広報・プレスリリース最新情報
頭蓋内非前庭神経鞘腫における新規融合遺伝子を同定
~ マルチオミクス解析により新たな分子サブタイプの可能性を示唆 ~
東京大学医学部附属病院脳神経外科の土屋貴裕病院診療医(大学院生)、宮脇哲准教授、齊藤延人教授、同大学大学院医学系研究科衛生学の石川俊平教授、人体病理学・病理診断学の牛久哲男教授、杏林大学医学部病理学の市村幸一特任教授らによる研究グループは、頭蓋内非前庭神経鞘腫において、これまで頭蓋内神経鞘腫では報告されていなかった融合遺伝子TANC1::HTRA1およびKPNA4::WWTR1を同定しました。
本研究では、頭蓋内非前庭神経鞘腫32例を対象に、全エクソーム解析、RNAシークエンス解析、DNAメチル化解析、単一細胞RNAシークエンス解析を組み合わせたマルチオミクス解析を実施しました。その結果、融合遺伝子陽性腫瘍では既知の主要な神経鞘腫関連遺伝子異常を認めず、新たな分子サブタイプを示す可能性が示されました。本研究成果は、頭蓋内非前庭神経鞘腫の発生機構の理解を深め、将来的な分子診断、患者層別化、治療標的探索の基盤につながることが期待されます。
※詳細は東大病院HP掲載のリリース文書[PDF]をご覧ください。
(2026/5/27)
脳の生理的な老化機構を解明
~ 超高齢化時代の予防医学の確立に向けた一歩 ~
島根大学医学部生理学講座(神経・筋肉生理学)の桑子賢一郎 准教授の研究チームは、早稲田大学の浜田道昭教授、国立遺伝学研究所の豊田敦 特任教授、理化学研究所・東京大学の岡田康志 チームディレクター・教授らとともに、脳の生理的老化機構のメカニズムを解明するためにマウスを用いた研究を行いました。
本研究では、神経細胞の核膜に存在するLINC複合体に着目し、その加齢変化と神経機能への影響を解析しました。その結果、神経細胞では、加齢に伴うLINC複合体の著しい発現低下が核の構造異常を引き起こし、遺伝子発現変化を介して、神経活動制御に重要な軸索起始部(AIS)の障害を惹起することを見いだしました。さらに、これにより神経細胞の興奮性が低下し、脳機能の変容につながることが示されました。また、遺伝子治療にも用いられるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによってLINC複合体分子Sun1を老齢マウスの神経細胞に導入することで、核構造、遺伝子発現、AIS機能、神経興奮性、および脳機能の加齢変容を抑止できることを明らかにしました。これらの結果は、LINC複合体の機能喪失が脳老化を駆動する新たな分子機構であることを示すとともに、そのはたらきを保つことが脳機能の衰退抑止に有効である可能性を示唆しています。本研究成果は、「EMBO Reports」オンライン版で2026年5月22日に公開されました。
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(2026/5/25)
思春期発達におけるウェルビーイングと精神症状のずれを解明
~ 東京ティーンコホート約3,000 人の追跡調査 ~
東京大学医学部附属病院精神神経科の宇野晃人助教、笠井清登教授(同大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長らの研究グループは、約3,000人の児童を対象とした追跡調査のデータを用いて、思春期におけるウェルビーイング(注1)と精神症状(注2)がどのように組み合わさって発達するかを分析しました。その結果、同程度の精神症状であっても、ウェルビーイングが高い群と低い群が存在することを明らかにしました。両群を比較すると、将来への希望や利他的行動、良好な対人関係はウェルビーイングの高い群と関連し、女性であることや高い世帯収入は低い群と関連していました。これまで、両者のずれは一時点のデータから示されてきましたが、本研究は大規模な縦断データ(同一の対象者を追跡調査して得られたデータ)により、その時間的な発達パターンを初めて明らかにしたものです。本成果は「精神症状があってもウェルビーイングが保たれる」要因を示し、従来の支援の枠組みを補完する新たな視点を提供するとともに、臨床から政策まで幅広い分野への応用が期待されます。
なお、本研究は英国医学雑誌「Psychological Medicine」(オンライン版:英国夏時間5月25日)に掲載されました。
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(2026/5/25)
細胞膜の急速な拡大を可能にする新たなメカニズムを解明
~ 膜タンパク質を一時的に格納する細胞膜構造が細胞運動を支える ~
細胞が移動する際には、細胞膜が数秒程度で急速に広がる「ブレブ」と呼ばれる膨らみが形成されます。この現象は、免疫細胞が体内を移動する過程や、がん細胞が組織内を浸潤・転移する際にも利用される重要な細胞運動様式です。しかし、細胞膜は通常わずか2〜3%程度しか伸びることができず、このような急激な膜の拡大がどのように実現されているのかは長年の未解決問題でした。
九州大学大学院医学研究院生化学分野の池ノ内順一教授、大学院システム生命科学府博士課程学生の前川悠輝と、東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野の水島昇教授、吉井紗織助教らの研究グループは、ブレブ形成時に細胞膜の根元で新たな膜陥入構造(Sub-bleb invagination; SBI)が形成されることを発見しました。さらに、この構造が膜の曲率に応じてCaveolin-1やPiezo1といった特定の膜タンパク質を一時的に格納する役割を持つことを明らかにしました。この仕組みにより、膜の拡張に適さない膜タンパク質が膨らんでいく膜領域から排除され、細胞膜が破綻することなく効率的に広がることが可能になります。さらに本研究では、このようなタンパク質の再配置機構が破綻すると、ブレブ形成が抑制され、細胞の移動能力が低下することも示されました。これは、膜タンパク質の空間配置が細胞運動の成立そのものに直結していることを示す重要な知見です。本研究成果は、細胞がどのようにして急速な形態変化を可能にしているのかという基本原理を明らかにするとともに、がん細胞の浸潤・転移や免疫細胞の機能など、細胞運動に依存するさまざまな生命現象の理解に新たな視点を提供するものです。将来的には、細胞運動を標的とした新たな治療戦略の開発にもつながることが期待されます。
本研究成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)に2026年5月25日(月)(日本時間)までに公開されます。
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(2026/5/20)
妊娠成立の鍵を握る子宮内環境形成の新機構を解明
~ TAZが細胞外マトリックスと血管形成を制御し、正常な胚発育を支える ~
東京大学医学部附属病院の藍川志津特任研究員(研究当時/現・筑波大学生存ダイナミクス研究センター准教授)、東京大学大学院医学系研究科の賀雪婷(医学博士課程:研究当時)、廣田泰教授らは、着床期子宮内膜における脱落膜化過程において、HippoシグナルのエフェクターであるTAZ(WWTR1)が、コラーゲンを中心とした細胞外マトリックス(Extracellular matrix:ECM)の再構築を制御し、胚の着床とその後の正常な胚発生・胎盤形成に必須の役割を果たすことを明らかにしました。シングルセルRNAシーケンスおよび空間トランスクリプトーム解析により、TAZが子宮内膜間質細胞におけるECM関連遺伝子群の発現を誘導し、脱落膜形成および血管新生を促進することを見いだしました。さらに、子宮特異的TAZ欠損マウスを用いた解析から、TAZの欠損が脱落膜化不全、胚の浸潤障害や流産・新生児致死を引き起こすことを示し、TAZが着床後初期の子宮内環境形成に不可欠であることを実証しました。
不妊症は世界の成人人口の約6人に1人が直面する重要な課題であり、日本においても生殖補助医療の需要は年々増加しています。しかし、良好な胚を移植しても妊娠に至らない着床不全は依然として大きな問題です。本研究成果は、着床期における子宮内膜環境の形成機構の一端を明らかにしたものであり、不妊症や胎盤形成異常、胎児発育不全、さらには妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症に対する新たな診断・治療法の開発につながることが期待されます。
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(2026/5/19)
アジア人集団初の重症筋無力症の大規模ゲノム解析
~ 重症筋無力症の病型ごとに異なる遺伝的背景を示す ~
大阪大学大学院医学系研究科の上田洋行さん(遺伝統計学 博士後期課程(研究当時)/内分泌・代謝内科学)、久保田智哉准教授(臨床神経生理学)、下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科学)、髙橋正紀教授(臨床神経生理学)、岡田随象教授(遺伝統計学(研究当時)、先端モダリティ・DDS研究センター 教授(研究当時)/東京大学大学院医学系研究科 遺伝情報学教授/理化学研究所生命医科学研究センター システム遺伝学チーム チームリーダー)、総合花巻病院の槍沢公明院長らの研究グループは、日本人の重症筋無力症(MG)発症群1,434例と非発症群42,913例を対象とした、アジア人集団として世界で初めての大規模ゲノムデータセットを構築し、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施しました。その結果、5番染色体のTERT遺伝子領域にMGの発症と関連する遺伝子座を新規に同定しました。
また、病型分類ごとに層別化GWASを実施した結果、全身型の抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性群のうち胸腺腫関連群ではTERT遺伝子と、胸腺腫非関連群ではHLA遺伝子と有意な関連を示し、病型特異的な遺伝的背景を有することを明らかにしました。
さらに、TERT遺伝子座で最も強い関連を示した一塩基多型(リードSNP)は一部の病型において治療抵抗性とも関連を示し、フェノムワイド関連解析(PheWAS)においては肺がんやテロメア長などの複数形質とも関連を示し、この多面的な影響を持つ多型であることを示しました。
MG合併胸腺腫検体の公開データを用いたシングルセルデータの解析および病理組織標本の免疫染色を行うと、TERT遺伝子は胸腺腫の未熟T細胞に細胞種特異的に発現していました。またRNAシーケンスの結果、MG発症のリスクアレルを有する場合にTERT遺伝子の発現が低下していることも示しました。
本研究成果によりMGの発症、病態に関わる遺伝的背景の解明が進み、将来的な新薬開発や個別化医療の実現へ貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年3月12日に英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
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(2026/5/18)
小腸出血は大腸出血より輸血・手術・長期死亡リスクが高いことを解明
~ 世界最大規模約1万例の急性下部消化管出血データ構築 ~
東京医科大学(学長:宮澤啓介/東京都新宿区)健診予防医学センターの永田尚義 准教授と、鹿児島大学 (学長:井戸章雄/鹿児島県鹿児島市)保健管理センター 小牧祐雅 准教授、消化器内科 佐々木文郷 診療准教授、佐賀県医療センター好生館(館長:田中聡也)消化器内科 冨永直之 部長、臨床統計支援部 貞嶋栄司 部長、東京大学(総長:藤井輝夫)医学部附属病院 消化器内科 山田篤生 助教(研究当時/現:医療法人社団爽和会 お茶の水駿河台クリニック院長)を含む全国49施設の医師から構成されるCODE BLUE-J Studyグループは、日本人の大規模急性下部消化管出血データベースを構築し、小腸出血と大腸出血の臨床的特徴および短期・長期転帰を網羅的に解析しました。その結果、小腸出血は来院時から重症な臨床像を呈し、診断および治療が困難であること、さらに短期予後は大腸出血と同等である一方、長期死亡率が有意に高いことを世界で初めて明らかにしました。
本研究成果は「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。
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(2026/5/13)
保健師らと専門医の協働による地域密着型乳児股関節エコースクリーニングを実装
~ 高いカバー率と従来法では困難な事例の早期発見・早期受診を実現 ~
東京大学大学院医学系研究科の吉岡京子准教授らの研究グループは、医療資源が限られた日本の小規模自治体において、保健師を中心とした看護職と小児整形外科医による遠隔読影を組み合わせ、既存の母子保健事業に乳児股関節エコースクリーニングを組込む実装を推進し、その実現可能性と有効性を検証しました。
本研究では、RE-AIM(Reach, Effectiveness, Adoption, Implementation, Maintenance)フレームワークを用いた混合研究法により評価を行い、推定対象人口の95.6%への到達率と85.8%の標準画像取得率を達成しました。スクリーニングの結果、8.7%に正常以外の所見が認められ、7.0%が医療機関へ紹介されました。紹介された児のうち54.8%は経過観察、4.8%は治療が必要と判断されました。
保健師らが専門医と協働し、全乳児を対象とする母子保健事業にエコーを導入することで、従来法の限界を補完し、早期発見・早期治療の実現につながった点に新規性があります。本研究の成果は、地域における発育性股関節形成不全のスクリーニング精度向上と医療費削減への寄与が期待されます。
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(2026/5/12)
日本人の「食事リズム」には4つの型があることを特定
~ 時間栄養学による包括的な食行動分析 ~
東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎教授、篠崎奈々助教、佐々木敏東京大学名誉教授らによる研究グループは、20~69歳の日本人1,047人を対象に、11日間にわたるリアルタイムの食事記録を用いて、いつ、どのくらいの頻度で食べるかという「食事リズム(時間栄養学的食行動)」の個人差を網羅的に解析しました。
統計解析の結果、日本人の食事リズムは「勤務日に朝食早め・多め型」や「休日に朝食抜き型」など、大きく4つのパターンに分類できることを世界で初めて明らかにしました。これらの型は性別、年齢、勤務形態といった属性と強く関連していました。一方で、意外なことに、食事の質(栄養バランス)や肥満(BMI・腹囲)との間に直接的な関連は見られませんでした。本研究は、日本人の多様な食事リズムの実態を初めて可視化したものであり、時間栄養学に基づいたうえで個々のライフスタイルに即した健康増進策を構築するための重要な科学的基盤となる成果です。
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(2026/5/12)
慢性疼痛とADHD・ASD症状の関連を全国調査で解明
~ ADHD症状が痛みの重症化に強く関与 ~
東京大学医学部附属病院の笠原諭特任臨床医らの研究グループは、厚生労働科学研究費による矢吹研究班(慢性の痛み政策研究事業)の全国調査において、慢性疼痛とADHD症状に強い関連があることを明らかにしました。
本研究では、多職種が連携して慢性的な痛みを専門に診療する全国の「痛みセンター」を受診した慢性疼痛患者958名を対象に、発達障害の特性である注意欠如・多動症(ADHD)症状および自閉スペクトラム症(ASD)症状との関連を調査しました。その結果、対象患者の約2割にADHDまたはASDの症状が認められ、特にADHD症状は慢性疼痛の重症化と強く関連していることが明らかになりました。さらに統計解析により、ADHD症状が「不安・うつ」、そして「痛みに対する破局的な捉え方(以下、痛みの破局化)」と組み合わさることで、痛みの重症化につながる経路が存在する可能性が示唆されました。
この結果は、慢性疼痛の診療においてADHD症状の評価と対応が極めて重要であることを示しており、今後の治療戦略や医療政策の改善に大きく寄与することが期待されます。
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(2026/4/23)
日本初:食事の質を簡単に数分で調査可能に
~ 健診・保健指導・研究で活用できる12問の質問票 ~
東京大学大学院医学系研究科 社会予防疫学分野の大野 富美 博士課程学生(当時、現:同研究科 イートロス医学講座 特任助教)、篠崎 奈々 助教、足立 里穂 専門職修士課程学生(当時)、村上 健太郎 教授、佐々木敏 東京大学名誉教授らによる研究グループは、日本で初めて食事の質を数分で簡単に調査できる質問票を開発しました。
本質問票は12問で構成され、回答者の過去1か月の食習慣を尋ねることで、健康のために重要な10項目の食品・栄養素からなる「日本人のための食事の質スコア」を0~30点でスコア化します。開発にあたっては、食と健康に関する科学的根拠に加え、日本人の食事摂取量データなどに基づいて質問とスコア化の方法が設計されました。
従来、食事の質を科学的に測定できる質問票は質問数が50問以上で回答に時間がかかることが課題でした。本質問票は12問のみで、コンピューターなどがなくても簡単な足し算のみでスコア化ができる点が特徴です。妥当性の検証後は、健診・保健指導・研究など、短時間で食事の質を把握したい場面での幅広い活用が期待されます。
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(2026/4/15)
「医学部附属病院」から「大学附属」への組織変更について
4月8日に「東京大学大学院医学系研究科・医学部・医学部附属病院の改革に向けた提言」[PDF]が公表されました。
これを踏まえ、東京大学医学部附属病院は「医学部附属」から「大学附属」へと組織変更することとなりました。社会、そして大学に関わるすべての人々の信頼に応えるため、大学全体の理念のもとで、医学と医療、臨床と研究が相互作用によって更に発展するように、医学系研究科・医学部の改革を病院とともに一体的に推進して参ります。
(2026/4/10)
治療薬に乏しい小細胞肺がんへの新たな治療戦略を見出す
~ がん細胞特有の過剰な中心体に着目 ~
東京大学大学院医学系研究科の川上正敬講師、鹿毛秀宣教授、中川夏樹(医学博士課程:研究当時)、戸田嶺路(医学博士課程)らによる研究グループは、小細胞肺がんにおいてモータータンパクKIFC1を阻害すると、がん細胞特有の過剰中心体の二極への収束が阻害され、細胞の多極性分裂が誘導されて選択的に細胞死が生じることを、培養細胞および動物モデルで明らかにしました。
中心体は通常2個に厳密に制御され二極性分裂を担いますが、がん細胞では中心体数の制御が破綻し、過剰中心体がしばしば存在します。過剰中心体を有するがん細胞は、分裂時にこれらの過剰中心体を二極に収束させることで分裂を成立させています。この収束が阻害されると多極性分裂が生じ、染色体分配異常により細胞死に至ります(anaphase catastrophe)。
本研究では、小細胞肺がんが他のがん種と比べて過剰中心体を高頻度に有し、これを治療標的として利用できる可能性を示しました。さらに、中心体が2個の正常細胞ではKIFC1阻害による細胞死はほとんど認められず、本戦略ががん細胞特異的な脆弱性を標的とするものであることが確認されました。
治療選択肢が限られる小細胞肺がんに対し、本成果は選択性の高い新たな治療・創薬戦略の基盤となることが期待されます。
※詳細は東大病院HP掲載のリリース文書[PDF]をご覧ください。
(2026/4/10)
川崎病と屋外の環境との関連に関する疫学研究を整理
~ スコーピングレビューで世界の知見を統合 ~
長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科のマダニヤズ・リナ准教授を中心に、東京大学、国立環境研究所、自治医科大学、北海道大学、韓国および台湾の連携機関との共同研究チームは、川崎病と屋外の環境との関連に関する世界の疫学研究をスコーピングレビュー(既存研究を幅広く整理して全体像や研究課題を示すレビュー)により整理しました。
その結果、川崎病は屋外の環境要因と関連する可能性が示唆され、特に、長期または胎児期(妊娠期)の粒子状物質ばく露および空気中の生物学的因子(バイオエアロゾル、花粉、粉じんに付随する微生物等)については、比較的一貫した関連が報告されました。一方、気象要因や短期的な大気汚染ばく露に関する知見は研究間でばらつきがあり、ばく露指標の定義や解析手法、地域特性などの違いが影響している可能性があります。
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(2026/4/9)
ミトコンドリアDNA転写阻害による放射線増感効果の解明
~ ミトコンドリア呼吸抑制によるがん放射線治療効果の増強 ~
東京大学大学院医学系研究科の細谷紀子准教授らによる研究グループは、ミトコンドリアDNAの転写を担うミトコンドリアRNAポリメラーゼ(POLRMT)の阻害剤が、ミトコンドリア呼吸を抑制することによって、放射線増感効果を発揮することを明らかにしました。
研究グループは、がん細胞においてミトコンドリアRNAポリメラーゼ(POLRMT)の発現が正常細胞に比べて亢進しており、その発現の高さが、がん患者の生存期間の短縮やがんの転移や進行度と相関することに着目しました。2020年にミトコンドリアRNAポリメラーゼ(POLRMT)の阻害剤IMT1が開発され、一部のがん細胞では単剤で増殖抑制効果を示すことは先行研究で報告されていましたが、亜致死的レベルの微量のIMT1を放射線照射と併用した場合の効果については、これまでに明らかにされていませんでした。そこで、研究グループでは、微量のIMT1と放射線照射を併用した細胞と、放射線照射のみを行った細胞の生存率を比較しました。その結果、正常細胞ではIMT1による放射線増感効果が見られないのに対し、がん細胞では、IMT1を放射線照射と併用した場合に、有意に細胞が死にやすくなることが分かりました。さらに、細胞外フラックスアナライザーを用いてミトコンドリア呼吸の評価をしたところ、がん細胞に放射線照射のみを行った場合にはミトコンドリア呼吸が亢進するのに対し、微量のIMT1を放射線照射と併用するとミトコンドリア呼吸が著しく抑制されることが明らかになりました。放射線照射によってミトコンドリア呼吸が亢進することは、先行研究でも報告されており、細胞が死ににくくなる可能性を示唆しています。本研究では、ごく微量のIMT1を放射線照射と併用することにより、放射線照射単独で見られるミトコンドリア呼吸亢進が阻害されて、がん細胞が死にやすくなることが示され、ミトコンドリア呼吸を標的とした新しいがん放射線治療増感法の開発への応用につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年3月31日21時(米国東部夏時間)に国際科学誌『Journal of Radiation Research』に掲載されました。
※詳細は
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(2026/4/1)









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