular Cell」のオンライン版に掲載されました。

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(2022/6/7)

東京大学大学院医学系研究科・15社共同社会連携講座「デジタルメンタルヘルス講座」設置のお知らせ

東京大学大学院医学系研究科と以下の15社※は、共同で社会連携講座「デジタルメンタルヘルス講座」(英文名Department of Digital Mental Health)を設置しました。設置期間は2022年6月1日~2025年5月31日(3年間)です。

本講座は東京大学大学院医学系研究科に設置され、川上憲人特任教授、今村幸太郎特任准教授を含む3名体制で実施されます。インターネットなどのデジタル技術を応用して精神健康を測定し、その保持・増進を支援する介入プログラムを提供する「デジタルメンタルヘルス」技術とこれを用いたサービスについて基礎および応用研究を実施し、人々の精神健康の向上に役立つ研究成果を発信することを通じて社会に貢献します。また研究成果をもとに、医学教育にも貢献します。

本社会連携講座では特に職場のメンタルヘルス対策や健康経営における心の健康づくりにデジタル技術を応用するための研究を行います。労働者の心の健康に関してデジタルメンタルヘルスを専門に研究する大学内の研究室の設置は世界ではじめてです。

※参加企業15社(五十音順)
ウェルリンク株式会社
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
株式会社クオレ・シー・キューブ
株式会社ジャパンイーエーピーシステムズ
株式会社セーフティネット
株式会社セラク
株式会社東京産業心理オフィス
株式会社フィスメック
品川駅前メンタルクリニック
タック株式会社
ティーペック株式会社
日本生命保険相互会社
ピースマインド株式会社
ヒューマン・フロンティア株式会社
富士通Japan株式会社

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(2022/6/1)

食品摂取量推定のための食品画像データベースの構築

東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の篠崎奈々客員研究員、村上健太郎助教、佐々木敏教授らの研究グループは、日本人成人644人の詳細な食事記録データをもとに、日本人が日常的によく食べる食品の種類と量を示した画像データベースを構築しました。

諸外国では食品摂取量の推定に食品の画像が広く使われていますが、日本では食事摂取データに基づいて作られた網羅的な食品画像データベースが存在しませんでした。この研究では、5,512日分の食事記録データに基づいて、日本人がよく食べる209品目の食品と料理について、1回の食事における摂取量や、食品の種類のバリエーションを幅広く示した食品画像データベースを構築しました。これは日本人の食事摂取状況に基づいて構築された日本で初めての網羅的な食品画像データベースであり、今後様々な食事調査法と組み合わせて、食品の摂取量の推定に寄与することが期待されます。

本研究成果は、2022年5月26日(日本時間)に専門誌「Nutrients」のオンライン版に掲載されました。

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(2022/5/30)

コロナ禍による臨時休校中の小中学生の睡眠と食事の時刻パターンの分析:
起床と朝食の時刻が遅かった小中学生は、より不健康な生活習慣を持っていた傾向が明らかに

学校は、学齢期の子どもたちの生活に大きく関わっています。COVID-19の流行によって、長期に臨時休校が実施された期間中、学齢期の子どもたちは、学校に通っていた時とは異なり、不規則な生活習慣を持っていた可能性があります。そこで、東京大学未来ビジョン研究センターの杉本南特任研究員(研究当時)、東京大学大学院医学系研究科の村上健太郎助教、佐々木敏教授は、臨時休校から学校が再開された直後(2020年6月)に、小中学生6220人に対して、横断調査を実施しました。調査では、臨時休校中の睡眠や食事、運動などの生活習慣が尋ねられました。

調査で得られた臨時休校中の起床・就寝・食事の時刻を分析したところ、特に、起床と朝食の時刻が異なる4つのパターンが見出されました。中でも、起床と朝食の時刻が遅いパターンの子どもたちは、起床と朝食の時刻が早い(つまり、平時と同様の時刻と思われる)パターンの子どもたちに比べて、運動量が少ない、ゲームやテレビ、パソコンなどの画面を見ている時間が長い、朝食や昼食の欠食が多い、菓子類や清涼飲料類の摂取量が多い、といった不健康な生活習慣を持つリスクが高いことが示されました。

将来、感染症や災害等が原因で長期に学校が休校になった際にも、平時と同様の時刻に睡眠と食事を取る習慣を保つことが重要である可能性が示唆されました。

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(2022/5/18)

SGLT2阻害薬の循環器疾患への作用が“クラスエフェクト”であることを示唆
~ 国内疫学ビッグデータからの知見 ~

SGLT2阻害薬は、腎臓にある近位尿細管での糖の再吸収を阻害することで血糖値を下げる糖尿病治療薬として開発されました。そして、近年の大規模臨床試験において、SGLT2阻害薬は、糖尿病の有無に関わらず、心不全や慢性腎臓病に対して保護的に作用することが示されたことから、糖尿病のみならず心不全などの循環器疾患や慢性腎臓病などの多くの生活習慣病治療に用いられるようになっています。その一方で、現在、国内では6種類のSGLT2阻害薬が保険適用されていますが、SGLT2阻害薬の効果に薬剤間で差があるのか、あるいはその効果はSGLT2阻害薬として共通(クラスエフェクト)なのかについては臨床におけるエビデンスが乏しい状況でした。

この度、東京大学の小室一成教授、金子英弘特任講師、康永秀生教授、岡田啓特任助教、鈴木裕太研究員、佐賀大学の野出孝一教授らの研究グループは、国内の大規模なレセプトデータベースを用いて、約25,000症例の新規にSGLT2阻害薬が処方された糖尿病症例を解析し、SGLT2阻害薬の6種類の薬剤間で、心不全や心筋梗塞、脳卒中などの循環器疾患の発症率が同等であることを示しました。これは、SGLT2阻害薬の循環器疾患への作用がクラスエフェクトであることを示唆するものです。本研究成果は、今後の生活習慣病や循環器疾患の診療におけるSGLT2阻害薬の使用にあたり、重要なリアルワールドエビデンスになることが期待されます。

本研究は、日本時間5月18日に医学雑誌「Cardiovascular Diabetology」に掲載されました。

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(2022/5/18)

慢性腰痛に対するモバイルアプリを用いた新たな患者教育と運動療法の効果

慢性腰痛(CLBP:chronic low back pain)は、世界的にみて最も生活に支障をきたす年数が長く、働く人のパフォーマンス低下にも影響する症状であり、その対策は社会課題の一つとなっています。慢性腰痛に対する最も有用な対策は患者教育と運動療法です。しかし、その方法はいまだ確立しておらず、かつ運動は継続しないことが難点とされています。

東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座の松平 浩特任教授(責任研究者)は、塩野義製薬株式会社(実施責任組織)と、働く世代の患者さんに対して、SNSを活用した会話ログと運動を人工知能(AI)により紐づけて継続的にリモートで提供し、その有用性を検討しました(試験ID:UMIN000041037)。その結果、痛みを緩和するための薬物治療を含む通常診療を受診した患者群と比較して、通常診療に加え患者教育と運動療法をセットにしたプログラムをモバイルアプリで実施した患者群の方において、慢性腰痛が改善していることがわかりました。このことから、スマートフォンとともに普及したモバイルアプリという手段を臨床で活用することが、患者さんのライフスタイルに合わせて短時間かつ簡便に運動を習慣化することにつながる有効な手段のひとつであることが明らかになりました。

慢性腰痛に対する運動療法はエビデンスのある治療法として広く普及していますが、薬の処方とは異なりオンライン診療では運動療法を継続、遵守することが困難なことなど導入に障壁があります。今回の研究結果は、慢性腰痛に関連する分野でのオンライン診療への発展も期待されます。

本研究成果は、日本時間5月16日に医学雑誌「JMIR mHealth and uHealth」オンライン版に掲載されました。

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(2022/5/17)

食に関する価値観、知識、技術と性別・年齢との関連:
一般日本人成人を対象とした質問票調査

東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎助教、佐々木敏教授らの研究グループは、日本人成人2231人を対象に詳細な質問票調査を実施し、食品選択における価値基準、栄養知識、料理技術、食全般に関わる技能には、男女間、世代間で大きな差があることを明らかにしました。

この研究では、有用性が確立している質問票を用いて、食品選択における価値基準(入手しやすさ、便利さ、健康、伝統、感覚的魅力、オーガニック、快適さ、安全性)、栄養に関する知識、料理技術、食全般に関わる技能を調べました。主な結果として、女性は男性よりも、食品選択におけるすべての価値基準に重きを置いているだけでなく、栄養に関する知識、料理技術、食全般に関わる技能のすべてが高いことがわかりました。また、高齢の参加者(60~80歳)は、食品選択に際して「長期志向型」の価値基準(オーガニック、安全性)を重視する一方で、若年(19~39歳)および中年(40~59歳)の参加者は「短期志向型」の価値基準(入手しやすさ、便利さ、感覚的魅力、快適さ)を重視していました。さらに、男性では年齢が高いほど料理技術と食全般に関わる技能が低い一方で、女性では年齢が高いほど料理技術と食全般に関わる技能が高いという、男女でまったく逆の関連が見られました。

日本人を対象に、食に関する価値観、知識、技術を包括的に測定した研究は初めてであり、健康的な食事を目指した効果的な政策、教育・介入プログラムやキャンペーンの科学的な基盤となると考えられます。

本研究成果は、2022年4月30日(日本時間)に専門誌「Nutrients」のオンライン版に掲載されました。

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(2022/5/11)

乾癬を緩和する生理活性脂質を生成する酵素の発見

東京大学大学院医学系研究科の村上誠教授らの研究グループは、東京都医学総合研究所の平林哲也研究員らとの共同研究により、マウス乾癬モデルの皮膚において、抗炎症作用を持つ脂質メディエーターであるN-アシルエタノールアミン(NAE)の産生が増加すること、リン脂質代謝酵素の一つである細胞質型ホスホリパーゼA2ε(cPLA2ε)が発現誘導されNAEの産生調節に関わること、NAEにはヒト皮膚角化細胞において炎症物質であるS100A9の発現を抑制し乾癬炎症を緩和させる作用があることを発見しました。本研究結果は、これまで不明だった生体内でのNAEの産生経路とその乾癬病態における役割を初めて示したものです。皮膚におけるcPLA2εの発現誘導はマウス乾癬モデルだけでなくヒト乾癬患者でも認められることから、cPLA2εやNAEを標的とした創薬は、乾癬の新たな治療に役立つ可能性が期待できます。

本研究成果は、2022年4月28日(米国東部標準時)に掲載されました。

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(2022/5/10)

ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)で高齢男性の運動機能が改善
~ 超高齢化社会の課題“サルコペニア”の予防効果に期待 ~

東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科の五十嵐正樹助教、中川佳子医師、三浦雅臣医師、山内敏正教授の研究グループは、健常な高齢男性を被験者として、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を経口摂取した場合に、筋力低下を始めとした老化現象に与える影響についての無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を行いました。健常な高齢男性に1日あたり250 mgのNMNを12週間経口摂取すると、NAD+および関連代謝物の血中濃度が上昇し、歩行速度、握力などの運動機能が改善することを明らかにしました。さらに、NMNの経口摂取により、聴力の改善傾向がみられることも分かりました。日本が直面している超高齢化社会ではサルコペニアの予防が大きな課題とされています。今回の研究結果から、NMNの経口摂取によるサルコペニアの予防効果が期待され、今後、健康寿命の延伸へ寄与するものと考えられます。

本研究成果は、日本時間5月1日に英国科学誌「NPJ Aging」のオンライン版に掲載されました。本研究は、三菱商事ライフサイエンス株式会社の受託研究として実施されました。

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(2022/5/6)

我が国における子供の数と学歴・収入の関係
~ 全国調査から明らかになる少子化の実態 ~

日本における少子化が課題となっている。しかしながら、その背景要因については不明瞭な部分が多く、特に経済的状況や学歴がどのように関係しているかについては明らかになっていない。東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室は、1943年から1975年の間に生まれた人を対象に、夫婦が持つ子供の数がどのように変化しているか、また子供の数は収入や学歴によってどのように変わるのかを調べるために、国立社会保障・人口問題研究所が実施する出生動向基本調査を用いて分析を行なった。その結果、1943年-1948年の間と、1971-1975年の間に生まれた人を比較すると、子供を持たない人の割合は、男性では14.3%から39.9%、女性では11.6%から27.6%にまで増えていることが明らかになった。男性を大卒以上とそれ以下で比較した場合、大卒以上で、また収入が高い人ほど子供を持っている割合が大きいことがわかった。また、1943年-1948年生まれと1971-1974年生まれの男性を比較すると、収入が高い男性よりも収入が低い男性の方が、子供を持たない割合の増加度合いは大きかった。女性では、1956年から1970年の間に生まれた人では大卒以上の方が子供を持つ割合が少なかったが、1971-1975年の間に生まれた人では大卒以上とそれ以下では子供を持つ割合に有意差はなかった。分析結果は2022年4月27日に専門誌「Plos One」に掲載された。

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(2022/4/28)

高齢日本の20年後:認知症患者は減るが、格差拡大・フレイル合併で介護費増

東京大学大学院医学系研究科の笠島めぐみ特任研究員と橋本英樹教授が、同大学生産技術研究所、高齢社会総合研究機構、未来ビジョン研究センター及びスタンフォード大学との共同研究の結果、60歳以上の認知症とフレイル(虚弱)の有病率と医療介護費について2043年までの将来推計を明らかにしました。

戦後世代の高齢者の健康状態や学歴が全般的に向上していることや、年齢・性・学歴により疾病罹患状況の個人差を広がっていることを考慮し、大容量計算環境を用いた個人予測モデルを新規開発しました。

その結果、2016年では認知症患者数は510万人のところ、2043年では465万人に減ると推計されました。しかし、大卒以下の層や75歳以上女性では増加し認知症の社会格差が広がること、格差の影響を受ける層ではフレイルを合併する割合が高く濃密な介護ケアが必要になるため、介護費総額は増加することが示唆されました。

認知症の予防・治療技術の開発に加え、格差対策の必要性について科学的根拠を示すことで、高齢社会の維持可能性を高める政策立案に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2022年4月26日(英国夏時間)に英国科学誌「the Lancet Pubic Health」のオンライン版に掲載されました。

本研究は、科研費「基盤研究A;高齢社会の社会保障と税の将来インパクト推計;ミクロシミュレーションによる検討(課題番号:18H04070)(研究代表者 橋本英樹)」、National Institute of Ageing「Subaward No: 127056276 for “Integrating Information about Aging Surveys”(3R01AG030153-14S3)(Primary Investigator: Jinkook Lee, University of Southern California)」、そして日立―東大ラボ 元気高齢社会/エイジフレンドリー社会実装モデルプロジェクト(リーダー:飯島勝矢)の支援により実施されました。

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(2022/4/27)

コロナ禍の他疾患の診療に対する影響の評価

コロナ禍の医療に対する影響は全世界で甚大であり、我が国の他疾患の診療においても大きな影響があったことが報告されていますが、その全体像は明らかになっていませんでした。

今回、東京大学の山口聡子特任准教授、岡田啓特任助教、山内敏正教授、南学正臣教授、門脇孝名誉教授(虎の門病院院長)らの研究グループは、国内の26施設のデータを含む2017年1月から2020年11月までの診療データベースを用いて、コロナ禍の他疾患の診療に対する影響を俯瞰的に評価しました。2020年5月に入院、外来ともに件数が最も減少しており、小児科で特に著減していました。疾患別に見ると、呼吸器疾患の入院が最も減少していましたが、循環器疾患や消化器疾患でも減少が見られました。内視鏡検査やリハビリの件数も減少が目立った一方で、化学療法や透析療法はほとんど変化がみられなかったことがわかりました。

本研究ではコロナ禍によって他疾患の診療も広い範囲にわたり影響を受けたことがわかりました。今後これらの影響をさらに詳細に調査することで、他疾患の診断や治療の遅れを防ぐことにつながると考えられます。

本研究は、日本時間2022年4月25日に英国科学誌 BMJ Open オンライン版に掲載されました。なお本研究は、令和2年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業「新型コロナウイルス感染症に対応した新しい生活様式による生活習慣の変化およびその健康影響の解明に向けた研究―生活習慣病の発症および重症化予防の観点から―」(JPMH20CA2046)の助成を受け、門田守人日本医学会連合会長のプロジェクトによって実施されたものです。

東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・生活習慣病予防講座は、朝日生命保険相互会社との社会連携講座です。

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(2022/4/25)

健診での糖尿病指摘後に医療機関受診をしない集団を機械学習により予測

国内に約1000万人の患者が存在すると考えられている糖尿病は、未治療のまま放置すると心筋梗塞、脳卒中や慢性腎不全などの合併症のリスクが高まりますが、適切な治療の継続によりそれらの発症が抑えられることが知られています。しかしながら、特定健診などの生活習慣病の健診で糖尿病を指摘され医療機関の受診を勧奨されても、半数以上の患者が受診しないことが分かっており、受診率の向上が求められていました。

この度、東京大学の岡田啓特任助教、山口聡子特任准教授、山内敏正教授、南学正臣教授、康永秀生教授、門脇孝名誉教授(虎の門病院院長)らの研究グループは、機械学習を用いて、健診で糖尿病を指摘された後、未受診となる集団を予測するモデルの構築を試みました。診療報酬請求明細書・健診のデータを含む大規模疫学データベースを用いて、従来の13個の因子で予測するモデルと比較して予測能が高いモデルを、機械学習を用いることにより、4つの因子のみで構築できることを明らかにしました。本研究の成果は、糖尿病の合併症の予防を目的とした政策立案に大きく貢献するエビデンスとなることが期待されます。

本研究は、日本時間2022年4月18日に米国科学誌 Diabetes Care オンライン版 Published Ahead of Print に掲載されました。なお本研究は、厚生労働省および文部科学省科学研究費補助金(厚生労働行政推進調査事業費補助金・政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)「診療現場の実態に即した医療ビッグデータを利活用できる人材育成促進に資するための研究」(課題番号 21AA2007 研究代表  康永秀生)、文部科学省科学研究費補助金「糖尿病受診中断の予測因子探索と政策提言」(課題番号 20K18957 研究代表  岡田啓)の支援により行われました。

東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・生活習慣病予防講座は、朝日生命保険相互会社との社会連携講座です。

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(2022/4/20)

新しいタイプの筋ジストロフィー治療薬の開発
~ 発症原因を解消するプロドラッグを創出し、疾患モデルマウスの治療に成功 ~

この度、愛媛大学大学院医学系研究科の金川基教授、東京大学大学院医学系研究科の戸田達史教授、神戸大学大学院医学研究科の徳岡秀紀医師らの研究グループは、糖鎖異常型とよばれる筋ジストロフィーモデルマウスの治療に成功しました。

糖鎖とは核酸・タンパク質に次ぐ第三の生命鎖とよばれ、タンパク質や脂質に結合した形で機能を発揮する生体にとって重要な物質です。その重要さゆえに糖鎖の異常は時に疾患の原因になることもあります。筋ジストロフィーは筋力が進行性に低下していく遺伝性疾患で、有効な治療法が未だに確立されていない難病です。筋ジストロフィーの中には、糖鎖の異常によって発症する病型もあり、本邦の小児期筋ジストロフィーで二番目に多くみられる福山型筋ジストロフィーなどが挙げられます。糖鎖異常が生じる原因は様々ですが、糖鎖の材料となる物質の異常も筋ジストロフィーの原因となることが知られています。

本研究では、糖鎖の生合成に必要な物質のひとつCDP-リビトールの合成酵素ISPD(イソプレノイドドメイン含有タンパク質)の異常によって発症する筋ジストロフィーのモデルとして、ISPDが欠損したマウスを作出し、CDP-リビトールの合成不全と糖鎖異常が発症の原因になることを明らかにしました。次いで、モデルマウスに対するISPD遺伝子治療によって病気の進行を抑制できることを発見しました。更に、細胞内への送達効率を高めたCDP-リビトールを創出し、モデルマウスのプロドラッグ治療に世界で初めて成功しました。糖鎖の生合成経路を治療標的とする薬剤の開発研究例は極めて少なく、今回の発見は糖鎖異常を発症要因とする疾患の治療法開発にむけて画期的な成果となり、筋ジストロフィーや先天性糖鎖不全症などの希少難治性疾患の治療法開発にむけて大きな貢献が期待できます。

この研究成果に関する論文は、日本時間令和4年4月14日付でNature Communications誌に掲載されました。

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(2022/4/15)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染モデルにおける脳の変化
~ COVID-19による病態解明や治療法開発の加速に期待 ~

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症によって引き起こされる症状は嗅覚障害や呼吸困難が有名ですが、認知機能の低下(Becker JH et al., 2021 JAMA)、強い倦怠感の持続や頭がボーっとする、といった”Brain fog”(Garner Paul, 2020, BMJ)などの中枢神経症状も報告されています。最新のヒト脳MRI研究からSARS-CoV-2感染後の脳構造が変化する(Douaud Gweaelle et al., 2022. Nature)ことも知られています。一方、SARS-CoV-2感染に伴い細胞レベルで脳にどのような変化が生じているかは不明でした。今回、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学、東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の山岨達也教授らおよび杏林大学保健学部臨床検査技術学科の石井さなえ准教授らの研究グループは、テキサス大学医学部ガルベストン校の研究グループとの共同研究によって、SARS-CoV-2感染後のシリアンゴールデンハムスターの嗅上皮と脳の組織を解析し、嗅上皮での嗅神経細胞と炎症細胞、脳での炎症細胞やシナプスの形態変化を明らかにしました。本研究の成果は、SARS-CoV-2感染による嗅覚障害だけでなく中枢神経症状の病態解明や治療シーズ開発を加速させると期待されます。

なお、本研究成果は2022年4月6日に、英国科学誌「Scientific Reports」オンライン版にて発表されました。

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(2022/4/8)