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広報・プレスリリース最新情報「2023年度(令和5年度)」

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米国の2種類の医師(MDとDO)が治療した入院患者の死亡率は違うのか?

東京大学大学院医学系研究科の宮脇敦士助教、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の津川友介准教授らによる共同研究グループは、アメリカの65歳以上の高齢者を対象とした大規模な医療データを用いて、日本の医学部と同様の西洋医学のみを教える医学校(MD養成校)を卒業した医師と、オステオパシー医学を中心に教えてきた医学校(DO養成校)を卒業した医師が治療した入院患者のアウトカムは同等であることを明らかにしました。入院後30日での死亡率は、MD医師で9.4%、DO医師で9.5%とほとんど変わりませんでした。再入院率・入院日数・医療費・入院中の専門医へのコンサルテーションの回数やICUの利用率や退院先(自宅や介護施設など)、画像検査や臨床検査の利用も同等でした。

多数派のMD医師も少数派のDO医師も現在では制度上、施行できる手術や処方などの医療行為に違いはありません。しかし、MD医師のトレーニングとDO医師のトレーニングは多くは別々に行われています。近年DO養成校は劇的に増加しており、現在医学生の4人に1人はDO養成校に通っています。しかし、MD医師とDO医師の診療やそのアウトカムがどのように異なるのか、ほとんどわかっていませんでした。

本研究の結果は、MD養成校とDO養成校の間で、現在では、入院患者のアウトカムに影響を与えるような、教育内容の違いはみられないことを示しています。これはDO医師のアメリカの医療システムにおける役割がますます重要となっていることを考えると、安心できる結果です。また、MD養成校とDO養成校は、その成り立ちから過去には教育内容は大きく異なっていたことを考えると、医学教育・トレーニングにおいて、患者にとって重要な教育内容を標準化することが可能であることを例証していると考えられ、その点で日本にも示唆を与えてくれると考えています。

本研究成果は、2023年5月29日(米国東部夏時間)に米国内科学会(American College of Physicians)の「Annals of Internal Medicine」にオンライン掲載されました。

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(2023/5/30)

腸内微生物叢シークエンシングデータ中に存在するヒトゲノム由来配列からの個人情報の再構築

大阪大学大学院医学系研究科の大学院生の友藤嘉彦さん(遺伝統計学)、岡田随象 教授(遺伝統計学/東京大学大学院医学系研究科 遺伝情報学分野 教授/理化学研究所生命医科学研究センター システム遺伝学チーム チームリーダー)らの研究グループは、腸内微生物叢シークエンシングデータ中に含まれるごくわずかなヒトゲノム由来配列情報に対して、新規開発手法を適用することで、性別および属する人種集団を高精度に推定できることを示しました。

また、腸内微生物叢シークエンシングデータ中のヒトゲノム由来配列を利用し、同一個人に由来する遺伝子多型データと腸内微生物叢シークエンシングデータの対応関係を高精度に推定できることを示しました。さらに、高深度に腸内微生物叢シークエンシングを行った場合、データ中に存在するヒトゲノム由来配列を用いることで、便検体から個人の遺伝子多型情報を再構築できることを示しました。

細菌やウイルスなど、数多くの微生物によって構成される腸内微生物叢は、宿主の健康状態に影響を与えることが知られています。近年の次世代シークエンシング技術の向上もあり、現在、多くの研究者達が便検体からの腸内微生物叢シークエンシング解析に取り組んでいます。腸内微生物叢シークエンシングを行うと、細菌やウイルスに由来する配列だけではなく、ごくわずかにヒトゲノム由来配列が得られることが知られていました。一般的に、遺伝子多型情報に代表されるヒトゲノム情報については、個人情報保護の観点から、慎重な取り扱いが必要とされます。しかし、腸内微生物叢シークエンシングデータ中のヒトゲノム由来配列については、その量があまりにも少なく、どれほどの個人情報が取得可能なのかが不明だったため、取り扱いについて明確な指針がないのが現状です。また、腸内微生物叢シークエンシングデータ中のヒトゲノム由来配列を有効活用できる可能性についても検討されていませんでした。

本研究成果によって、便検体及び腸内微生物叢シークエンシングデータ中に含まれるヒトゲノム由来配列を用いて、個人情報の再構築を行うことが出来ました。本研究成果は、データ共有時のプライバシーの保護や、ポリジェニック・リスク・スコアの構築などのデータの有効活用について議論する上で重要なリソースになることが期待され、健全かつ持続的な医学・生命科学研究の発展に資すると期待されます。本研究成果は、2023年5月16日(火)午前0時(日本時間)に英国科学誌「Nature Microbiology」(オンライン)に掲載されました。

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(2023/5/19)

子宮内膜のエピゲノム異常が着床不全を起こす
~ ヒストンメチル化による着床制御機構の解明 ~

東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科の藍川志津特任研究員、東京大学大学院医学系研究科 産婦人科学講座の福井大和大学院生(医学博士課程:研究当時)、廣田泰准教授、大須賀穣教授らは、ヒト着床期子宮内膜や遺伝子改変マウスを用いた研究から、抑制的ヒストン修飾を介したエピゲノムの調節によって、子宮内膜に適切な細胞分化と正常な胚浸潤が起こることを世界で初めて明らかにしました。

不妊症は、全世界のカップルの15%が直面する健康問題です。生殖医療において体外受精・胚移植の技術進歩は目覚ましく、日本では全出生児の14人に1人が体外受精・胚移植によって誕生しています。その一方で、良好胚を選別し移植しているにも関わらず着床が成立しない着床不全が生殖医療最大の課題となっているものの、診断・治療法が確立していないのが現状です。本研究により難治性不妊症である着床不全の起こる仕組みが明らかになり、着床不全の新たな診断法開発に向けた臨床研究への展開が期待されています。

※詳細は東大病院HP掲載の リリース文書[PDF]をご覧ください。

(2023/5/18)

遺伝子治療の潜在的なリスクを減らす方法を開発
~ 革新的な治療の臨床応用に向けた礎として ~

東京大学大学院医学系研究科の加藤基大学院生(研究当時)、岡崎睦教授、東京大学医学部の栗田昌和講師と東京大学大学院工学系研究科の石川昇平助教、酒井崇匡教授らによる研究グループは、皮膚潰瘍表面をターゲットとしたアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)による遺伝子導入の効果を局在化させる方法を開発しました。

本研究グループが開発した医療用ゲル(テトラPEGシステム)、なかでも動的な共有結合をもつように設計されたPEGスライムをキャリアとして緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するAAVをマウスの皮膚潰瘍面に投与すると、キャリアを用いずに投与した場合と比較して、潰瘍表面付近の細胞におけるGFP発現頻度を低下させることなく、より深い部位や代表的な遠隔臓器である肝臓におけるGFP発現を減らすことができました。

高い自由度で溶解特性を調整することが可能なPEG高分子をドラッグデリバリーに用いることによって、局所的な病態を対象とした遺伝子治療に伴う潜在的な合併症発生のリスクを減らしうることが示唆されました。本研究グループが開発を進める生体内リプログラミングによる皮膚潰瘍治療、組織胎児化による複合的組織再生法など、強力な治療法の研究開発に応用されることが期待されます。

本研究成果は、5月16日(英国夏時間)に「Communications Biology」で公開されました。

※詳細は東大病院HP掲載の リリース文書[PDF]をご覧ください。

(2023/5/17)

新規ミトコンドリア分裂因子を発見
~ マイトファジーの過程におけるミトコンドリア分裂のメカニズムを解明 ~

ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)は、オートファジーがミトコンドリアを選択的に分解する現象であり、ミトコンドリアの品質管理に重要な役割を果たします。マイトファジーの過程で、ミトコンドリアはオートファゴソームと呼ばれる球状の脂質膜に包まれます。この際に、大きなミトコンドリアが小さなオートファゴソームに包み込まれるメカニズムは、長らく不明でした。

新潟大学大学院医歯学総合研究科の福田智行准教授、古川健太郎医学部准教授、神吉智丈教授、微生物化学研究所の丸山達朗上級研究員、北海道大学遺伝子病制御研究所の野田展生教授らの研究グループは、新規のミトコンドリア分裂因子であるMitofissin(Mitochondrial fission protein、マイトフィッシン)を発見し、この因子がマイトファジーの際にミトコンドリアをオートファゴソームに収まる大きさに分裂させることを明らかにしました。また、Mitofissinは、ミトコンドリア膜に直接作用して膜を切断することができるため、分裂の機序に関するこれまでの概念を覆す新たなメカニズムで作用することも明らかにしました。本研究は、マイトファジーの分子機構について未解決であった問題を解明しただけではなく、オルガネラ(細胞小器官)の形態変形に関する全く新しいメカニズムの存在を明らかにした点でも、重要な成果です。

本研究は、生命創成探究センター/生理学研究所の村田和義特任教授、理化学研究所生命機能科学研究センターの岡田康志チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科教授)、新潟大学の芝田晋介教授、米国ミシガン大学Daniel J. Klionsky教授らとの共同研究で行われました。

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(2023/5/16)

日本人成人における超加工食品の摂取量と食事の質との関連

東京大学大学院医学系研究科栄養疫学・行動栄養学講座の篠崎奈々特任研究員、村上健太郎特任教授らの研究グループは、日本人成人388人から得られた4日間にわたる詳細な食事記録データをもとに、超加工食品の摂取量を調査し、食事の質との関連を調べました。

超加工食品は、複数の食材を工業的に配合して製造された、加工の程度が非常に高い食品であり、多く摂取することで食事の質が低下する可能性があります。しかし、日本では超加工食品に関する栄養学研究はほとんどなく、超加工食品の摂取量や食事の質との関連は十分に明らかになっていません。そこで食事記録データから超加工食品の摂取量を推定したところ、超加工食品からのエネルギー(カロリー)摂取量は1日の総エネルギー摂取量の3~5割程度を占めていました。また、超加工食品からのエネルギー摂取量が多い人ほど、食事の質が低いことがわかりました。本研究は、日本において全国規模の食事調査のデータを用いて、超加工食品の摂取量および食事の質との関連性を評価した初めての研究であり、公衆栄養政策を決定する上での重要な資料になると考えられます。

本研究成果は、2023年4月24日(英国夏時間)に専門誌「Public Health Nutrition」のオンライン版に掲載されました。

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(2023/5/11)

食の栄養学的質と食に関する価値観・知識・技術・行動との関連
~ 一般日本人成人を対象とした質問票調査 ~

東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎助教、篠崎奈々客員研究員、佐々木敏教授らの研究グループ(所属と職位は研究当時)は、日本人成人2231人を対象に詳細な質問票調査を実施し、食の栄養学的質と食に関する価値観・知識・技術・行動との関連を調べました。

この研究では、妥当性が確立している質問票を用いて、食の栄養学的質、食に関する価値観(便利さ重視、健康重視、有機食品重視など)、栄養に関する知識、料理技術、食全般に関わる技能、食行動(食を楽しむ傾向、食に関する好き嫌いが激しい傾向など)を調べました。その結果、男性では、食の栄養学的質が高い人ほど、有機食品を重視し、食に関する好き嫌いが少ない傾向にありました。女性では、食の栄養学的質が高い人ほど、健康を重視し、栄養に関する知識が豊富で、料理技術が高く、食に関する好き嫌いが少ない傾向にありました。

このようなテーマの研究は、欧米を中心に世界各地で行なわれてきましたが、食の評価が野菜や果物の摂取量のみであったり、栄養に関する知識のみを検討していたりなど、いずれも限定的な検討にとどまっており、その全貌は明らかになっていませんでした。本研究は、食の栄養学的質と食に関する価値観・知識・技術・行動との関連を包括的に評価した世界で初めての研究です。本研究の成果は、健康的な食事を目指した効果的な政策、教育・介入プログラムの科学的な基盤となると考えられます。

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(2023/4/26)

COVID-19重症化における自然免疫細胞の関わりを明らかに
~ シングルセル情報とゲノム情報の統合解析 ~

大阪大学大学院医学系研究科の枝廣龍哉 さん(博士課程)(遺伝統計学/呼吸器・免疫内科学)、白井雄也さん(博士課程)(遺伝統計学/呼吸器・免疫内科学)、熊ノ郷淳 教授(呼吸器・免疫内科学)、岡田随象 教授(遺伝統計学/東京大学医学系研究科 遺伝情報学/理化学研究所生命医科学研究センター システム遺伝学チーム チームリーダー)らの研究グループは、PBMCのシングルセル情報と宿主ゲノム情報との統合解析を実施することにより、COVID-19重症化における自然免疫細胞の役割を明らかにしました。

COVID-19重症化には血液免疫細胞の応答異常が関与していることが報告されていますが、SARS-CoV-2感染に対する宿主の免疫応答は未だ不明な点が多くあります。また、大規模GWASによりCOVID-19重症化における宿主の遺伝的なリスクの寄与が明らかになっていますが、その病態機序は十分に解明されていませんでした。

今回、研究グループは、大阪大学が収集した日本人集団のCOVID-19患者73名と健常者75名のPBMCのシングルセル解析を実施するとともに、宿主ゲノム情報との統合解析を行いました。その結果、単球の中の希少細胞種であるCD14⁺CD16⁺⁺単球がCOVID-19患者で顕著に減少しており、その一因がCD14⁺CD16⁺⁺単球への細胞分化不全であることが分かりました。また、遺伝子発現変動解析と細胞間相互作用解析により、CD14⁺CD16⁺⁺単球の機能不全が重症化に関与していることも分かりました。さらに、GWASで同定されたCOVID-19重症化関連遺伝子は、単球および樹状細胞で特異的に発現していること、COVID-19に関連する遺伝子多型がSARS-CoV-2感染状況下かつ細胞種特異的なeQTL(expression quantitative trait loci)効果を有することが分かりました。

本研究成果によって、COVID-19重症化に関与する細胞種を明らかにするとともに、重症化の宿主遺伝的リスクは自然免疫細胞に集約されていることを見出しました。本成果は、今後の感染症研究に資するものと期待されます。

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(2023/4/25)

重症拡張型心筋症の病態を解明し新たな治療標的を同定
~ モデルマウスおよびiPS心筋細胞を多面的に解析 ~

東京大学医学部附属病院の山田臣太郎特任研究員、候聡志特任助教、伊藤正道特任助教、野村征太郎特任准教授、小室一成教授(研究当時)、理化学研究所環境資源科学研究センターの佐藤繭子技師、豊岡公徳上級技師、東京医科歯科大学生体材料工学研究所の池内真志教授、神戸大学大学院医学研究科の仁田亮教授、国立成育医療研究センター研究所の高田修治部長、梅澤明弘所長、東京大学先端科学技術研究センターの油谷浩幸シニアリサーチフェロー(特任研究員)らの研究グループは、重症拡張型心筋症の患者家系の遺伝子解析によって同定した遺伝子変異(LMNA Q353R)を再現した疾患モデルマウスおよび疾患特異的iPS心筋細胞を樹立し、高圧凍結技法による電子顕微鏡撮影、シングルセルRNA-seq・ATAC-seq、プロテインアレイ解析といったさまざまな解析技術を用いて調べました。

社会の高齢化が進む中、日本のみならず先進国では軒並み慢性心不全の患者数が増加し続けており、その治療成績は悪性腫瘍と同等ないしはそれ以上に悪いことが知られています。拡張型心筋症は慢性心不全を引き起こす原因疾患の一つであり、核ラミナの主要構成要素の一つであるラミンA遺伝子(LMNA)に生じる遺伝子変異は特に重症な拡張型心筋症を引き起こすことが知られていますが、そのメカニズムはまだ十分解明されていません。この度、本研究グループは、変異型ラミン分子によって心筋細胞の成熟化に必要な転写因子TEAD1の働きが損なわれることを明らかにしました。本研究結果は日本時間4月15日に米国科学雑誌「Science Advances」にて発表されました。

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(2023/4/19)

コロナワクチンや化粧品にも使用されるポリエチレングリコールの体内動態解明に貢献
~ 将来の医療や製品開発に革新的なインパクトをもたらす可能性 ~

東京大学大学院工学系研究科の石川昇平助教、酒井崇匡教授と、東京大学大学院医学系研究科の加藤基大学院生(当時)、東京大学医学部/医学部附属病院の栗田昌和講師らによる研究グループは、皮下に注入されたポリエチレングリコールの体内動態を明らかにしました。ポリエチレングリコール(PEG)は、ドラッグデリバリー、組織工学、診断など多様な生物医学的用途に広く利用されている高分子であり、本研究グループが開発した医療用ゲル(テトラペグゲル)の原料でもあります。本研究では、PEGのマウス皮下からの拡散、体内分布、および代謝挙動を明らかにしました。これまでに、多くの研究者がPEGを医療用途に活用しているにもかかわらず、皮下組織など局所注射時の代謝挙動はこれまで明らかにされていませんでした。

研究グループは、本研究により、PEGの分子量が生体内挙動に大きく影響することを明らかとしました。具体的には、分子量10,000以下のPEGは皮下組織で徐々に拡散し、脂肪組織へ移行し、その後主に腎臓に分布する一方、分子量20,000以上のPEGは皮下組織に滞留し、主に心臓、肺、肝臓に分布することが示されました。本研究は、広く使用されているPEGの生体内挙動を解明し、さまざまな材料開発の基礎的知見を提供するものです。本研究成果は、「ACS Macro Letters」のオンライン版で公開されました。

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(2023/4/19)

神経難病、多系統萎縮症に対する世界初の治療法開発
~ 医師主導第2相探索的試験により有効性を支持する成果が得られた ~

辻省次東京大学名誉教授と、東京大学大学院医学系研究科の三井純特任准教授らによる研究グループは、多系統萎縮症に対する多施設共同医師主導治験(治験調整医師 辻省次、治験責任医師 三井純)を行い、高用量のユビキノール服用によって多系統萎縮症の運動症状の進行抑制を支持する結果を世界に先駆けて見出しました。

多系統萎縮症は、自律神経症状、小脳性運動失調、パーキンソン症状など様々な神経障害をきたす神経疾患であり、厚生労働省が定める指定難病に認定されています。平均50代半ばで発症し、発症から約5年で50%の方が自立歩行困難になるなど、進行性の予後不良な神経難病です。原因は十分には解明されていませんが、研究グループは遺伝因子の研究により、コエンザイムQ10を合成する酵素の一つをコードしているCOQ2遺伝子の変異が多系統萎縮症の発症と関連することを見出し、その成果をもとに還元型コエンザイムQ10(ユビキノール)」による治療開発を行ってきました。これまでに健康成人を対象とした第1相治験を実施してユビキノールの安全性を確認し、今回、多系統萎縮症患者を対象に有効性と安全性を調べる第2相治験を実施しました。今回の治験では、ユビキノール投与群とプラセボ投与群の運動症状スケール(運動症状の程度を表す指標)の48週間の変化を主要評価項目として、ユビキノールの有効性と安全性を科学的に調べました。その結果、ユビキノールが、多系統萎縮症の運動症状の進行抑制を支持する結果を世界で初めて見出しました。

なお、本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の橋渡し研究戦略的推進プログラムおよび革新的医療シーズ実用化研究事業の支援を受け、東京大学医学部附属病院治験審査委員会の承認のもと実施されました。本治験の結果は、英国誌eClinicalMedicine誌(オンライン版:英国夏時間4月14日)に掲載されました。

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(2023/4/14)