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広報・プレスリリース最新情報(2019年(令和元年))

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オリーブ油の成分が大動脈を守る
~ オレイン酸を動かし大動脈解離を抑える脂質代謝酵素の同定 ~

大動脈解離は、大動脈壁の中膜が突然破断する予後不良の疾患で、突然死の原因となることから、その診断・予防・治療法の開発は解決すべき喫緊の課題です。しかしながら、大動脈解離にはヒトの臨床を反映する簡便な動物モデルが存在しないため、病態の発症機序は殆ど解明されておらず、それ故に外科的処置以外に予防・治療方策は皆無でした。東京大学大学院医学系研究科 村上誠 教授、山梨大学医学部呼吸器循環器内科 久木山清貴 教授らの研究チームは、脂質を代謝する酵素群の生体内機能に関する研究から、血管内皮細胞から分泌される脂質分解酵素が大動脈の健康を維持する脂肪酸(オリーブ油の主成分であるオレイン酸)を作り出し、大動脈解離を防ぐ役割を持つことを発見しました。この成果は、大動脈解離の新規予防・治療法の開発につながると期待されます。

この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」研究開発領域(研究開発総括:清水孝雄)における研究開発課題「PLA2 メタボロームによる疾患脂質代謝マップの創成とその医療展開に向けての基盤構築」(研究開発代表者:村上誠)、革新的先端研究開発支援事業ステップタイプ(FORCE)、ならびに日本学術振興会科研費(新学術領域研究、基盤研究)の一環として行われました。この研究は、2020年6月1日に米国科学誌『Journal of Biological Chemistry』にオンライン掲載され、特に優れた論文に与えられる“Editors’Picks”に選ばれました。

※詳細はPDFこちら[PDF]をご覧下さい。

(2020/7/8)

集中治療室での治療を必要とした重症新型コロナウイルス感染症に対する ナファモスタットとファビピラビルによる治療

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が全世界的に拡大しており、その対策が急がれています。我が国は緊急事態宣言が本年5月25日に解除され、感染はいったん収束しつつありますが、今後の第二波、第三波の到来に備えて、COVID-19の治療薬の開発が喫緊の課題です。東京大学ではナファモスタットメシル酸塩がウイルスのヒトの細胞への侵入を抑制することで、COVID-19に対する有効性が期待できる治療薬として基礎的研究成果を発表してまいりました。今回、東京大学医学部附属病院ではナファモスタットメシル酸塩をCOVID-19に対する治療薬候補として選択し、ファビピラビルとの併用によって、肺炎を発症し集中治療室(ICU)での治療を必要とした重症のCOVID-19症例に対してコンパッショネート(人道的)使用による治療を行いました。

ナファモスタットメシル酸塩は抗凝固薬や膵炎治療薬として国内で使われてきた薬剤です。ファビピラビルはRNAポリメラーゼを抑制することでSARS-CoV-2のヒトの細胞内での増殖を抑制すると考えられています。ナファモスタットメシル酸塩とファビピラビルはウイルスの増殖過程における作用部位が異なることから、両者を併用することで相加的な効果が期待されます。また、COVID-19の一部の患者では、血管内での病的な血栓の形成が病気の悪化に関与していると考えられ、ナファモスタットメシル酸塩の抗凝固作用が有効であると期待されています。

本研究成果は、2020年7月3日に医学雑誌「Critical Care」のオンライン版にて発表されました。

※詳細は東大病院HP掲載の リリース文書[PDF]をご覧ください。

(2020/7/6)

喫煙率の社会格差は縮小していない ~格差を考慮した喫煙対策を~

欧米では喫煙の社会格差の統計をもとにその是正のための対策が健康政策として提起・実施されているのに対し、わが国では喫煙率の社会格差に関する統計がなく、格差が縮まっているのか明らかでありませんでした。東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻公衆衛生学分野の田中宏和客員研究員と小林廉毅教授は、オランダ・エラスムス大学医療センターのヨハン・マッケンバッハ(Johan P.Mackenbach)教授と共同研究を行い、喫煙率の社会格差の経年変化を国民生活基礎調査のデータを用いて分析しました。

2016年の教育歴別の喫煙率(25-64歳)は男性の中学卒業者で57.8%、高校卒業者で43.9%、大学以上卒業者で27.8%であり、女性では中学卒業者34.7%、高校卒業者15.9%、大学以上卒業者5.6%でした。2016年の職業階層別の喫煙率(男性、25-64歳)は管理職・専門職で32.5%、非熟練労働者で47.1%でした。管理職・専門職と非熟練労働者を比較すると、男性で2001年に喫煙率の差は11.9%(95%信頼区間:11.0-12.9)、比は1.24(95%信頼区間:1.22-1.26)であったのが、2016年に差は14.6%(95%信頼区間:13.5-15.6)、比は1.45(95%信頼区間:1.41-1.49)と格差は拡大していました。この傾向は女性でも認められ、人口全体の喫煙率は低下しているものの喫煙率の社会格差は縮小していない(わずかに拡大している)ことが明らかになりました。

わが国では喫煙率の社会格差是正のための目標値の設定や公衆衛生上の施策がなく、このままでは健康格差が拡大する懸念があります。本研究はわが国において喫煙率の社会格差が縮小していない傾向を明らかにしたとともに、将来の健康格差を予防・縮小するための社会格差を考慮した喫煙対策の重要性を示唆するものです。

本研究は2020年6月27日に「Journal of Epidemiology」(オンライン早期公開版)に掲載されました。

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(2020/7/01)

自己免疫疾患の発症を防ぐ新たなタンパク質を特定
~ クロマチン制御因子Chd4は自己抗原の発現を制御し、自己免疫疾患の発症を防ぐ ~

免疫系は、病原体から我々の身体を守るシステムです。T細胞は免疫系において中心的な役割を担っている細胞集団であり、我々の体内に進入してきた病原体を攻撃します。一方で、T細胞は“自己を攻撃しない”性質も持っており、この性質は免疫寛容と呼ばれています。T細胞は胸腺という臓器でつくられますが、胸腺では、末梢組織で機能している多種多様なタンパク質が自己抗原として異所的に発現しており、これらに強く反応する自己反応性T細胞が予め胸腺内で除去されることにより免疫寛容が維持されています。

東京大学大学院医学系研究科病因・病理学専攻免疫学の友藤 嘉彦(医学部医学科;研究当時)、高場 啓之 助教、高柳 広 教授らの研究グループは、胸腺において、末梢組織自己抗原の発現を制御するクロマチン制御因子Chd4を同定しました。研究グループは、胸腺上皮細胞でのみChd4を欠損する遺伝子改変マウスを作成し、胸腺の遺伝子発現パターンやクロマチン構造について検討しました。その結果、Chd4はプロモーター領域、スーパーエンハンサー領域の二領域のクロマチン構造を制御することによって、末梢組織自己抗原の遺伝子発現を制御していました。また、胸腺でChd4を欠損させたマウスは自己免疫疾患を発症しました。以上の結果から、Chd4が末梢組織自己抗原の発現制御を行い、免疫寛容を維持していることがわかりました。

この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「生体組織の適応・修復機構の時空間的解析による生命現象の理解と医療技術シーズの創出」研究開発領域における研究開発課題「組織修復型免疫細胞の解明とその制御による疾患治療の開発」(研究開発代表者:高柳 広)の一環として行われました。

本研究成果は日本時間6 月30 日にNature Immunology(オンライン版)にて発表されました。

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(2020/6/30)

高齢者高血圧の発症機序を解明~食塩の関与~

高血圧は、心臓病や脳卒中などの致死的な病気の重要な原因となるが、症状がないことからサイレントキラーと呼ばれています。高齢者は高血圧になりやすいことが分かっていましたが、その原因や機序は不明でした。東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス寄付研究部門の藤田敏郎名誉教授、河原崎和歌子特任助教らの研究グループは、高齢者高血圧の発症メカニズムを解明しました。

研究グループは、加齢と共に、血中の抗加齢因子Klotho蛋白が減少し、そのため高食塩を摂取するとKlothoにより抑制されていた血管の収縮経路が活性化して、血圧が上昇する一連の過程を高齢のマウスを用いて証明しました。また、それを裏付けるため、Klotho蛋白を補充して予め血中レベルを若いマウスと同程度まで回復させておくと、食塩を投与しても血圧が上昇しないことを示しました。

本研究はKlothoの関与する血管収縮経路の阻害薬を投与することにより食塩による血圧上昇を抑制できたことから、高齢者高血圧の新たな治療薬の可能性を提案しています。さらに、高血圧は予防が大切ですが、生活習慣の改善により血中Klothoを正常に維持することが高血圧発症の予防となることを示唆しており、血清Klothoは高血圧発症の予知マーカーとしても期待されます。

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(2020/6/30)

統合失調症や双極性障害の男性患者ではセロトニン関連遺伝子のDNAメチル化状態が変化

熊本大学大学院生命科学研究部分子脳科学講座・文東美紀准教授、岩本和也教授および東京大学医学部附属病院精神神経科・池亀天平助教、笠井清登教授らの研究グループは、国内多施設共同研究により、統合失調症や双極性障害患者の血液では、セロトニントランスポーター遺伝子の特定のゲノム領域が高いメチル化状態を示すことを明らかにしました。また、高いメチル化状態は男性およびセロトニントランスポーター遺伝子のプロモーター領域における低活性型の遺伝子多型を持つ患者で顕著に見られ、脳の扁桃体の体積と逆相関することを見出しました。さらに、人工的にメチル化した遺伝子のゲノム領域では、転写活性がほぼ完全に抑制されることを示しました。

セロトニントランスポーターは、脳神経細胞のシナプス間隙で神経伝達物資セロトニン濃度の調節を行っており、抗うつ薬の主要な標的分子であると考えられています。今回、研究グループは、セロトニントランスポーター遺伝子のプロモーター領域における遺伝子多型である5-HTTLPRが、エピジェネティックな状態であるDNAメチル化状態と関連し扁桃体の形態変化を通して精神疾患の病態に関係している可能性を明らかにしました。

本成果により、統合失調症や双極性障害の病態に関する理解が進み、エピジェネティックな状態を標的とした治療薬や診断・治療マーカーの開発など、多方面での応用が期待されます。

本研究成果は、2020年6月19日付(日本時間)の国際科学誌「Schizophrenia Bulletin」において公開されました。

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(2020/6/22)

虚血性心疾患に関わる新たな疾患感受性座位の発見
~ 発症に関わる遺伝要因の人種差の理解に貢献 ~

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター循環器ゲノミクス・インフォマティクス研究チームの伊藤薫チームリーダー、松永紘研修生、ゲノム解析応用研究チームの鎌谷洋一郎客員主管研究員、東京大学大学院医学系研究科循環器内科学の小室一成教授らの共同研究グループは、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)の発症に関わる新たな疾患感受性座位を発見しました。

本研究成果は、虚血性心疾患の発症に影響する生物学的な機序の解明や、遺伝要因の人種差の理解に貢献すると期待できます。

虚血性心疾患の有病率は人種によって異なり、日本人は欧米人に比べて低いことが知られています。この理由として、環境要因だけでなく遺伝要因も発症に関与していることが考えられます。今回、共同研究グループは、約5万人の日本人集団の遺伝情報を用いたゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、その結果と約34万人の欧米人集団との人種横断的なメタ解析を行ったところ、虚血性心疾患の発症に関わる3領域の新たな疾患感受性座位を同定しました。さらに、発症に影響する臓器・組織を調べた結果、日本人集団では副腎、欧米人集団では動脈や脂肪組織の影響が大きいことが分かりました。なお、本研究で作成した日本人集団におけるジェノタイプデータは、科学技術振興機構(JST)バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)を通じて公開する予定です。

本研究は、科学雑誌『Circulation: Genomic and Precision Medicine』(6月16日付:日本時間6月17日)の掲載に先立ち、オンライン版(5月29日付)に掲載されました。

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(2020/6/15)

新型コロナウイルス感染症に対する企業内対策の実施状況
~ 企業規模別・業種別での検討と仕事のパフォーマンスへの影響 ~

新型コロナウイルス感染症に対し、各職場で実施される企業対策は感染拡大防止に重要な役割を担っています。しかし、日本における新型コロナウイルス感染症に対する企業内対策の実施状況は明らかになっていませんでした。

東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の佐々木那津大学院生、川上憲人教授らは、日本での新型コロナウイルス感染症拡大の初期に企業内対策の実施状況を明らかにすることを目的に、全国一般労働者1,488人を対象にオンライン調査を実施しました。新型コロナウイルス感染症に関連して社員向けの通知の有無と、23項目の個別対策の実施状況について今回新たに作成した調査票に回答してもらいました。新型コロナウイルス感染症への不安、心理的ストレス反応、仕事のパフォーマンスについても聴取しました。その結果、労働者のうち79.9%は勤務先から新型コロナウイルス感染症に関する社員向けの通知を受け取っていました。手洗いなどの個人予防対策の励行は約8割の企業で実施されていましたが、高齢者や妊婦などハイリスクな労働者への配慮(39.8%)、感染時の補償に関する情報提供(35.3%)、特別な措置が実施される期間に関する情報提供(33.0%)、テレワークや在宅勤務の励行(26.8%)、働く環境(デスクの配置や動線など)の変更(17.2%)の実施率は低いことが明らかになりました。従業員数が50人未満の小規模事業場では対策の実施数が有意に少なく、業種では製造業と比較して小売業・卸売業、運輸業で対策の実施数が有意に少ないことがわかりました。対策の実施数が多いほど、新型コロナウイルス感染症に対する不安は有意に高い傾向がみられましたが、心理的ストレス反応は有意に低く、仕事のパフォーマンスは有意に高いことがわかりました。

本成果は、新型コロナウイルス感染症に対する企業内対策を企業規模別・業種別に検討した初めての研究です。今後は、従業員50人未満の企業や小売業・卸売業、運輸業などの業種においてさらに対策が推進されることが期待されます。なお、本成果は日本産業衛生学会の専門誌「Environmental and Occupational Health Practice」に掲載される予定です。また、感染症への不安・精神健康・パフォーマンスへの影響については日本産業衛生学会の専門誌「Journal of Occupational Health」に掲載される予定です。

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(2020/6/15)

疾患発症に関わる日本人の遺伝的特徴の解明
~ 日本人21万人のゲノム解析により遺伝的変異を検索 ~

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター統計解析研究チーム(研究当時)の鎌谷洋一郎チームリーダー、石垣和慶特別研究員、久保充明副センター長(研究当時)、東京大学の門脇孝名誉教授、山内敏正教授、東京医科歯科大学の稲澤譲治教授らの国際共同研究グループは、バイオバンク・ジャパンのゲノムデータを用いて、東北メディカル・メガバンク計画、JPHC研究、J-MICC研究と共同で日本人約21万人のゲノム解析を行い、27疾患に関わる320の遺伝的変異を同定し、そのうち重要な遺伝的バリアントについて、国立がん研究センターバイオバンク、国立長寿医療研究センターバイオバンクならびにOACIS研究の協力で再現性を確認しました。

本研究成果は、疾患の病態の理解、疾患発症リスクの民族差の理解、個々人の遺伝子情報に基づく個別化医療の発展に貢献すると期待できます。

今回、共同研究グループは、42疾患を対象とした東アジアにおける最大規模のゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、320の遺伝的変異を同定しました。そのうち25変異は、欧米での研究では検出されなかった新しい変異であり、虚血性心疾患に関連するATG16L2、肺がんに関連するPOT1、ケロイドに関連するPHLDA3などの遺伝子のタンパク質のアミノ酸配列を変える変異が含まれていました。また、このGWASの解析結果と転写因子の結合部位を統合する解析を実施し、疾患発症に関与する転写因子と疾患の378の組み合わせを同定しました。

本研究は、科学雑誌『Nature Genetics』オンライン版(6月8日付:日本時間6月9日)に掲載されました。

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(2020/6/10)

腸内細菌による食後血糖調節機構の解明
~ マクロファージの食後反応と肥満による破綻から見る新規治療への希望 ~

肥満は種々の合併症を引き起こす2型糖尿病の要因のひとつであり、肥満が引き起こす脂肪組織での慢性炎症は糖尿病の重要な病態であるインスリン抵抗性を促進すると考えられています。炎症は免疫反応の一つですが、最近では短期的な免疫反応が生体の恒常性維持に関与している可能性も示唆されています。

今回、東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科の戸田郷太郎 病院診療医、山内敏正 教授、糖尿病・生活習慣病予防講座 門脇孝 特任教授(研究当時、現 虎ノ門病院 院長)、国立国際医療研究センター研究所の植木浩二郎 糖尿病研究センター長の研究グループは、組織特異的ノックアウトマウスを用いた検討を行い、摂食後の小腸内Lipopolysaccharide (LPS)産生菌の一過性の増加およびインスリン分泌に反応したマクロファージがAkt-mTOR経路の活性化によりインターロイキン10(IL-10)を産生し、IL-10がインスリンと共に肝臓での糖新生遺伝子発現を抑制することを発見しました。肥満したマウスではマクロファージでのインスリンシグナルおよびIL-10産生が減弱しており、アデノウイルスを用いてIL-10を発現させると食後高血糖、高インスリン血症が改善することから、免疫反応の食事摂取に対する生理的な応答を回復もしくは維持することが肥満・糖尿病の治療目標になりうると考えられます。

本研究成果は日本時間2020年5月28日午前0時(米国東部夏時間 2020年5月27日午前11時)にMolecular Cell(オンライン版)にて発表されました。

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(2020/5/28)

遺伝性乳がん・卵巣がんのリスクとなるBRCA2遺伝子バリアントの新規機能解析法を開発

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所細胞情報学分野 池上政周任意研修生、高阪真路ユニット長、間野博行分野長らの研究グループは、国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科 田村研治科長、国立大学法人東京大学大学院医学系研究科 田中栄教授、細谷紀子准教授、国立研究開発法人理化学研究所生命医科学研究センター 桃沢幸秀チームリーダーらと共同で、遺伝性乳がん・卵巣がんの原因として知られるがん抑制遺伝子BRCA2遺伝子のバリアントに対するハイスループット機能解析法を開発しました。

本研究グループは、これまでにがん遺伝子に対する革新的なハイスループット機能解析手法(mixed-all-nominated-mutants-in-one method: MANO法)を構築し、EGFRやERBB2といったがん遺伝子の意義不明バリアントの機能解析を行ってきました。この手法を発展させ、BRCA2の機能解析手法であるMANO-BRCA法(MANO-B法)を確立し、186種類の意義不明バリアントを含むこれまでで最大規模の244種類のバリアントについて機能解析を行った結果、新たに37種類の病的バリアントを同定しました。さらに本手法の臨床応用例として、遺伝子検査で新たに発見されたバリアントの病的意義を迅速に判定し、報告するシステムを構築しました。本システムは、適切な治療方針が定まらず不安を抱えていた意義不明バリアント保持者に正しい情報を伝えることができることから、リスク低減手術やPARP阻害薬投与の必要性を判断するためのコンパニオン診断としての活用が期待されます。

本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に5月22日付で掲載されます。

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(2020/5/25)

血小板凝集塊は分類可能!人工知能が発見

東京大学大学院理学系研究科の周雨奇大学院生、合田圭介教授らは東京大学大学院医学系研究科・東京大学医学部附属病院検査部の安本篤史助教(研究当時)、矢冨裕教授と共同で、血液中の血小板凝集塊が分類できることを世界で初めて発見し、それを定量モデル化した手法「インテリジェント血小板凝集塊分類法(intelligent Platelet Aggregate Classifier; iPAC)」の開発に成功しました。iPACは、特殊な顕微鏡を用いて得られた多数の血小板及び血小板凝集塊の画像をもとにした深層学習によって構築された人工知能です。iPACを用いることで、刺激物質(アゴニスト)の種類により血小板凝集塊の形態(形、大きさ、複雑さなど)が微妙に違うことに気づき、血小板凝集塊の形態から活性化を誘導するアゴニストの種類の同定・分類するという画期的な発見をしました。iPACは、血小板凝集のメカニズムを解明するための強力なツールであり、また、流血中の血小板凝集塊の存在は心筋梗塞や脳梗塞の原因となるアテローム血栓症及び最近の新型コロナウイルス感染による血栓症と関連することから、血栓性疾患の画期的な臨床診断法、薬理学、治療法への応用展開が期待されます。

本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)、日本学術振興会(JSPS)の研究拠点形成事業、ホワイトロック財団の支援を受けて実施されました。本研究成果は、2020年5月12日(英国時間)に「eLife」のオンライン版で公開されました。

※詳細は下記ページをご覧下さい。
東京大学大学院理学系研究科・理学部ホームページ プレスリリース詳細

(2020/5/22)

東アジア人集団の2型糖尿病に関わる新たな遺伝子領域を発見

2型糖尿病は血糖値が上がることでさまざまな臓器を傷害し、脳卒中・心筋梗塞・腎不全・がんなど、糖尿病以外の数多くの疾患の発症や進行につながる重大な疾患です。日本国内で1,000万人、世界中で4億人以上が2型糖尿病であると言われています。2型糖尿病のかかりやすさは、遺伝要因と環境要因の両方によって影響されますが、欧米人集団に比べ東アジア人集団における2型糖尿病の遺伝要因の理解は不十分でした。

東京大学大学院医学系研究科の門脇孝特任教授(研究当時)、山内敏正教授、理化学研究所 生命医科学研究センターの堀越桃子チームリーダーらの研究グループは、東アジアなどの国々の研究機関との研究を共催し(the Asian Genetic Epidemiology Network (AGEN) consortium)、40万人規模の東アジア人集団の遺伝情報を用いたゲノムワイド関連解析(GWAS)の大規模メタ解析を行い、2型糖尿病発症のリスクを高める遺伝子領域を新たに61箇所同定しました。

本研究において、2型糖尿病の遺伝要因に筋肉や脂肪といったインスリン感受性に関わる臓器やマイクロRNAが寄与することが示唆されました。また、1つの遺伝子領域にある独立した異なる2つのシグナルが、異なる臓器における、異なる遺伝子の発現調節を介して2型糖尿病発症のリスクを高める可能性が示唆されました。

これらの結果は東アジア人集団における2型糖尿病の遺伝要因の理解を深めるとともに、将来的には糖尿病の病態解明や治療薬開発に応用できる可能性があります。

なお、本研究の2型糖尿病症例数は約8万人であり、世界最大の症例数です。このうち約半数は日本人集団において実施されたGWASが占めており、バイオバンク・ジャパン、東北メディカル・メガバンク機構、多目的コホート研究(JPHC Study)、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)よりご協力をいただきました。

本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のゲノム医療実現推進プラットフォーム事業「先端ゲノム研究開発」(GRIFIN)領域における研究開発課題「糖尿病の遺伝・環境因子の包括的解析から日本発次世代型精密医療を実現するプロジェクト」(研究開発代表者:門脇孝)の一環で行われました。その成果は日本時間 2020年5月7日(ロンドン時間 2020年5月6日)に英国科学雑誌 Natureオンライン版に掲載されました。

※詳細は東大病院HP掲載の リリース文書[PDF]をご覧ください。

(2020/5/22)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療法の早期確立を目指す
~ 「肺炎を有するCOVID-19 患者に対するファビピラビルとナファモスタットメシル酸塩の併用療法」に関する多施設共同単盲検ランダム化比較試験(特定臨床研究)の開始 ~

東京大学医学部附属病院では、肺炎を発症している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性患者を対象に、ファビピラビル(アビガン®錠200mg)とナファモスタットメシル酸塩(注射用フサン®50)の併用療法の特定臨床研究を開始しました。本試験は東京大学医学部附属病院のほか、多施設共同で実施いたします。

※詳細は東大病院HP掲載の リリース文書[PDF]をご覧ください。

(2020/5/8)

日本人の胃がんリスクとなる遺伝的背景と生活習慣
  ~ 人種横断的大規模胃がんゲノム解析の成果 ~

胃がんは、日本をはじめ東アジアで最も頻度の高い悪性腫瘍です。がんゲノムシーケンスの進歩によって、胃がんのドライバーとなる体細胞ゲノム変異についてはその全体像が明らかになってきました。胃がん発生リスクについてはピロリ菌がよく知られていますが、ヒト側の遺伝的素因やそれらと環境因子との関わりについて、その全体像は明らかになっていませんでした。

今回、東京大学先端科学技術研究センター ゲノムサイエンス部門の鈴木章浩 指導委託大学院生(研究当時)、油谷浩幸 教授および大学院医学系研究科 衛生学分野の加藤洋人 准教授、石川俊平 教授らの研究グループは、人体病理学・病理診断学分野の牛久哲男 教授、深山正久 教授(研究当時)、消化管外科学の瀬戸泰之 教授、横浜市立大学 外科治療学の利野靖 診療教授、肝胆膵消化器病学の中島淳 教授、国立がん研究センターの柴田龍弘 がんゲノミクス分野長らのグループとともに、319人のアジア人、212人の非アジア人を併せた531症例の胃がん患者を対象とした大規模なゲノム解析を行い、体細胞ゲノム変異のパターン、胚細胞バリアント、生活習慣およびそれらの関連性について調べました。その結果、アルコールによって引き起こされるとされる特徴的なゲノム変異のパターン(変異シグネチャ)が見られる症例がアジア人に特異的に認められ、日本人の胃がんに限った解析では、6.6%(16/243)に認められました。それらの胃がん症例は、東アジア人に特有のALDH2遺伝子多型(アルコールの分解が出来ない遺伝子型)を持ち、飲酒および喫煙の両者が重なった時に相乗的に変異の数が増えることを特徴としていました。また胃がんの素因となる胚細胞レアバリアントを探索したところ、624個のがん関連遺伝子のなかでE-カドへリン遺伝子上のバリアント密度が最も高いことが分かりました。これらのレアバリアントを保有する患者の胃がんは大部分がびまん型胃がんであり、びまん型胃がん症例のうち13.3%(14/105)を占めていました。

東アジア地域特有のALDH2遺伝子多型と飲酒・喫煙習慣との組み合わせ、およびE-カドへリンの病的胚細胞バリアントの集合が、日本における胃がんの原因の一部として強く示唆されることが明らかになりました。特にびまん型胃がん症例の21.0%(22/105)は上記のどちらかの寄与があるという結果でした。今回の成果は、胃がんのハイリスク群を遺伝的素因によって絞り込み、生活習慣の改善や対象を絞った効果的なスクリーニングによって予防介入するための重要な知見と考えられます。本研究は、AMEDの次世代がん医療創生研究事業および革新的がん医療実用化研究事業、科学研究補助金の支援を受けて行われました。本研究成果は米科学誌『Science Advances』で2020年5月7日に公開されます。

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(2020/5/8)

体に優しいオメガ3脂肪酸を動かし肥満を抑える新しい脂質代謝酵素の発見

東京大学大学院医学系研究科 村上 誠 教授らは、脂質を代謝する酵素の生理的役割に関する研究から、白色脂肪組織に常在するM2マクロファージから分泌される脂質分解酵素がオメガ3(ω3)脂肪酸を作り出し、脂肪の燃焼を促進して肥満の進行を遅らせることを発見しました。この成果は、肥満や糖尿病などの生活習慣病の新規予防・治療法の開発につながると期待されます。

この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」研究開発領域(研究開発総括:清水 孝雄)における研究開発課題「PLA2メタボロームによる疾患脂質代謝マップの創成とその医療展開に向けての基盤構築」(研究開発代表者:村上誠)、革新的先端研究開発支援事業ステップタイプ(FORCE)、ならびに日本学術振興会科研費(新学術領域研究、基盤研究)の一環として行われました。この研究は、2020年5月5日(米国東部時間午前11 時)に米国科学誌『Cell Reports(セル・リポーツ)』にオンライン掲載されました。

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(2020/5/8)

精神保健学分野教授の川上憲人先生が紫綬褒章を受章

精神保健学分野教授の川上憲人先生が紫綬褒章を受章しました。

2020年春の紫綬褒章受賞者19名が発表となり、当学の川上先生が受章されました。川上先生は、永年にわたって公衆衛生学・精神保健学の教育、研究に従事され、地域住民および労働者を対象とした多数の研究に基づき、わが国における心の健康問題の実態解明と対策立案に貢献されたことが評価されました。また、地域と職場における心の健康問題の研究者、実務家の育成にも貢献されました。

特筆すべきこととして、世界精神保健調査日本調査によって地域住民の心の健康の実態解明とその対策立案に大きく貢献されたこと、および労働者の心の健康対策を推進するためのツールを数多く開発し平成27年に国の施策として導入されたストレスチェック制度にも大きく貢献されたことが挙げられます。新型肺炎による公衆衛生の危機に直面するさなか、公衆衛生学研究者・実践家にとって勇気づけられるニュースとなりました。

(2020/5/7)

3次元組織学による全臓器・全身の観察技術を確立
  ~ 組織の物理化学的性質に基づき理想的なプロトコルを設計 ~

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター合成生物学研究チームの上田泰己チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科システムズ薬理学教室教授)、洲崎悦生客員研究員(同准教授)らの共同研究グループは、組織透明化技術と組み合わせて利用できる全臓器・全身スケールの3次元組織染色・観察技術「CUBIC-HistoVIsion(CUBIC-HV)」を確立しました。

本研究成果は、現時点において世界で最も高効率な3次元組織染色手法を提供するもので、臓器・全身スケールでの生体システムの理解や、臨床病理学検査の3次元化による診断確度・客観性の大幅な向上に寄与すると期待できます。

今回、共同研究グループは、経験則による組織染色プロトコル開発の限界を突破するため、生体組織の物理化学的物性を詳細に調べた結果、生体組織(特に透明化処理を行なった組織)が、主にタンパク質によって構成される「電解質ゲル」の一種であることを再発見しました。この物性から組織を模倣できる人工ゲルを選別し、組織3次元染色の必須条件を探索するスクリーニング系を構築しました。さらに収集した必須条件を組み合わせることで、理想的な3次元染色プロトコルをボトムアップにデザインすることに成功しました。開発したCUBIC-HV法(CUBICに基づく3次元組織学・3次元イメージング)は、CUBIC透明化法、高速ライトシート顕微鏡との組み合わせにより、マウスの全脳、マーモセットの半脳、ヒト脳組織ブロック等を均一に染色し、3次元的な全臓器組織観察を可能にしました。

本研究は、オンライン科学雑誌『Nature Communications』(4月27日付:日本時間4月27日)に掲載されます。

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(2020/4/27)

細胞画像のわずかな特徴の違いの見分け方を教えてくれるAIの開発に成功
~ 細胞周期によって変動する特徴量をディープラーニングによって顕微鏡画像から抽出することに成功 ~

東京大学大学院医学系研究科の高尾大輔 助教と東京大学薬学部の長尾幸子 学部生(研究当時)の研究チームは、国立遺伝学研究所の坂本美佳 特任研究員、東京大学大学院薬学系研究科の知念拓実 助教、東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)の岡田康志 主任研究者(東京大学大学院医学系研究科・大学院理学系研究科 教授、理化学研究所生命機能科学研究センター(BDR)チームリーダー)らと共同で、ディープラーニングと定量解析により細胞画像から未知の情報を抽出する技術の開発に成功しました。大量の細胞画像から一つ一つの細胞を自動的に切り出し、ディープラーニングにより細胞周期などを判定するAIツールと、その情報をさらに解析することで、細胞周期によって変動する核の形状やゴルジ体の配置パターンなどを抽出する技術を確立しました。これは、人間の目ではとらえにくいわずかな細胞内の変動をAIが発見し、研究者に教えてくれる技術です。

細胞周期によって細胞内の組成や構造は大きく変わることが予想されますが、実際に何がどのように変動するのかを顕微鏡画像から網羅的かつ定量的に解析するためのアプローチは限られていました。具体的に細胞内の何に着目すればいいのかを知るために、今回、共同研究チームはディープラーニングを使って、細胞周期によって変動するパラメータを画像の中から見つける技術を開発しました。これまで研究者が「なんとなく」「経験的に」とらえていた現象や、そもそも見過ごされていた情報を、AIの手助けにより発掘・定量化しようという試みです。その結果、本研究で開発したAIは、DNAやゴルジ体の染色画像の中から、細胞周期によってわずかに変動する特徴を発見しました。この情報を使って共同研究チームが画像を詳しく解析したところ、核やゴルジ体の面積などの特定のパラメータを測定することで画像から細胞周期を分類できることが分かりました。すなわち「画像のどこに着目すれば目的の情報が得られるのかAIが教えてくれる」という研究サポートツールの開発に成功しました。

本研究で開発したツールは汎用性が高く、他の多くの研究への応用を想定しています。細胞周期以外の判定はもちろん、細胞画像以外の画像データへの応用も可能なため、細胞・発生生物学から医療画像の解析など、基礎から応用まで幅広い分野の研究をサポートする強力なツールとなることが期待されます。本研究の成果は、2020年4月22日に米国細胞生物学会誌Molecular Biology of the Cellに掲載されます。

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(2020/4/27)

がん全ゲノムにおけるマイクロサテライト不安定性の解明
  ~ がん免疫療法の適応診断や遺伝性腫瘍診断に有効 ~

理化学研究所(理研)生命医科学研究センターがんゲノム研究チームの藤本明洋副チームリーダー(研究当時、現 東京大学大学院医学系研究科教授)、中川英刀チームリーダーらの共同研究グループは、2,700例以上のがん全ゲノムシーケンスデータについて、「マイクロサテライト(MS)」と呼ばれる繰り返し配列の変異を同定し、その特徴を明らかにしました。本研究は、国際連携による全ゲノムがん種横断的解析プロジェクト(PCAWG)の一環として行われ、がん全ゲノムの「マイクロサテライト不安定性(MSI)」に関するこれまでで最も網羅的な研究と診断となりました。

本研究成果は、がん免疫療法の適応診断、遺伝性腫瘍の診断に有効であり、次世代のがんゲノム医療研究の進展に貢献すると期待できます。

高変異率のMSマーカーを用いたMSI判定は、現在、遺伝性腫瘍の診断やがん免疫療法の適応診断のために行われています。しかし、繰り返し配列の解析は非常に難しく、全ゲノムでどのようなMS変異が起きているかは不明でした。

今回、共同研究グループは、全ゲノムにおけるMS変異同定のための高精度解析法「MIMcall」を開発し、PCAWGで解析された2,717例の21種類のがんの全ゲノムシーケンスデータについて、1例あたり平均約765万カ所、合計約200億カ所のMS変異解析を行いました。その結果、ほとんどのMSに変異が見つかりませんでしたが、解析できたMS全体の約2.6%に当たる約20万カ所のMSにおいて複数個のがんゲノムに変異があることが分かりました。31例のがん(大腸がん、子宮体がん、胃がんなど)にMS変異が極端に多く見つかり、MSIと判定できました。さらに、高頻度に変異している20個のMSマーカーを新たに同定し、既存のMSマーカーと同程度の変異頻度を持ち、MSI判定の精度も同等であることが分かりました。

本研究は、科学雑誌『Genome Research』の掲載に先立ち、オンライン版(3月24日付:日本時間3月25日)に掲載されます。

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(2020/3/25)

好中球を介した腎がん肺転移メカニズムの解明
  ~ エピゲノムを標的とした新しい治療の可能性 ~

腎がんは、画像診断技術の向上から早期診断が可能になり、罹患数が年々増加しています。転移を有する進行腎がんの症例には、分子標的治療薬も使用されるようになっていますが、その治療成績は十分ではありません。腎がんの進展・転移の分子メカニズムが解明され、新たな治療法が確立されることが課題になっています。

このような現状で、東京大学大学院医学系研究科の西田純特任研究員(研究当時)、江帾正悟准教授、宮園浩平教授らの研究グループは、腎同所性移植法を用いて進行腎がんを再現し、がん細胞の性質を調べることで、腎がん肺転移の分子メカニズムの解明を試みました。その結果、進行腎がんのがん細胞は、ケモカインを強力につくりだすことで炎症を引き起こし、活性化された好中球が肺転移の成立に重要な働きをしていることをつきとめました。また、そのケモカインの産生には、スーパーエンハンサーを介したエピゲノム制御機構が関与することを見出しました。同時に、スーパーエンハンサーの活性を減弱させるBET 阻害剤を用いることで、マウスにおいて腎がん肺転移が抑制されることを発見し、この薬剤の有用性を実証しました。

この成果に基づき、腎がんの新たな治療法が創出されることが期待されます。本研究成果は「Nature Cell Biology」オンライン版に掲載されます。

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(2020/3/24)

統合失調症治療薬(ドーパミンD2受容体阻害剤)や妄想症状の機構を解明

脳内報酬物質といわれるドーパミンの2型受容体(D2受容体)は抗精神病薬の主要な標的ですが、シナプスや行動の制御機序は不明でした。東京大学大学院医学系研究科・IRCNの飯野祐介研究員、澤田健大学院生、山口健治研究員、河西春郎教授、柳下祥講師およびIRCN・京都大学工学部情報学研究科の石井信教授らのグループは、マウスの行動実験において光による神経活動の操作・観察技術を組み合わせることで、環境情報から報酬を予測する記憶が間違っていた際に側坐核で生じるドーパミンの一過性低下をD2受容体発現細胞が検出し、間違った記憶を訂正していることを発見しました。さらにマウスの脳スライスを光操作で観察したところ、微小なドーパミン信号変化をD2受容体が検出しスパインが頭部増大を起こすことを見いだしました。この鋭敏な検出機構は覚せい剤によりドーパミン濃度がわずかに亢進すると破綻しますが、D2受容体阻害薬(抗精神病薬)により回復しました。

本研究は脳の新しい学習原理を明らかにし、統合失調症などにおける精神病症状を説明する新しいシナプス仮説を導きました。

本研究は、文部科学省科学研究費助成事業 、IRCN、日本医療研究開発機構(AMED)、JST戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援を受けて、国際科学誌「Nature(電子版)」に2020年3月18日付オンライン版で発表されます。

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(2020/3/23)

動脈硬化における炎症の新しいメカニズムを解明

東京医科歯科大学難治疾患研究所の東島佳毅研究員、東京大学アイソトープ総合センターの神吉康晴助教らは東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームらと共同で、動脈硬化におけるエピジェネティックな転写抑制機構の破綻とそれに引き続く炎症性遺伝子活性化のメカニズムを明らかにしました。この成果は、これまで分かっていた動脈硬化における血管内皮細胞の炎症反応の誘導という現象が抑制系ヒストン修飾の脱メチル化というメカニズム介して起こることを示したという点で画期的です。さらに、このメカニズムのターゲット分子であるLysine demethylase 7A (KDM7A)および6A(UTX)を遺伝学及び薬理学的に抑制することで動脈硬化を改善できることを培養細胞およびマウスを用いた実験で示しています。動脈硬化は先進国における主要な死因である心血管疾患の原因の多くを占めることから、本研究成果が新しい動脈硬化治療法の開発、ひいては心血管疾患患者の予後改善に寄与することが期待されます。

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東京大学アイソトープ総合センターホームページ プレスリリース詳細

(2020/3/9)

統合失調症における脳予測性の障害メカニズムの一端を解明

統合失調症を脳予測性の障害として説明しようとする研究が近年行われつつあります。脳予測性を反映すると考えられている指標としてミスマッチ陰性電位があり、統合失調症の患者さんではミスマッチ陰性電位が低下していることが知られています。しかし、ミスマッチ陰性電位のメカニズムとして音の繰り返しによる慣れの影響も指摘されており、統合失調症の患者さんではミスマッチ陰性電位の低下が脳予測性の障害を反映するのか、他のメカニズムを反映するのか、結論が出ていませんでした。日本学術振興会の越山太輔海外特別研究員、東京大学医学部附属病院精神神経科の切原賢治助教、笠井清登教授らの研究グループは、ミスマッチ陰性電位を計測する際に、通常用いられるオドボール課題に加えて、メニースタンダード課題を用いることで、統合失調症のミスマッチ陰性電位の低下が、脳予測性に関連する成分の障害に由来することを明らかにしました。この結果は、統合失調症におけるミスマッチ陰性電位の低下が、脳予測性の障害を反映することを示唆しており、今後のモデル動物を用いた治療法の開発に向けた研究への応用が期待されます。本研究は日本医療研究開発機構(AMED)「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」などの支援により行われ、日本時間2月19日『Schizophrenia Bulletin』(オンライン版)にて発表されます。

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(2020/2/19)

マウスが見ている世界を再現:不安定な脳活動に隠された安定な知覚

目に入ってきた外の世界の情報は脳へと伝達され、脳細胞の電気的な活動へと変換されます。その脳細胞の活動が、我々の意識に上って来ることにより、私たちは外の世界を見ることが出来ていると考えられています。しかしながら、同じ画像を見ても、脳細胞の活動の様子は毎回異なり、安定していないことが知られています。このような不安定な脳細胞の活動を使って、どのようにして脳は視覚情報を処理しているのでしょうか。人を含む動物の脳がどのように外界からの視覚情報を処理しているのかを明らかにすることは、脳科学の分野において重要な問題の一つです。また、人工知能の分野における脳を模倣したニューラルネットワークの成功に見られるように、脳の視覚情報処理の解明は、優れた人工知能アルゴリズム開発への応用が期待されます。

東京大学大学院医学系研究科統合生理学分野/東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構の大木 研一教授、吉田 盛史助教の研究チームは、様々な画像に対するマウス一次視覚野の神経細胞の活動を網羅的に記録し、その活動からマウスが見ていた画像を再現する手法を開発しました。この手法を用いた解析により、一つ一つの画像の情報はごく少数の神経細胞活動から抽出できることを明らかにしました。また、同じ画像を見ても、脳細胞の活動の様子は毎回異なり、安定していないのですが、その不安定さにも関わらず画像の情報は安定して表現されていることを明らかにしました。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」、文部科学省科学研究費助成事業などの支援を受けて行われました。本研究の成果はNature Communications誌(2月13日付けオンライン版)に掲載されます。

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(2020/2/14)

統合失調症と関連するヒトの染色体微細欠失を再現した新しいモデルマウスを作製

統合失調症は、思春期から青年期にかけて発症し、陽性症状(妄想・幻覚など)、陰性症状(感情の平板化・活動意欲の低下など)を主要な症状とする精神疾患です。このほか、知能・記憶力・注意力・実行機能などの認知機能の障害も認められ、社会的機能の低下から日常生活に支障をきたします。統合失調症はおよそ100人に1人が罹患する頻度の高い精神疾患ですが、その原因や発症に関わるメカニズムは未だ明らかになっておらず、それに基づく治療法・診断法は確立されていません。そのため、発症メカニズムの解明や治療法開発の研究に適用できる有用な動物モデルの創出が求められています。

今回、東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター動物資源学部門の饗場篤教授、齋藤遼大学院生、名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野の尾崎紀夫教授、同大大学院医学系研究科医療薬学の山田清文教授、永井拓准教授、同大医学部附属病院ゲノム医療センターの久島周病院講師、同大脳とこころの研究センターの森大輔 特任准教授らの共同研究グループは、高い統合失調症の発症リスクを伴う22q11.2欠失症候群に着目し、ゲノム編集技術を用いて、この症候群の原因である染色体の微細欠失[3.0-Mb(メガベース)の22q11.2欠失]をマウスで再現することに成功しました。この遺伝子改変マウスを解析したところ、プレパルス抑制の低下や視覚誘発電位の異常という統合失調症と関連する表現型が観察されました。

本研究により、22q11.2欠失というヒトの染色体微細欠失を再現した、新しい統合失調症モデルマウスが作製されました。このモデルマウスは、統合失調症の発症メカニズムの理解や治療法の開発に貢献することが期待されます。

本研究は、日本医療研究開発機構「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」の一環として行われました。

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(2020/2/7)

胃の前がん病変の真の起源を同定~これまでの定説を覆す

ヘリコバクター・ピロリ菌の感染などによる慢性胃炎は、正常の胃粘膜を障害し腸上皮化生と呼ばれる前がん病変を胃内に生み出し、最終的に胃がんを引き起こすものと考えられています。これまでの報告では、前がん病変である化生性細胞は、正常の胃粘膜に存在し消化酵素などを分泌する主細胞と呼ばれる特定の細胞群が、ピロリ菌などの炎症刺激によって脱分化することで生じるものと考えられてきました。しかし、主細胞が化生性細胞やがんに変化していく詳細な時間経過やメカニズムについては分かっていませんでした。今回東京大学消化器内科の畑昌宏医師、木下裕人助教(研究当時)、早河翼助教、小池和彦教授らのグループは、独自に作成した新規のマウスモデルを用い、主細胞は胃粘膜障害の過程で脱分化せずに消失し、実際には化生性細胞の起源とはなりえないことを証明しました。これまでの報告で用いられていたマウスモデルはいくつかの致命的な欠点がありましたが、早河翼助教らの新しいマウスモデルはこうした欠点を補完し、化生性細胞の発生をより精密に再現することを可能にしました。その結果、これまで主細胞が脱分化していたために生じていると思われていた数々の現象が、実は主細胞が死んでいく様を反映していたものに過ぎず、化生性細胞の真の起源は胃に元々存在する幹細胞および前駆細胞だったことが分かりました。これは、これまでの定説を真っ向から覆す驚くべき知見です。さらに、この主細胞の消失が、主細胞に選択的に発現しているGPR30という受容体を介した細胞競合というメカニズムによって生じることを明らかにしました。今回の新しい発見により、胃の前がん病変の真の起源とその発生メカニズムが明らかになったことから、今後の胃がん研究のさらなる発展と新規胃がん治療の開発に結び付く可能性があります。本研究は科研費若手研究(A)、AMEDの革新的先端開発支援事業(PRIME)、次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)などの支援を受け、岐阜大学・東京理科大学・豪州アデレード大学・米国コロンビア大学などの協力の下に行われました。 本研究成果は、米科学誌『Gastroenterology』に掲載されるのに先立ち、2月4日にオンライン版にて公開されました。

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(2020/2/5)

慣性(Inertia)が患者の薬剤選択に影響を与える
  ~ 「ナッジ」が後発医薬品促進に有効 ~

後発医薬品(ジェネリック薬)の使用は、先発医薬品に比べて低価格にもかかわらず、諸外国に比べて低率です。その要因としては、先発医薬品への高い選好(価値付け)や消費者の慣性(Inertia)という行動パターンが考えられます。Inertiaとは、消費者が以前に選択したものを引き続き選択する行動パターンのことを指し、近年の研究で様々な場面におけるInertiaの存在が明らかにされています。しかし、患者の先発/後発医薬品の選択に影響を与えているか否かの報告はこれまでありませんでした。

東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学客員研究員の伊藤佑樹(研究当時:博士課程大学院生)、経済学研究科特任研究員の原湖楠(研究当時:博士課程大学院生)、公衆衛生学の小林廉毅(教授)のグループは、大規模な後期高齢者医療広域連合の2013年9月から2014年8月までの医科・調剤レセプトの匿名データを用いて、患者の薬剤選択におけるInertiaの影響を調べました。脂質異常症の治療薬であるピタバスタチンの後発医薬品が調査期間中(2013年12月)に発売されたことに着目し、発売前後の患者の先発/後発医薬品間の選択を分析しました。

ピタバスタチンの先発医薬品は後発医薬品と比べて、自己負担額にして1日あたり3-5円程度負担が増えます。それに対して、平均的な患者は先発医薬品を後発医薬品に比して4.7円/日ほど高い選好(価値付け)をもつことが示されました。また、平均的な患者にとってInertiaの効果は3.1円/日程度の大きさであり、先発医薬品に対する患者の選好(価値付け)の約2/3の大きさであることが示されました。これらの値はそれぞれ統計学的に有意なものでした。また、シミュレーションの結果として、Inertiaを取り除く何らかの施策を実施した場合、総医療費に換算すると、施策を導入しない場合に比べて、12%の削減効果を認めました。

本研究の結果から、先発/後発医薬品の選択においてInertiaが大きな影響を持つことが示唆されました。それと共に、Inertiaを取り除くような施策、つまり行動変容を促す「ナッジ」と呼ばれる施策が有効である可能性が示唆されました。本研究成果は国際学術誌「Journal of Economic Behavior & Organization」(オンライン出版日:2020年1月21日)に掲載されました。

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(2020/1/23)

成人期発症の大脳型副腎白質ジストロフィーに対する造血幹細胞移植の臨床効果

国が定める指定難病に登録されてい神経系の難病である副腎白質ジストロフィーは、国内の患者数が400人程度と推定され、病状の分類も多彩です。そのひとつ、大脳型副腎白質ジストロフィーは、もともと小児科領域でよくみられる疾患で、小児期の大脳型(120人程度の患者数)に対しては発症早期の造血幹細胞移植が有効であることが確立されてきおり、早期に診断、治療することが重要と考えられています。一方で、成人の大脳型については、その患者数は120人程度と推定されており、比較的頻度の高い臨床病型ですが、造血幹細胞移植の報告例が少なく、その治療効果はさまざまで、成人の大脳型副腎白質ジストロフィーに対する造血幹細胞移植の治療効果は、確立されていませんでした。

そこで、成人大脳型副腎白質ジストロフィーに対する造血幹細胞移植の治療効果を明らかにするため12症例に対して移植を行い、長期間の観察に基づき、治療効果を評価しました。その治療効果は顕著で、症状の進行を抑制できることが示されました。すなわち、早期に診断して早期に造血幹細胞移植を行うことで、病状の進行を止める事が可能となります。造血幹細胞移植を行った12症例と、行うことができなかった8症例について、大脳・小脳などの病変の出現時点を起点として生存率を比較すると、造血幹細胞移植を行った症例では全員生存しており、有意に生存率が高いという結果が得られました。診療現場では、診断が遅れ、治療のタイミングを逸してしまうケースが少なくなく、本症の早期診断が大切であることを広く認識していただくことが大切であると考えられます

なお本研究は、一部、日本医療研究開発機構(AMED)「難治性疾患実用化研究事業(課題名:オミックス解析に基づく希少難治性神経疾患の病態解明)」、文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」の支援により行われ、日本時間1月14日に国際科学誌Brain Communicationsに掲載されました。

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(2020/1/15)

筋肉の神経支配に必要な25型コラーゲンの機能を解明
  ~ 先天性の脳神経発達異常の病因が明らかに ~

筋肉の動きを制御する信号は、脊髄の運動ニューロンから伸びる軸索が筋肉との間に形成するシナプス(神経筋接合部)を介して伝達されます。しかし、発生の過程で筋肉に到達した神経が、筋肉に対する直接の支配を促す分子機構は未解明でした。

東京大学大学院医学系研究科の岩坪威教授と若林朋子特任助教らのグループは、胎生期の筋肉に発現する25型コラーゲンが、筋肉の神経支配に必須であることを明らかにしました。また、受容体型チロシン脱リン酸化酵素であるPTPσ/δがその結合相手として働くことも見出しました。これまでに、眼球や瞼を動かす外眼筋を支配する運動ニューロンの先天的な発達異常を示す患者さんから、25型コラーゲン遺伝子の変異が見つかっていました。本研究では、それらの変異が25型コラーゲンとPTPσ/δとの結合、ひいては軸索との結合を障害する結果、筋肉の運動神経支配に異常を来すことを明らかにしました。

本研究により、25型コラーゲンが、その存在は長らく予想されながらも実体の不明であった筋肉由来の軸索発達促進因子である可能性が示されました。今後はさまざまな神経筋疾患の発症原理の理解や、治療的応用にもつながってゆくと期待されます。この成果は日本時間12月25日にCell Reports誌に掲載されます。

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(2019/12/25)

低〜中等度の飲酒もがん罹患のリスクを高める

世界的に、低〜中等度の飲酒によるがん罹患リスクの上昇が注目されています。しかし、日本では、低〜中等度の飲酒とがん罹患のリスクの関連に着目した研究は少なく、容量反応関係なども詳細には明らかになっていませんでした。そこで、東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室の財津將嘉助教 (Harvard T.H. Chan School of Public Health 研究員兼任)は、同教室の小林廉毅教授と、Harvard T.H. Chan School of Public HealthのIchiro Kawachi教授らとともに、独立行政法人労働者健康安全機構が保有している全国33箇所にある労災病院から登録された入院患者の病職歴データベースを用いて、新規がん63,232症例および性・年齢・診断年・病院が等しい良性疾患対照63,232症例を同定し、低〜中等度の飲酒とがん罹患のリスクの関連を多施設症例対照研究として求めました。

その結果、がん全体についてみると、飲酒をしなかった人が最もがん罹患のリスクが低く、また、飲酒した人のがん全体の罹患リスクは低〜中等度の飲酒で容量依存的に上昇し、飲酒指数が10 drink-yearの時点で(例えば1日1杯を日常的に10年間継続)オッズ比が1.05倍に上昇しました。喫煙習慣、生活習慣病、職業階層で調整しても、同様の傾向が観察されました。また、各種がんによって低〜中等度の飲酒の影響は様々でしたが、大腸がん、胃がん、乳がん、前立腺がん、食道がんなどの比較的頻度の高いがんが、本研究で観察された低〜中等度の飲酒による全体的ながん罹患リスクの上昇に関わっていることが示唆されました。

本研究により、日本では、低〜中等度の飲酒においても、がん罹患のリスクが軽度上昇する可能性が明らかになりました。現在、日本の死因の第1位はがんであり、がんを予防するため、飲酒によるがん罹患リスクの啓発活動をさらに強化する必要があると考えられます。本研究成果は、American Cancer Societyが発行する国際的医学雑誌である「Cancer」に、オンライン先行掲載されました(2019年12月9日)。

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(2019/12/9)

複数の精神疾患に共通する大脳白質の異常を発見
  ~ 統合失調症と双極性障害に共通の異常 ~

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所 精神疾患病態研究部の橋本亮太部長、東京大学医学部附属病院精神神経科の越山太輔医師(留学中)、同科の笠井清登教授(東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)らの研究グループは、認知ゲノム共同研究機構(COCORO)によるオールジャパンでの多施設共同研究体制のもと、日本全国の12の研究機関から統合失調症 696名、双極性障害 211名、自閉スペクトラム症126名、うつ病(大うつ病性障害)398名、健常者1506名の計2937名のMRI拡散強調画像データを収集し、大脳白質微小構造についての大規模解析を行いました。統合失調症においては、健常者と比較して、鉤状束、脳梁体、帯状束、脳弓のFAの低下やMD、AD、RDの増加が認められました。

次に精神疾患共通及び特異的な異常についての検討を行いました。健常者に比べ、統合失調症、双極性障害、自閉スペクトラム症では大脳白質領域のひとつである脳梁体に共通してFAの低下もしくはMD、RDの増加が見られ、特に統合失調症と双極性障害では、脳弓や帯状束のような大脳辺縁系の白質領域に共通してFAの低下もしくはMD、AD、RDの増加が見られました。一方で、健常者と比べた場合に統合失調症にのみ、鉤状束のような大脳新皮質同士をつなぐ大脳白質領域にMD、AD、RDの増加が見られることがわかりました。

しかしながら健常者とうつ病では大脳白質領域に微小構造の違いは見られませんでした。疾患同士での直接比較では、統合失調症と双極性障害との間に大脳白質領域の微小構造の違いは見られませんでした。一方で、統合失調症および双極性障害ではうつ病よりも大脳辺縁系領域でMDとRDが増加しており、これらは統合失調症および双極性障害と健常者との間の違いと同じようなパターンが見られました。以上の結果により、統合失調症と双極性障害は似通った病態生理学的特徴をもち、うつ病は健常者に近い生物学的特徴を有しているかもしれないことが本研究で新たに明らかにされました。また、自閉スペクトラム症では、脳梁体にのみFAの低下が見られたため、自閉スペクトラム症もまた、より健常者に近い生物学的特徴を有しているかもしれないことがわかりました。本研究の成果は、近年進みつつある精神疾患の客観的診断法の開発に役立つと考えられます。

本研究成果は、日本時間2019年11月29日(金)午前10時に「Molecular Psychiatry」オンライン版に掲載されました。

※詳細は下記のページをご覧下さい。
国立精神・神経医療研究センターホームページ プレスリリース詳細

(2019/12/2)

名誉教授 藤田敏郎先生 Homer W. Smith Award 受賞

2019年11月上旬にワンシントンDCで開催された米国腎臓学会(ASN)において、名誉教授の藤田敏郎先生が、ASNの最高栄誉賞であるHomer W. Smith賞を受賞されました。藤田先生はNIHに留学し、食塩と高血圧の研究を始められました。帰国後、筑波大学を経て東京大学医学部腎臓・内分泌内科教授を長く勤め、定年退職後現職(東京大学先端科学技術研究センター・フェロー)の今日に至るまでの間、一貫して食塩感受性高血圧の機序解明に取り組み、Nature Medicine誌やJ Clin Invest誌等の一流誌に数多くの研究成果を報告されてきました。Rac1による鉱質コルチコイド受容体活性化機序や視床下部-腎臓交感神経活性化によるβ受容体-NCC経路を解明し、腎生理の分野において顕著な研究業績を挙げ、また、食塩感受性高血圧における世界的第一人者としての活躍が高く評価されたことが主な受賞理由です。特筆すべきは、これらの基礎研究で得られた結果を、我が国では実施困難とされた医師主導の二重盲検比較臨床試験(EVALUATE 試験)によって証明されたことです。本賞は第一回の1964年から今回で56回目を迎え、ASNの最も伝統ある賞で、アジア人では初めての受賞です。

(2019/11/29)

キネシン分子モーターKIF3Bの遺伝子異常は統合失調症の原因となる

統合失調症は日本人の100人に1人が罹る精神疾患であるが、その生物学的な病態にはまだ不明な点が多く、それに基づいた治療薬もまだ開発の途上にある。今回、東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻の廣川信隆特任教授、アルサバンアシュワック特任研究員(研究当時)、森川桃特任研究員、田中庸介講師、武井陽介准教授(研究当時、現・筑波大教授)らの研究チームは、キネシン分子モーターKIF3Bの異常が統合失調症の分子的基盤になることを発見した。チームはまず患者さんの遺伝子データから、KIF3Bの遺伝子異常を同定した。次に、KIF3Bの発現が半分に減っているKif3bヘテロ欠損遺伝子操作マウスを作って解析してみると、記憶・学習能力の低下や聴覚驚愕応答のプレパルスによる減弱の低下という統合失調症に特有の表現型が観察された。さらに、このマウスの神経細胞ではNMDA型グルタミン酸受容体の樹状突起スパイン表面における発現量が減少し、記憶・学習の基盤となるシナプス可塑性の変化が観察された。そこで、患者さんの変異を導入したKIF3Bタンパク質と野生型のKIF3Bタンパク質をそれぞれKif3bヘテロ欠損神経細胞に導入して活性を調べたところ、確かに患者さんではKIF3Bタンパク質の機能が低下していることがわかった。本研究から、統合失調症に対する新規治療法開発の基盤となる、細胞レベルでの新しい病態が解明された。

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(2019/11/21)

肺動脈性肺高血圧症の疾患関連遺伝子ATOH8の同定

肺動脈性肺高血圧症(PAH)は厚生労働省の指定難病に認定されている病気で、さまざまな原因により心臓から肺に血液を送るための血管(肺動脈)の細い部分(肺細動脈)が異常に狭くなり、肺動脈の血圧が上昇して右心不全をきたします。PAH患者では骨形成因子(BMP)の働きに関係した遺伝子の異常が多く見つかっているので、病気の発症・進展にBMPが関与していると考えられています。しかし、その役割については完全には解明されていませんでした。

今回、東京大学大学院医学系研究科の森川真大 助教、鯉沼代造 准教授、宮園浩平 教授、三重大学の三谷義英 准教授、丸山一男 教授の研究グループは、京都大学の影山龍一郎 教授、スウェーデン ウプサラ大学のCarl-Henrik Heldin(カールヘンリク・ヘルディン)教授らとの国際共同研究で、BMPに関係する新規疾患関連遺伝子候補の網羅的解析を行った結果、これまで詳細な機能が知られていなかった転写因子ATOH8を見出しました。さらに、肺動脈血管内皮細胞のBMPからATOH8に至る信号伝達経路は、低酸素応答で中心的な役割を果たすHIF-2αの蛋白量を減らすことで低酸素に対して保護的役割を果たし、肺高血圧症の発症・進展に関わっていることを、ゼブラフィッシュ、マウス、ヒト培養細胞を用いた解析で明らかにしました。本研究の成果は、PAHの発症・進展におけるBMPの役割の解明につながるとともに、将来的な新規治療法の開発に大きく貢献することが期待されます。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金、科学研究費助成事業 新学術領域研究「細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御」、グローバルCOEプログラム「生体シグナルを基盤とする統合生命学」、などの支援を受けて行われました。

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(2019/11/13)

将来の認知症治療薬・予防薬の開発へ
認知症のプレクリニカル期・プロドローマル期を対象とした50~85歳の健常者2万人の登録を目指す、国内最大のオンライン研究への参加者募集プロジェクト
『トライアルレディコホート(J-TRC)構築研究』を10月31日より開始!

東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻・神経病理学分野、附属病院 早期・探索開発推進室(教授 岩坪 威/いわつぼ たけし)では、認知症の治療薬・予防薬を早期に実用化することを目標に、認知症のプレクリニカル期・プロドローマル期の研究への参加者を、オンライン上で募集する国内最大規模のプロジェクト、『トライアルレディコホート(J-TRC)構築研究』を10月31日より開始します。

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「J-TRC」サイトURL: https://www.j-trc.org/

(2019/11/7)

子宮移植、代理懐胎、養子縁組に対する国内の意識調査について

東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科の平田哲也医師、女性外科の大須賀穣教授らは、子宮移植、代理懐胎、養子縁組に対する国内の意識調査を行いました。ロキタンスキー症候群などの先天的に子宮を持たない女性は、自らの子宮で妊娠、出産をすることは不可能です。また、これらの女性が児を得るには、養子縁組や代理懐胎などの選択肢がありますが、代理懐胎は、多くの倫理的、社会的問題のために日本では行われていません。最近、海外では、そのような女性に対して、研究段階ですが、子宮移植という新たな方法が行われています。そして、2014年にスウェーデンのグループより、生体ドナーからの子宮移植で出産に成功したという報告が、2019年にブラジルのグループより、脳死ドナーからの子宮移植で出産に成功したという報告がありました。世界で既に10名以上のこどもが生まれています。日本でも、臨床研究に向けた指針が策定され、今後、子宮移植を臨床研究として行われる可能性があります。一方で、子宮移植は、安全性の問題、倫理的、社会的問題を内包しています。以前に20代30代の女性を対象とした意識調査で、40%以上の人が子宮移植に肯定的であったとの報告がありました。しかしながら、意識調査としては、ドナーとなる可能性のある40代以上の女性や男性の意見も反映されるべきと考えました。そこで今回、子宮移植に対する意識調査を20歳~59歳の男女を対象に行いました。

子宮性不妊の患者に対する「子宮移植」や「代理懐胎」に対する意識は、肯定的な意見が否定的な意見を上回っていました。さらに、その差は性別、年齢、不妊経験の有無、子宮移植に対する知識の程度に影響を受けていることもわかりました。また、肯定的な意見の理由で最も多かったのが「子宮移植が子宮性不妊の患者にとっての希望になること」、否定的な意見の理由で最も多かったのが、「子宮移植のための手術のリスクが高い」でした。一方で、ほとんどすべての質問において30%以上の人が「わからない」と答えています。また、子宮移植の知識のレベルが高いことで、「わからない」と答えた人が減り、子宮移植に対する肯定的意見は増えました。また同時に、否定的な意見は女性では変わりませんでしたが、男性では増えました。このことから、より広く社会的合意を得るためには、子宮移植の発展と安全性についての知識を提供し、議論を活発化させる必要があると考えられます。また、代理懐胎について肯定的な意見も少なくなく、子宮移植とともに同時に議論していく必要性も示唆されました。本研究成果は、これらの結果も踏まえて、今後の子宮移植に関する課題に向き合う早期のルール作りにつながることが期待されます。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「成育疾患克服等総合研究事業」の「生殖補助医療により出生した児の長期予後と技術の標準化に関する研究(研究開発代表者:苛原稔)」及び「生殖補助医療の技術の標準化と出生児の安全性に関する研究(研究開発代表者:苛原稔)」により実施され、日本時間10月31日に米国の科学雑誌PLOS ONEにて発表されました。

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(2019/11/1)

急性腎障害(AKI)における炎症の新しいメカニズムを解明

東京大学医学部附属病院の前川洋医師、東京大学大学院医学系研究科の稲城玲子特任教授らは、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)におけるミトコンドリアの機能異常とそれに引き続く炎症誘導のメカニズムを解明しました。この成果は、これまでわかっていたAKIにおける尿細管のミトコンドリア障害と炎症反応の誘導という二つの現象がミトコンドリアDNAによる自然免疫機構の活性化というメカニズムを介して起こることを示したという点で画期的です。さらに、このメカニズムのターゲット分子であるstimulator of interferon genes(STING)というタンパク質を遺伝学及び薬理学的に抑制することでAKIを改善できることをマウスを用いた実験でも示しています。AKIは入院患者で高い罹患率を有し、重症例では透析が必要となり死亡率を上昇させることから、本研究成果が新しいAKI治療法の開発、ひいてはAKI患者の予後改善に寄与することが期待されます。本研究成果は日本時間10月30日にCell Reports(オンライン版)にて発表されました。

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(2019/10/31)

コモン・マーモセットの大脳皮質運動野を光刺激することで腕の運動を誘発することに成功

東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻生理学講座細胞分子生理学分野の松崎政紀教授(理化学研究所脳神経科学研究センター脳機能動態学連携研究チーム チームリーダー)、蝦名鉄平助教、自治医科大学分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部の水上浩明教授、自然科学研究機構生理学研究所生体システム研究部門の南部篤教授、理化学研究所脳神経科学研究センター高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーらの研究チームは、霊長類コモン・マーモセット大脳皮質運動野の神経活動を光遺伝学の技術で操作(光刺激)することによって腕の運動を誘発できる事、また運動関連領域を網羅的に光刺激することで、異なった方向への腕の動きが運動野の中の別々の領域で表現されている事を明らかにしました。

マーモセットはヒトと似た生物学的な特徴を持っており、遺伝子改変動物を含む疾患モデルの開発が進められています。今回開発した技術によって、運動学習やリハビリの過程で起こる健常脳の機能再編や、パーキンソン病などの運動失調の異常機構への理解が進み、運動失調をもたらす精神・神経疾患に対する新たな治療方法の開発が期待できます。本研究は、日本医療研究開発機構『革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト』の一環として行われました。

本研究の成果はProceedings of National Academy of Sciences of the United States of America誌に掲載されます。

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(2019/10/23)

酸化ストレスによる統合失調症の発症メカニズムを解明
  ~ カルボニルストレスを伴う統合失調症におけるタンパク質の機能異常を発見 ~

東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任教授と理化学研究所の吉川武男チームリーダーらの共同研究グループは、カルボニルストレスを伴う統合失調症においてCRMP2タンパク質がカルボニル化修飾を受けて多量体化し、その細胞骨格の制御機能を失うことが疾患発症の分子基盤の1つである可能性を示しました。 カルボニルストレスは酸化ストレスの一種で、反応性カルボニル化合物の増加や反応性カルボニル化合物の除去機構の低下により引き起こされる代謝状態であり、統合失調症患者のおよそ2割においてカルボニルストレスが亢進していることが近年報告されています。 しかしカルボニルストレスがどのような分子メカニズムで統合失調症に関わっているのか、特に神経発達に及ぼすメカニズムはこれまで不明でした。 共同研究グループは、カルボニルストレスを伴う統合失調症の患者で変異が確認されたカルボニルストレス除去機構に関わるGLO1遺伝子に着目し、この遺伝子を破壊したiPS細胞を作製したところ、このiPS細胞から作成した神経細胞は神経突起の伸長低下を示しました。 また、このiPS細胞の中でカルボニルストレスによってカルボニル化修飾(AGE修飾)を受ける主要なタンパク質として、神経突起の伸長に関わるCRMP2を同定し、質量分析によってiPS細胞内でのCRMP2の全修飾部位を決定しました。 さらにこのカルボニル修飾を受けたCRMP2の構造をX線結晶解析などにより詳細に解析し、CRMP2の機能に重要である2量体・4量体形成部位にカルボニル化修飾が集積していることを見出しました。 さらに、カルボニル化されたCRMP2は不可逆的に多量体化してしまうために、細胞の骨格である微小管を束化する機能が失われることを明らかにしました。 今回の研究成果から、これまで不明であったカルボニルストレスを伴う統合失調症の分子病態、特に神経発達段階での新しい分子経路が明らかになり、CRMP2のカルボニル化を阻止、ないしは改善する創薬が新たな統合失調症の治療標的となる可能性が期待されます。

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(2019/10/8)

心不全患者の予後や治療応答性を高精度で予測する手法を開発

心不全は、さまざまな原因により心臓の機能が悪くなり、息切れやむくみが生じ、がんと並んで世界中の人の命を脅かす病気です。心不全の経過や治療に対する効果は非常に多様であり、治療薬が効いて心臓の機能が回復する患者がいる一方で、あらゆる治療を尽くしても心臓機能が回復せずに早い段階で心臓移植をしなければ命を救うことができない患者もいます。このような治療に対する効果や予後(病状の経過)を治療前に評価できれば、患者一人ひとりに合った適切な治療を施すことが可能になる(これを個別化医療・精密医療と言います)と考えられますが、現段階ではまだ簡便かつ正確に治療応答性(薬による効果)を予測することが難しいため、基本的に画一的な治療を施すしかありません。

東京大学医学部附属病院 循環器内科の小室一成教授、野村征太郎特任助教、候聡志特任研究員、同大大学院医学系研究科の藤田寛奈大学院生、同大先端科学技術研究センターの油谷浩幸教授らの研究グループは、これまでに、マウスを用いた心不全の病態解明研究を行い、心不全になると心臓にある心筋細胞の核の中のDNAにキズが生じ(DNA損傷と言います)、このDNA損傷の程度が心不全の病態の程度を規定している可能性を見出していました。

今回新たに、本研究グループは、ヒトの心筋細胞のDNA損傷の程度を解析する手法を開発し、58例の心不全患者(本研究では拡張型心筋症という原因不明の心筋障害により心不全となった患者を対象に解析)の心筋DNA損傷の程度を解析しました。すると、治療応答性や予後が悪い患者において、治療前の心筋DNA損傷の程度が有意に強いことがわかりました。さらに解析を進めたところ、治療前の心筋DNA損傷の程度によって、非常に高い精度で(感度・特異度ともに8割程度)治療応答性を予測できることを明らかにしました。これらの成果により、心不全患者の「治療応答性の事前予測」を可能にする手法を開発することができました。本手法の開発は長らく待たれていたところであり、また、臨床現場において診断目的で採取する心筋生検組織の検体を用いる方法であることから、患者への追加となる侵襲が存在しないことも非常に大きな利点です。さらに、心不全の治療において、近年叫ばれている患者一人ひとりに合った「個別化医療・精密医療」を実践する上での基盤的技術となると考えられます。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業「DNA損傷応答・核形態の機械学習による心不全の予後・治療応答予測モデルの構築」、ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業(先端ゲノム研究開発)「マルチオミックス連関による循環器疾患における次世代型精密医療の実現」等の支援により行われ、日本時間9月26日に米国の科学雑誌JACC: Basic to Translational Science(Article in Press)にて発表されました。

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(2019/9/26)

リポタンパク質の分泌の仕組みの解明に新たな手がかり
  ~ 小胞体膜タンパク質VMP1 の新規機能を発見 ~

脂質は水に溶けにくい性質を持っています。そのため、小腸から吸収した脂質や、肝臓で合成した脂質を全身の組織に供給するには、脂質を運搬タンパク質と結合させてリポタンパク質という水に溶けやすい状態にする必要があります。リポタンパク質は、小胞体の膜内で合成されたコレステロールや中性脂質が小胞体内腔へ離脱し、リン脂質一重層とアポリポタンパク質に取り囲まれることで形成されます。しかし、この過程の分子メカニズムには不明な点が多く残っています。

今回、東京大学大学院医学系研究科の水島昇教授らの研究グループは、マサチューセッツ州立大学のZhao Yan(チャオ・ヤン)博士、東京医科歯科大学の酒巻有里子氏、岡崎三代名誉教授らと共同で、オートファジーに必要な小胞体膜タンパク質VMP1 が、リポタンパク質の小胞体膜から内腔への離脱にも必要であることを、ゼブラフィッシュ、マウス、ヒト培養細胞を用いた解析から明らかにしました。最近、ヒトVMP1 遺伝子の一塩基多型(SNP)と血中のコレステロール値との関連が報告されていますので、本研究の成果は、リポタンパク質の形成・分泌機構の解明につながるとともに、脂質異常症などの疾患の理解に貢献することが期待されます。

本研究は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)「水島細胞内分解ダイナミクスプロジェクト」(研究総括:水島昇)、日本学術振興会 新学術領域研究「オートファジーの集学的研究」(領域代表:水島昇)の計画研究「オートファジーの生理・病態生理学的意義とその分子基盤」、および若手研究「ゼブラフィッシュを用いたオートファジー関連因子群の生理機能の解明」(研究代表:森下英晃)の支援を受けて行われました。

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(2019/9/20)

がん細胞を骨に引き寄せる有害な可溶性タンパク質の発見
  ~ がん骨転移の新たな治療法の開発に期待 ~

骨はがんが転移しやすい部位の一つです。がんが骨に転移すると、激しい骨痛や骨折、麻痺など、がん患者のQOL (生活の質)低下に直結する症状を来し、予後悪化に繋がります。近年免疫チェックポイント阻害剤の登場により、がん治療は大きな変革期を迎えようとしていますが、いまだがん骨転移の予防法・治療法は確立できていません。サイトカインRANKLは破骨細胞分化の必須因子であり、現在その中和抗体が、骨折などがん骨転移に伴う症状を抑える薬として用いられています。しかしながら、がん細胞が骨に転移するプロセス自体を阻害できる治療法は存在しません。また抗RANKL抗体は、転移していない正常な骨の破骨細胞機能も総じて阻害するため、低カルシウム血症等の副作用にも配慮することが必要です。一方、RANKLは細胞膜結合型と可溶型の二種類の形態を取ることが知られていましたが、両者の機能的な違いについてはよく分かっていませんでした。

東京大学医学系研究科 病因・病理学専攻 免疫学分野の浅野 達雄 特任研究員と高柳 広 教授、骨免疫学寄付講座 岡本 一男 特任准教授らの研究グループは、可溶型RANKLのみを欠損させた遺伝子改変マウスを作製し、膜結合型RANKLと可溶型RANKLの生体内における役割の違いについて検討しました。その結果、破骨細胞分化や免疫組織形成には膜結合型RANKLが中心に働いており、可溶型RANKLは必要ないことが判明しました。一方で、可溶型RANKLはがん細胞を骨に引き寄せることで、がん骨の転移に関与していることが明らかとなりました。本研究成果より、血中の可溶型RANKLが骨転移の発症リスクを予測できるバイオマーカーとして有用である可能性が示されました。また、可溶型RANKLを標的とすることで、従来の抗RANKL抗体療法よりも副作用の少ない骨転移治療の開発に繋がると期待されます。

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(2019/9/10)

キネシンによる軸索基部形成の時間的空間的制御機構の解明

正常な神経伝達回路を形成するためには、神経細胞の多数の突起から1本だけを軸索に分化させ、他の神経細胞の樹状突起へと接続することが必要です。軸索基部は軸索のタンパク質だけを軸索内部へと輸送させる関門として働いており、神経の成長過程において、軸索基部の形成が神経突起を軸索へと分化させる重要な1ステップであると考えられてきました。しかし、どのような時期に、どのような制御機構のもとで、どのような分子群が軸索基部を形成するのか、詳細は不明でした。このたび東京大学大学院医学系研究科の一ノ瀬聡太郎 特任研究員(研究当時)、小川覚之 助教、蒋緒光 大学院生、廣川信隆 特任教授の研究グループは、キネシンモータータンパク質KIF3複合体による神経軸索への物質輸送に着目した解析を進め、kif3bヘテロノックアウトマウス由来の培養神経細胞やKIF3複合体のリン酸化解析により軸索基部形成の時間的空間的制御機構を明らかにしました。神経軸索基部の形成に重要なリン酸化酵素と基質およびリン酸化部位を同定し、リン酸化によって神経軸索基部形成分子の輸送が制御されている仕組みを解明したことにより、これらの分子群の異常によって生じる病気の病因の解明や、軸索基部異常と関連があるてんかんや自閉症などの精神疾患の新規治療薬開発の基盤となると考えられます。

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(2019/9/4)

死亡前3か月間の訪問介護利用が高齢者の在宅死と関連
  ~ 望む場所での最期を支える環境整備を ~

世界の人口構造は高齢化が進んでいます。先進国では2050年までに4人に1人が65歳以上の高齢者となり、日本では同年に2.5人に1人が高齢者になると推計されています。それに伴い高齢化社会に備えた医療・介護サービス提供体制の整備が進んでいます。国内外の調査においては、多くの高齢者が自宅で最期を迎えることを望んでいます。また、高齢者が望む場所で療養して最期を迎えることができたときに、その家族の満足度が高いことが報告されています。ところが、日本における病死及び自然死であった65歳以上の在宅死亡割合は12.3%であり、73.4%が病院で最期を迎えています(2017年)。つまり、日本の高齢者が望む死亡場所と実際の死亡場所には大きな隔たりがあります。

自身が在宅療養を行うか否かを検討する際に、70%以上の高齢者が家族にかかる介護負担を気にかけると答えています。そこで、東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻公衆衛生学分野の小林廉毅教授と阿部計大特任研究員らは筑波大学などの研究者らと共同して、介護保険制度下で提供されている訪問介護サービスが高齢者の死亡場所にどのような影響を及ぼしているのか分析しました。統計法による承認を得て全国の介護給付費実態調査と人口動態統計死亡票等の代表性のあるリアルワールドデータを用いて分析したところ、死亡前3か月間に訪問介護サービスを利用すると在宅死の確率が高くなることが示されました。訪問介護サービスを利用しない場合に比べて、死亡前月に利用した場合は9.1%(95%信頼区間, 2.9-15.3)、死亡2か月前から利用した場合は10.5%(3.3-17.6)、死亡3か月前から利用した場合は11.4% (3.6-19.2)だけ在宅死の確率が高いことが分かりました。訪問介護サービスの利用を通して、高齢者やその介護者の身体的、精神的な負担が軽減することで、在宅療養の継続やその結果としての在宅死が可能となった可能性が推察されます。

日本の高齢者の多くが自宅での最期を望んでいるものの、実際には自宅以外の場所で最期を迎えていることを考慮すると、訪問介護サービスを利用しやすいように各自治体の環境を整え、自宅で療養し、自宅で最期を迎えたいと望む高齢者とその介護者を支援することが求められます。

本研究は2019年8月27日、国際学術誌「BMJ Open」にオンライン掲載されました。引き続き、日本で提供されている介護サービスが高齢者やその介護者にもたらす影響について研究を進め、制度の異なる他国との情報共有を進めて行く必要があります。

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(2019/8/30)

新たなヒト血液型「KANNO」の国際認定
  ~ 国立国際医療研究センターなど、日本の研究グループとして初めての登録 ~

国立国際医療研究センター・ゲノム医科学プロジェクトの徳永勝士プロジェクト長、大前陽輔特任研究員らの研究グループは、ヒトゲノム解析により、これまでに国際輸血学会に登録されている36種類の血液型に加え、37種類目の新たな血液型「KANNO(カノ)」を特定し、この度国際輸血学会の血液型命名委員会から認定を受けました。 これは日本の研究グループが特定した初めての血液型です。 この新たな血液型「KANNO」を決める血液型抗原はプリオンタンパク質というクロイツフェルト・ヤコブ病の原因となる分子であり、今回特定された血液型を決める変異はプリオン病抵抗性との関連も注目されます。

私たちの血液には非常に多くの血液型があります。 なかでも、ABO血液型とRh血液型は輸血をするうえで極めて重要な血液型であることはよく知られています。 安全で有効な移植や輸血のためには、その他の血液型も一致することが重要で、これまでに36種類の血液型が国際輸血学会によって公認されていました。

今回、国立国際医療研究センター、日本赤十字社、福島県立医科大学の共同研究チームは、日本医療研究開発機構(AMED)ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業(先端ゲノム研究開発)による支援のもと、KANNO抗原という、既知の血液型と一致しない血液を持つ人の全ゲノム解析を行うことによって、その血液型抗原とその変異を同定し、KANNOが新たな37番目の血液型であることを明らかにしました。 これは日本の研究グループが原因を特定した初めての血液型であり、この度国際輸血学会から血液型「KANNO」として認定を受けました。 その抗原は意外にもプリオンタンパク質でした。 これはクロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病の原因ともなる分子で、KANNO(–)(マイナス)型ではこのタンパクの一つのアミノ酸が変化しています。

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(2019/8/8)

全国レセプトデータにおける糖尿病診療の質指標を測定
  ~ 網膜症検査・尿検査実施割合の低さと都道府県別・施設別のばらつきが課題 ~

糖尿病が悪化したまま放置すると、失明や透析、足切断など重篤な合併症を引き起こすことがあり、糖尿病は透析導入原因の第1位、視力障害原因の第3位と報告されています。 そのため、糖尿病診療では血糖、血圧などのコントロールの他に、合併症を早期診断するために合併症検査を定期的に行うことが重要です。 これまで、一部の保険者や施設における適切な検査の実施割合は報告されてきましたが、全国における状況を調べた研究はありませんでした。

東京大学大学院 医学系研究科 糖尿病・生活習慣病予防講座の門脇孝特任教授、国立国際医療研究センター 研究所 糖尿病情報センターの杉山雄大室長などで構成される研究グループは、全国で行われた保険診療のほぼ全ての情報が含まれている大規模データ「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」を用いて、2015年度に糖尿病薬の定期処方を受けている外来患者が、糖尿病治療ガイド(日本糖尿病学会 編・著)等で推奨されている糖尿病関連の検査を受けている割合を糖尿病診療の質指標として測定しました。 また、都道府県別、日本糖尿病学会認定教育施設としての認定有無別の指標も計算し、更に施設単位の指標のばらつきを観察しました。

研究の結果、約415万人の当該患者において、血糖コントロール指標(HbA1cまたはグリコアルブミン)を測定したのは96.7%、網膜症検査を受けたのは46.5%(都道府県別範囲:37.5%−51.0%、認定有無別:44.8%(認定無し)対59.8%(認定有り))でした。 診療報酬から尿検査の施行を観測できる200床未満の病院と診療所で診療を受けた患者のうち、尿定性検査を受けたのは67.3%(都道府県別範囲:54.1%−81.9%、認定有無別:66.8%対92.8%)、尿アルブミンまたは蛋白の定量検査を受けたのは19.4%(都道府県別範囲:10.8%−31.6%、認定有無別:18.7%対54.8%)でした。 施設別指標の分布を見ると、網膜症検査、尿検査の実施割合のばらつきが特に大きく、尿定量検査は認定無しのほとんどの施設で行われていないと同時に、認定教育施設でも実施割合の低い施設が少なからずあることが判明しました。

本研究には200床以上の施設における尿検査の実施割合が反映されていないなど限界もあり、解釈の際には注意が必要です。 一方で、今回の結果を受けて、医療従事者が着実な検査実施に注意を払うことで、今後の糖尿病診療の質が向上することが期待されます。 また、今回の結果は都道府県が医療計画等を立案する際の資料になるなど、エビデンスに基づいた政策立案を推進することが考えられます。

本研究は厚生労働科学研究補助金、循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業「今後の糖尿病対策と医療提供体制の整備のための研究」(研究代表者 門脇孝)の一環で行われた研究であり、国際糖尿病連合が発行する“Diabetes Research and Clinical Practice”の電子版に掲載されました。

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(2019/8/8)

別々の3疾患に共通する原因がヒトゲノムCGG塩基の繰り返し配列の異常伸長であることを解明

神経核内封入体病は、近年、認知症を呈する神経変性疾患の一つとして注目されており、発症年齢は幼少期から高齢まで幅広く分布し、家族性の発症もあることが知られていましたが、その原因は不明でした。東京大学医学部附属病院の分子神経学講座 辻省次特任教授、脳神経内科 石浦浩之助教および東京大学大学院新領域創成科学研究科 森下真一教授らの研究グループは、発症者の全ゲノム配列のデータから、未知の繰り返し配列の異常伸長を効率良く検出できる解析プログラム(TRhist)を開発し、NBPF19 遺伝子の5’非翻訳領域に存在するCGG繰り返し配列の異常伸長が原因であることを発見しました。

そして、次の2疾患にも同様の異常伸長が認められました。
白質脳症を伴う眼咽頭型ミオパチーは、頭部MRI画像で神経核内封入体病に類似した大脳白質の異常を示し、加えて眼球の運動を司る筋肉、嚥下・発声を担う咽頭の筋肉、四肢の筋肉を侵す疾患です。解析の結果、LOC642361・NUTM2B-AS1という別の遺伝子に、同じCGG繰り返し配列の異常伸長が存在することを見いだしました。

眼咽頭遠位型ミオパチーは、眼球運動、咽頭、さらに四肢の遠位部の筋力低下が特徴的な筋疾患で、国が定める指定難病の一つである、遠位型ミオパチーに含まれる疾患です。前述の白質脳症を伴う眼咽頭型ミオパチーと筋の罹患部位の分布が非常に類似していることをヒントに解析した結果、LRP12遺伝子に、やはりCGG繰り返し配列の異常伸長変異が存在することを見いだしました。

上記の3疾患はこれまで別個の疾患と考えられていましたが、MRI所見や症状に重複する部分が存在し、原因遺伝子は異なっても、共通してCGG繰り返し配列の異常伸長が認められたことから、CGG繰り返し配列の異常伸長そのものが、その病態機序において中心的な役割を果たしていることが明らかとなりました。

本研究成果は、日本時間7月23日に国際科学誌Nature Geneticsにて発表されました。

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(2019/7/25)

肝静脈血流の速度変化(肝静脈波形)を数値化した新しい肝線維化診断法の開発

慢性肝炎によって肝臓は線維化をきたし、肝硬変・肝臓がんへと進行してしまいます。したがって慢性肝疾患においては肝線維化がどの程度進行しているかを正確に診断することが重要です。肝線維化の診断は肝生検による組織学的な評価で行うとされますが、この方法は患者の負担が大きく制約があります。最近では肝生検に代わる肝線維化評価法として、エラストグラフィを用いた肝臓の硬さを測定する機器が登場しましたが、測定のためには高額な専用機器が必要となり、本来リスクの高い慢性肝疾患患者を拾い上げるための健診施設などで普及されるには至っていません。そうした背景から、より簡便かつ正確な肝線維化評価法の登場が望まれています。

東京大学医学部附属病院 検査部の揃田陽子登録研究員、佐藤雅哉助教、矢冨裕教授、同院 消化器内科の中塚拓馬助教、中川勇人特任講師、小池和彦教授らの研究グループは、肝臓の静脈を流れる血流速度の変化(肝静脈波形)を超音波パルスドプラ法で解析し数値化したものが、肝線維化の優れた指標となることを明らかにしました。さらに、本手法はエラストグラフィと違って肝臓の脂肪沈着や炎症の影響を受けにくい可能性があることも分かりました。

本研究で開発された手法は、一般の超音波機器に標準搭載されるパルスドプラを利用した非常に簡便なものであり、健診などで肝臓の状態を評価するツールとして広く実用化される可能性があります。また、生体内で計測される波形変化を定量化する技術はこれまでによいものがなく、本研究で開発された技術は肝臓以外の様々な生体情報に対する応用も期待されます。

本研究成果は日本時間の2019年7月12日に学術誌Ultrasound in medicine and biology(オンライン版)にて発表されました。

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(2019/7/16)

リスク細分化した腎代替療法(透析・腎移植)導入率を初めて算出
  ~ 健診結果と医科レセプトを用いた約5年間の縦断分析 ~

わが国では毎年約39,000人が新規に透析導入となっており、そのうち4割の原疾患が糖尿病です(糖尿病性腎症)。現在、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議、厚生労働省は、ハイリスク者に対して受診勧奨・保健指導等を行うことで新規透析導入者を減らすことを目指す「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を、各自治体において推進しています。しかし、プログラム開始時点でどのようなリスクを持つ者が何年後に透析導入に至るかという詳細な情報は今までほとんど明らかにされていませんでした。東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻公衆衛生学分野の小林廉毅教授と杉山雄大特任研究員らは、関東の1政令市における国民健康保険被保険者の健診結果と医科レセプトを用いて、種々のリスク因子で細分化した腎代替療法(透析・腎移植)導入率を初めて算出しました。

2012年度の健診受診時39~74歳の被保険者約50,000人を最大5年間フォローアップした結果、37名が腎代替療法を導入していました(導入率0.21/1,000人年、全て透析導入)。健診で高血圧でない者が約半数いましたが、この群から腎代替療法を導入した人は皆無でした。高血圧投薬あり群、糖尿病投薬あり群、蛋白尿あり群における導入率はそれぞれ0.60/1,000人年、1.40/1,000人年、3.17/1,000人年でした。その他、高齢、男性、喫煙、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下などがリスク因子として同定されました。糖尿病性腎症病期分類3期(顕性腎症期)の者の導入率は1.18/1,000人年、糖尿病のない慢性腎臓病(CKD)重症度分類G3b(eGFR 30〜44)の者の導入率は1.23/1,000人年で、両者はほぼ同程度の率でした。

「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」ではその名のとおり糖尿病患者のみをプログラム対象者としていますが、糖尿病でない腎機能低下者にも腎代替療法導入のハイリスク者が存在することが明らかになりました。今回の研究成果は「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」において、対象者選定やプログラム評価の際の重要な資料となることが期待されます。

本研究は2019年6月26日に学術誌「Tohoku Journal of Experimental Medicine」(オンライン版)に掲載されました。

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(2019/7/1)

心臓の線維化を予防する因子オンコスタチンMを同定

心臓の線維化は収縮能の保持された心不全Heart failure with preserved ejection fraction(HFpEF)の原因になることが知られています。HFpEFの治療は現状困難であり、特に心筋組織の線維化がどのように制御されているかについてはこれまで明らかではありませんでした。

東京大学医学部附属病院 循環器内科 武田憲彦特任講師らの研究グループは、心臓に集積するマクロファージが心臓の線維化を抑制していることを明らかにしました。心不全の病態において心筋組織が低酸素状態になることに着目し、マクロファージが産生するサイトカインであるオンコスタチンMが心臓線維芽細胞の活性化を制御することを同定しました。オンコスタチンMの抗線維化作用に注目することで、今後心不全に対する新たな治療アプローチを開発できる可能性が期待されます。

本研究は、日本時間6月27日に英国科学誌Nature Communications(オンライン版)にて発表されました。

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(2019/7/1)

東京大学、国立がん研究センター研究所、コニカミノルタ、 グローバル最先端の次世代がん遺伝子パネルに関する共同研究開発を開始
  ~ ゲノム分野の医療技術開発を牽引する産学連携強化 ~

東京大学先端科学技術研究センター 油谷 浩幸教授および当時の東京大学大学院医学系研究科 間野 博行教授(現国立がん研究センター研究所 細胞情報学分野長)が中心となり開発してきた世界最先端の東大オンコパネルを基盤とし、コニカミノルタグループの米国Ambry Genetics Corporationが保有するグローバルな遺伝子診断技術の知見を融合させる共同研究開発を行い、世界最高峰の次世代包括的がん遺伝子パネル検査を開発します。

DNAパネルにおけるがん原性の体細胞遺伝子変異の対象の多さとRNAパネルにおける融合遺伝子検出解析等とに強みをもつ東大オンコパネルと、コニカミノルタ傘下で、生殖細胞系列遺伝子変異検出技術で世界をリードし、世界に先駆けて生殖細胞系列遺伝子変異を評価するRNA検査を商品化した米国Ambry Genetics Corporationの強みを掛け合わせたシナジー効果が期待されます。

開発された次世代包括的がん遺伝子パネル検査は、日本のがんゲノム情報管理センター(C-CAT)のがんゲノム情報レポジトリーの拡充に寄与します。更に、コニカミノルタがグローバルに展開・普及させることにより、世界レベルでのがんゲノム情報蓄積を図ります。これらにより、日本人特有の遺伝子変異の解明、革新的ながん治療法や診断法の開発、新薬の創出、患者の生活の質(Quality of Life: QOL)の向上や、膨張する医療費の抑制などへの貢献をめざしています。

本共同研究開発により、がん遺伝子パネル検査の高機能化を推進するとともに、ゲノム分野の医療技術開発を牽引する産学連携を強化します。

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(2019/6/7)

医学系研究科 畠山昌則 教授が紫綬褒章を受章

この度、医学系研究科病因・病理学専攻微生物学講座微生物学分野の畠山昌則教授が春の褒章で紫綬褒章を受章しました。これは医学研究の発展への貢献が評価されたことによるものです。

畠山教授は永年にわたって、医学教育ならびに分子腫瘍学・感染腫瘍学の研究に尽力し、基礎医学研究の進展と若手研究者の育成に大きく貢献されました。特に、ヘリコバクター・ピロリ感染を基盤とする胃がん発症機構に関する先駆的な研究を展開し、ピロリ菌の病原タンパク質CagAが細胞をがん化させることをマウス個体レベルで明らかにしました。細菌がウイルス同様に発がん因子を持つことを世界で初めて示した研究成果として位置付けられます。ピロリ菌CagAは菌が保有する注射針様のIV型分泌機構によって胃上皮細胞内に直接注入されます。畠山教授は、CagAが極性制御キナーゼPAR1の抑制を介して胃粘膜の上皮極性を破壊するとともに、発がん性ホスファターゼSHP2の脱制御により異常な細胞増殖シグナルを生成することで細胞がん化を促す機構を解明しました。さらに、X線結晶構造解析ならびにNMRによりCagAの三次元構造を明らかにし、CagA-PAR1相互作用ならびにCagA-SHP2相互作用の構造基盤を解明するとともに、CagAを標的とする胃がん抑制化合物の探索への道を拓きました。これらの優れた業績に対し、平成18年 JCA-Mauvernay Award、平成23年 佐川特別賞、平成26年 日本医師会医学賞、平成28年 野口英世記念医学賞などを受賞されています。

研究の詳細については、畠山研究室の下記ホームページをごらんください。
http://www.microbiol.m.u-tokyo.ac.jp/

(2019/5/31)

人工知能により患者データから肝がんの存在を予測
  ~ 患者データからがんの存在を予測するAIの開発 ~

多要因が組み合わさり発症するさまざまな“がん”に対し、単一腫瘍マーカーでの存在予測には限界があり、患者背景や臓器の炎症などの情報も統合することが望ましいと考えられます。情報技術に大きな進展をもたらしたニューラルネットワークを用いたディープラーニングの登場により近年注目される機械学習は、複数因子を組み合わせる際に関数の最適化を行い、予測能を最大化させるアルゴリズムを作成することを可能とします。

東京大学医学部附属病院 検査部の佐藤雅哉 助教、矢冨裕 教授、同院 消化器内科の建石良介 特任講師、小池和彦 教授らおよび島津製作所基盤技術研究所 AIソリューションユニット 梶原茂樹 主幹研究員らの研究グループは、ディープラーニングを含むさまざまな手法から、収集された患者データから得られる予測能を最大化する学習アルゴリズムと学習パラメーターを自動抽出するフレームワークを作成し、患者データを用いた肝がんの有無の予測精度を検討しました。

肝がんの有無の予測には、腫瘍マーカーの他、背景肝の線維化や炎症、肝炎ウィルスの有無、患者年齢などが重要であることが知られています。これらに関連する検査項目を含めた16項目の患者データを、本フレームワークを用いて統合することで、従来の腫瘍マーカーと比較して診断率が飛躍的に向上しました。

ディープラーニングは多くの分野で革新的な成果をもたらした非常に強力な学習アルゴリズムですが、その複雑さのために大きな成果を生み出すには莫大な量のサンプルが必要になります。今回1582人の患者(肝がん患者539人、非肝がん患者1043人)を対象とした肝がん予測に対しての最適アルゴリズムはディープラーニングではない、従来の手法でした。
患者を対象とする医学研究においては、同意取得の必要性や倫理的な側面への配慮から、多数の(数万人の)患者サンプルを収集することは現実的に困難です。このような状況の中で、現存するデータに対して予測能を最大化するアルゴリズムを抽出することは非常に重要です。本フレームワークは肝がんに限らず、さまざまなデータに適用が可能であり他分野への応用も期待されます。

本研究成果は日本時間の2019年5月30日に学術誌Scientific Reports(オンライン版)にて発表されました。

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(2019/5/31)

日本と韓国では管理職・専門職男性の死亡率が高い
  ~ 日本・韓国・欧州8カ国を対象とした国際共同研究で明らかに ~

欧米では一般的に管理職・専門職の死亡率が低いのに対し、日本においては1990年代後半(バブル経済崩壊後の「失われた20年」の初期)に管理職・専門職男性の自殺率を含めた死亡率が上昇したことが報告されています。この特徴的な健康格差(死亡率格差)の全体像を明らかにするため、東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻公衆衛生学分野の小林廉毅教授と田中宏和氏(研究当時:同博士課程大学院生)らはオランダのエラスムス大学医療センターのヨハン・マッケンバッハ(Johan P. Mackenbach)教授らの研究グループと国際共同研究を行い、日本と韓国および欧州8カ国における職業階層別死亡率の格差を分析しました。

欧州8カ国では全ての国で非熟練労働者(生産工程従事者・運転従事者など)の死亡率が最も高く、上級熟練労働者(管理職・専門職)の死亡率が最も低い傾向が継続して観察されました。一方で2015年の日本と韓国においては上級熟練労働者の死亡率が、農業従事者に次いで、最も高くなっていました。日本では1990年代後半、韓国では2000年代後半、それまで最も死亡率の低かった上級熟練労働者の死亡率が上昇し、他の職業階層の死亡率と傾向が逆転するという変化が観察されました。韓国では管理職・専門職男性の死亡率上昇はいわゆるリーマン・ショックに端を発した世界金融危機の時期と一致していました。なお、同じ時期に欧州各国と日本では特定の職業階層での死亡率上昇は観察されませんでした。さらに欧州においては死亡率が高い非熟練労働者の死亡率が日本と韓国では低く、特に日本で健康格差が小さいことが明らかになりました。

本研究により、日本と韓国において「管理職・専門職男性の死亡率が高い」という点が、欧州と異なる職業階層別死亡率格差の要因であることが明らかになりました。今後の展望として、日本と韓国における管理職・専門職の高い死亡率の要因の分析を進め、健康格差縮小に向けた施策につなげていきたいと考えています。

本研究は日本時間5月29日に英国の疫学・公衆衛生専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health」(オンライン版)に掲載されました。

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(2019/5/30)

ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭がんのゲノム・エピゲノム異常の全体像を解明

ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされる中咽頭がん(HPV関連中咽頭がん)は、同じウイルスを原因とする子宮頸がんよりも患者数の増加が著しい悪性腫瘍であり、比較的若年者に生じることから、その克服が大きな課題となっています。HPVと関連がない中咽頭がんと比べてがん関連遺伝子変異などゲノムの異常が少ない一方、DNAメチル化などのエピゲノムの異常が多いことが知られていますが、その全体像は明らかになっていません。

東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の安藤瑞生講師らは、米国カリフォルニア大学のJoseph Califano教授らと共同で、次世代シーケンサーを用いてHPV関連中咽頭がんのゲノムにみられる遺伝子異常、エピゲノム異常の全体像を解明しました。そして、エピゲノム異常の標的が遺伝子転写開始点にあることを世界で初めて明らかにしました。また、HPV関連中咽頭がんの患者さんの中に、DNAメチル化が高度に生じている(高DNAメチル化腫瘍)症例を見出し、この一群に特徴的な発がん経路の活性化があることも解明しました。

この成果は、HPV関連中咽頭がんの病態解明に貢献し、治療の最適化の実現に役立つものと期待されます。本研究は、文部科学省科学研究費(国際共同研究加速基金)の支援を受けて行われ、日本時間5月16日に英国科学誌Nature Communications(オンライン版)にて発表されました。

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(2019/5/20)

脳情報動態の多色HiFi記録を実現する超高感度カルシウムセンサーの開発に成功

カルシウム(Ca2+)が神経発火に伴い細胞内に流入することを生かして、蛍光Ca2+センサーを用いて脳情報を解き明かす試みが近年急速に広まっています。しかしながら、従来のCa2+センサーは、1)遅い反応動態のため発火パターンの読み取りが不十分であることと、2)蛍光の色が少なく、用途が制限されていました。特に、脳は複数の異なる神経細胞種の協調的な発火パターンにより正常機能を発揮すると考えられていますが、これを解明するための高性能多色Ca2+センサーの開発が望まれていました。

この度、東京大学大学院医学系研究科の井上昌俊 特任助教(研究当時)、竹内敦也 大学院生(研究当時)、尾藤晴彦 教授らの研究グループは、山梨大学総合研究部医学域の真仁田聡 助教、喜多村和郎 教授らと共同で生きた哺乳類脳の神経発火活動・シナプス活動を計測するための超高感度・超高速Ca2+センサーの青、緑、黄及び赤色の『XCaMP』シリーズを開発しました。その結果、マウス生体内において高頻度発火神経細胞の発火パターンの読み取り及び3種の異なる細胞種の多重計測に成功しました。この成果は、今後生きた哺乳類脳における神経活動およびそのダイナミクスの多重計測を容易にし、精神疾患や学習・記憶障害などの病態解明および治療法の開発につながるものと期待されます。本研究は日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(革新脳)」の研究開発課題「革新的プロ-ビングによる神経活動の高速3D測定と活動痕跡の長期可視化」、ならびに文部科学省新学術領域研究「脳情報動態」の支援によって実施されました。

本研究成果は、「Cell」(アメリカ東部夏時間2019年5月9日オンライン版)に掲載されました。

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(2019/5/10)

がんの発症・進展におけるヒアルロン酸の「ジキルとハイド的」役割

細胞外基質の主要構成成分であるヒアルロン酸は、組織の構造維持や水分保持などに深く関わっており、最近では、美容医療や整形外科領域でヒアルロン酸投与が行われています。今回、東京大学大学院医学系研究科の畠山昌則教授らの研究グループは、分子サイズの大きなヒアルロン酸(高分子量ヒアルロン酸)ががん抑制性の細胞内シグナル経路であるHippoシグナル経路を活性化する一方、高分子量ヒアルロン酸の分解によって生じる分子サイズの小さなヒアルロン酸(低分子量ヒアルロン酸)はHippoシグナルの不活化を介してがんの発症・進展を逆に促すことを明らかにしました。さらに、予後不良な乳がんとして知られるトリプルネガティブ乳がんでは高分子量ヒアルロン酸の分解酵素であるHYAL2が過剰発現しており、高分子量ヒアルロン酸の分解産物である低分子量ヒアルロン酸がHippoシグナルを抑制することでがんの悪性度増強に寄与することを見出しました。今後、ヒアルロン酸や HYAL2を分子標的とすることで、トリプルネガティブ乳がん等への革新的な予防・治療法開発が期待されます。同時に、本研究は若返りや美容を謳ったヒアルロン酸の安易な使用に警鐘を鳴らすものです。

本研究成果は、「Developmental Cell」(アメリカ東部夏時間2019年5月9日オンライン版)に掲載されました。

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(2019/5/10)

シナプス可塑性の最初の数分間でアクチン線維は再編される
  ~ 細胞内の微小空間でおこる分子動態を解読する新しい技術 ~

東京大学大学院医学系研究科の小橋一喜特任研究員、岡部繁男教授、京都大学工学研究科の井上康博教授らの研究グループは、細胞内の分子動態を読み出す技術である蛍光相関分光法(FCS)、ラスター走査画像相関分光法(RICS)と二光子励起の技術を組み合わせて、細胞内の微小体積からの分子動態情報を読み出す手法を開発しました。この手法により神経細胞の樹状突起スパイン(スパイン)内での分子の動きを測定することが可能になりました。スパインは記憶・学習の基盤とされているシナプス可塑性によってその性質が変化します。それに伴ってスパイン内部でアクチン線維が変化し、分子の動きも変化すると考えられてきましたが、直接的な測定は不可能でした。新技術によりスパイン内の分子動態を直接測定した所、大きな分子に限ってスパイン内での動きがアクチン線維によって抑制されていること、更にシナプス可塑性誘発直後の数分間だけ抑制が解除されることがわかりました。分子量の大きな複数の情報伝達分子でこのような抑制の解除が観察され、この現象はシナプス可塑性に伴う情報伝達分子の分布の変化にも関与していました。以上の結果は、非常に短時間だけ分子の動きが変化することが、記憶学習の基盤となるシナプス可塑性に重要な役割を持つという新しい可能性を提案するものです。

本研究成果は、「Cell Reports」4月30日オンライン版(米国東部夏時間)に掲載されました。

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(2019/5/7)

オートファジーによる小胞体分解の新規受容体を発見

マクロオートファジー(以後、オートファジー)とは、オートファゴソームが細胞質の一部を取り囲み、リソソーム(多数の分解酵素を含む細胞小器官)と融合することで分解する細胞内分解システムの一つです。従来オートファジーは非選択的な分解機構(非選択的オートファジー)と考えられてきましたが、最近になって傷ついた細胞小器官や変性たんぱく質、細胞内病原体などを選択的に識別して分解できること(選択的オートファジー)もわかってきました。また、これらの選択的に分解されるターゲットのほとんどは、オートファゴソーム膜上のたんぱく質LC3と結合する性質を持っていることも明らかにされてきています。

東京大学大学院医学系研究科の水島昇教授らの研究グループは、産業技術総合研究所創薬分子プロファイリング研究センターの夏目徹研究センター長らのグループと共同で、オートファジーによって選択的に分解される分子の同定を目的とし、LC3分子種の一つであるLC3Bに結合するたんぱく質を網羅的に探索しました。その結果、細胞小器官の一つである小胞体に存在する膜貫通たんぱく質TEX264の同定に成功しました。TEX264を欠損させた細胞ではオートファジーによる小胞体の分解(小胞体オートファジー)が顕著に抑制されたため、TEX264は小胞体オートファジーに関与する主要な受容体として機能していると考えました。さらに、TEX264に存在する長く柔軟な天然変性領域が、リボソーム(直径約20ナノメートル)により隔てられている小胞体とオートファゴソームの間を連結していることが明らかになりました。本研究成果は、オートファジーによって小胞体の品質を保つことの生理的重要性や細胞内の恒常性維持機構への関与、その破綻と疾患との関連の解明につながると考えられます。

本研究は科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)「水島細胞内分解ダイナミクスプロジェクト」(研究総括:水島昇)、日本学術振興会 新学術領域研究「オートファジーの集学的研究」(領域代表:水島昇)の計画研究「オートファジーの生理・病態生理学的意義とその分子基盤」として行われました。

本研究成果は、「Molecular Cell」(米国東部夏時間4月18日:オンライン版)に掲載されました。

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(2019/4/19)

2型糖尿病におけるインスリン抵抗性がアルツハイマー病脳のアミロイド蓄積を促進するメカニズムを解明

アルツハイマー病(AD)は老年期の認知症として最も頻度の高い疾患です。AD患者の脳に特徴的な病理変化として、アミロイドβペプチド(Aβ)からなる老人斑があり、Aβの蓄積はAD発症の原因であると考えられています。近年、2型糖尿病がAD発症のリスクとなることが明らかになっています。特に、2型糖尿病の中心的な病態であるインスリン抵抗性がADの発症を促す可能性が予測されてきました。しかし、インスリンシグナルの変化とAβの蓄積との因果関係は未解明でした。

東京大学大学院医学系研究科の岩坪威教授らの研究グループは、脳にAβの蓄積を生じるADモデルマウスを用い、高脂肪食により誘発されたインスリン抵抗性と、インスリンシグナルの鍵分子であるIRS-2の欠損に伴うインスリン抵抗性による影響を比較、解析しました。その結果、インスリンの作用低下そのものではなく、インスリン抵抗性発症の要因となる代謝ストレスが、Aβの脳内の除去速度を低下させ、結果として蓄積を促進することを示しました。また、食事制限により、脳のAβ蓄積は可逆的に抑制できることを明らかにしました。

2型糖尿病がAD発症のリスクとなることは広く知られてきましたが、本研究はその背後にあるメカニズムの一端を解明し、未だ確立していないADの治療法創出に向け、新たな標的を明らかにしました。

本研究は日本医療研究開発機構(AMED)の脳科学研究戦略推進プログラム「新機軸アミロイド仮説に基づくアルツハイマー病の包括的治療開発」の支援を受け、東京大学医学部附属病院・門脇孝特任教授、窪田直人准教授らとの共同研究により行われ、4月12日にMolecular Neurodegeneration誌に発表されました。

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(2019/4/12)

臓器透明化(CUBIC)を用いて腎臓全体の交感神経系の3次元構造を可視化し、その機能障害を解析

腎臓は血液をろ過して尿を生成することで老廃物を排出し、体内の環境を一定に保つ働きをしています。腎臓の複雑な動きを制御するために交感神経系が重要な働きを担っていると考えられてきましたが、これまで腎臓における神経系の3次元構造を把握することは困難でした。

東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科の長谷川 頌医師・南学 正臣教授らは、大学院医学系研究科 システムズ薬理学の洲﨑 悦生講師・上田 泰己教授らが開発した臓器透明化手法「CUBIC」を用いてマウスの腎臓を透明化し、3次元免疫染色を組み合わせることで腎臓全体の交感神経の構造を把握することに成功しました。

その結果、交感神経は動脈の周囲を取り巻くように走行していることが明らかとなり、交感神経が動脈の収縮を制御していることが裏付けられました。また、腎臓の虚血再灌流障害(腎臓の血流が一時的に急激に低下することによる障害:急性腎障害)後に、交感神経の機能異常が長期間にわたって遷延していることを明らかにしました。急性腎障害が慢性腎臓病に移行するメカニズムには未解明の部分が多いですが、今回見出した腎交感神経の機能異常が病態に影響している可能性もあり、今後の研究につながる成果です。

さらに研究チームは、交感神経・動脈だけでなく、腎臓の他構造(集合管・近位尿細管・糸球体)を臓器全体で可視化することにも成功しました。この臓器透明化(CUBIC)と3次元免疫染色を組み合わせた観察法は、今までにない包括的な視点を提供することで、今後の腎臓病研究において強力なツールとなることが期待されます。

本研究成果は、日本時間2019年4月9日に、国際学術誌Kidney Internationalにオンライン掲載されました。

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(2019/4/10)

日本成人における異性間性交渉未経験の割合の推移について
  ~ 出生動向基本調査の分析, 1987 – 2015年 ~

日本は、世界で最も出生率が低い国の一つである。その理由として成人における性交渉未経験の人の割合が増えていることが示唆されているものの、国民全体を代表するデータでの調査研究はこれまでのところ行われていない。

東京大学大学院医学系研究科 渋谷健司教授(研究当時)らの研究グループは、1987年から2015年の間に実施された合計7回分の出生動向基本調査(18–39歳の成人を対象、1987年の調査のみ18–34歳が対象)、サンプルサイズは11,553–17,850名 [1987–2010年]、回答率は70.0–92.5%))のデータを使用し、性別・年齢グループ別の年齢調整異性間性交渉未経験割合を算出した(異性間性交渉の定義は、異性との性交渉経験の有無に関する回答とした)。加えて、本研究グループは、2010年調査において、異性間性交渉未経験に関連する要因を同定するために、年齢調整を行い、ロジスティック回帰を用いた重回帰分析を行った。同性間性交渉経験に関する情報は利用不可能であった。

1992年から2015年の間において、18–39歳の成人における年齢調整異性間性交渉未経験の割合は、女性では21.7%から24.6%に(p値<0.001)、男性では20.0%から25.8%に増加していた(p値<0.01)。30–34歳の年齢層では、年齢調整異性間性交渉未経験の割合は、1987年から2015年の間で、女性では6.2%から11.9%へ(p値=0.4)、男性では8.8%から12.7%へ増加していた(p値=0.2)。35–39歳の年齢層では、女性ではその割合は1982年には4.0%だったのが、2015年には8.9%に増加していた(p値<0.05)。男性では有意ではないが5.5%から9.5%への上昇であった(p値=0.4)。25–39歳の男性では、無職、時短・非正規雇用、及び低収入が異性間性交渉未経験と有意に関連していた。

日本人成人における異性間性交渉未経験割合は、過去20年間の間で増加していることがわかった。30代で見ると、10人に1人が、性交渉経験が無いとの回答であった。無職、非正規・時短雇用及び低い収入が、男性では異性間性交渉経験が無いことに関連していることがわかった。異性間性交渉は、人間の生殖活動の基本であり、また性の健康や性への満足はより良く生きるために重要である。日本人成人において、性交渉未経験割合が増えていることの要因や、それがもたらしうる公衆衛生への影響、人口動態への影響については、今後さらなる研究が必要である。

本研究成果は、BMC Public Health 2019年4月8日オンライン版に掲載されました。

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(2019/4/8)

小児医療費助成の政策評価
  ~ 子どもの健康と医療費効率化の両立は可能か? ~

我が国では、公的医療保険に加え、各自治体が「小児医療費助成」により患者の医療費の自己負担を軽減する政策を行っています。しかし、一般に、過大な医療費の軽減は、コストに比して得られるベネフィットが小さい医療サービスの利用が増えることで、無駄な医療の増加につながる可能性があります(モラルハザードと呼ばれる現象です)。その解決策の1つとして、患者自己負担の仕組みを利用することが考えられます。

東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の宮脇敦士(研究当時:博士課程4年生)、同分野の小林廉毅 教授は、西日本に位置する一県の国民健康保険レセプトデータを用い、2つの方式の小児医療費助成が、医療費を中心とする医療サービスの利用に与える影響を評価しました。本研究が行われた県では、研究期間中、2つの方式の小児医療費助成が自治体ごとに別々のタイミングで導入されたため、これを「自然実験」とみなしました。2つの方式の一方は、外来・入院医療費に関しては、月あたりの自己負担額の上限が決まっており、その額を超えると、超えた分は全額自己負担額分が助成されるというものです。これは医療サービスの利用が多い(健康状態の悪い)子どもをより手厚く助成する政策と考えられます。もう一方は受診回数に関わらず、薬剤費が全額助成され、自己負担がなしとなるというものです。

解析の結果、医療費助成は、外来・入院医療費には統計学的に有意な効果は与えていなかった一方、薬剤費を16%増加させていました。また、対象となった子どもを健康状態で2群に分けて解析したところ、医療費助成による薬剤費の増加は、健康状態の良い群の子どもだけで見られました。また、この薬剤費の増加は処方確率・処方量の増加だけでなく、ジェネリック薬使用率の減少によっても説明されました。

本研究の結果から、1)自己負担を全額助成する医療費助成による医療費の増加は、主に比較的健康な子どもの医療費の増加によって説明され、2)一定額の自己負担を設けて、より医療サービスを必要としている子どもに選択的に助成を行うことで、医療費全体の増加を抑制できる可能性が示唆されました。本研究成果は学術誌「Health Policy」(2019年4月号)に掲載され、同号の巻頭言にも取り上げられました。

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(2019/4/2)

軟骨にかかる過剰な力学的負荷が変形性関節症を引き起こすメカニズムの解明

変形性関節症は高齢者の健康寿命を脅かす代表的な疾患ですが、進行を止める治療薬はいまだに存在しません。肥満、重労働、関節の外傷など、過剰な力学的負荷が関節軟骨を変性させることは古くから知られていますが、その分子メカニズムは分かっていませんでした。東京大学大学院医学系研究科外科学専攻整形外科学の張成虎大学院生(研究当時)、東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科齋藤琢准教授らのグループは、細胞や組織に対して周期的に力学的負荷をかける装置を開発し、軟骨細胞において強い負荷によって発現が変化する遺伝子をスクリーニングして、分泌タンパクGremlin-1を同定しました。Gremlin-1は強い力学的負荷によって誘導され、NF-κBシグナルの活性化を介して軟骨を変性させることなどを、細胞、マウスを用いて証明しました。また、Gremlin-1を標的にすることで変形性関節症の進行を抑制できることも示しました。過剰な力学的負荷が変形性関節症を惹起するメカニズムの全体像を証明したのはこの研究が初めてであり、同時に変形性関節症の本質的な治療法の開発に繋がる成果と考えられます。

本研究は日本医療研究開発機構(AMED)革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出」研究開発領域における研究開発課題「ストレス強度に応じた関節軟骨細胞のメカノレスポンスの変容機構の解明」(研究開発代表者:齋藤琢)の支援により行われ、日本時間3月29日に英国科学誌Nature Communications(オンライン版)にて発表されました。

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(2019/4/2)

加齢による幹細胞の機能低下を回復する方法を発見

老化による機能低下は、組織をつくる基となる幹細胞の機能低下と密接な関係があります。しかし、加齢による幹細胞の機能低下の原因は十分にはわかっていませんでした。そこで、東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 五十嵐正樹助教、三浦雅臣医師、山内敏正教授のグループは、マサチューセッツ工科大学Leonard Guarente教授との共同研究で、マウスの腸管上皮幹細胞を用いて、加齢による幹細胞の自己複製機能低下に長寿遺伝子SIRT1の活性低下が重要な役割を果たすことを見出しました。さらに、NAD+前駆体のニコチンアミドリボシド(NR)投与によりSIRT1/mTORC1経路を活性化することで、加齢に伴う幹細胞増殖能力と組織修復能力の低下を改善することを明らかにしました。今回の新しい発見により、加齢により低下する幹細胞機能を回復する有効な手段の開発につながり、健康長寿社会の実現に貢献する可能性があります。

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(2019/4/2)

慢性の脳虚血がアルツハイマー病を加速させるメカニズムを解明

東京大学医学部附属病院神経内科坂内太郎登録研究員、間野達雄助教、岩田淳講師らは、高血圧や糖尿病による動脈硬化が慢性的な脳血流低下(慢性脳低灌流)を引き起こし、高齢者のアルツハイマー病(AD)を加速するメカニズムを明らかにしました。アルツハイマー病(AD)の患者さんを対象とした観察研究から、高血圧や糖尿病などが原因の動脈硬化による慢性的な脳血流の低下(慢性脳低灌流)が、ADの症状を進行させることが知られていました。特に、慢性脳低灌流は、ADの病状に大きくかかわる物質であるアミロイドβ(Aβ)によって構成された老人斑の形成も促進することが分かっていましたが、その詳細な機構は不明でした。そこで、 ADのモデルマウスに対して持続的に脳血流の低下を生じさせる処置を施し、脳内のAβの状態がどのように変化するかを検討しました。処置を受けたマウスでは、より大きな老人斑がみられるようになりましたが、Aβの総量は変わりませんでした。Aβにはお互いにくっつきやすい性質があります。処置を行ったマウスの脳でも、もともとばらばらに存在していたAβ分子が集まって、より毒性の高い高分子量Aβオリゴマーを形成していることが判明しました。これは、慢性脳低灌流によって脳の細胞と細胞の間を流れる間質液の動きがゆっくりになった結果、よどんだ間質液の中でAβ同士がよりくっつきやすくなってしまうことが原因であると考えられます。本研究成果は、アルツハイマー病の進行を遅らせるために、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の管理をすることが有用であることを示唆していると考えられます。

本研究は東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経病理学分野、東京医科歯科大学難治疾患研究所神経病理学分野との共同研究で行われ、日本時間の2月26日に学術誌Scientific Reports(オンライン版)にて発表されました

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(2019/4/2)

日本人の軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への移行に血清カルシウム低値が関連することを同定

東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻の佐藤謙一郎大学院生および岩田淳講師は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への移行に、血液中のカルシウム値が低いことが関連することを新たに見出しました。本研究は、J-ADNI研究の血液データを中心に詳細な追加解析を、北米ADNI研究のデータと比較しつつ行ったものです。

J-ADNI研究では、ものわすれを主症状とする軽度認知障害の被験者234名の認知機能を最長3年間観察したところ、約半数の被験者が3年のうちにアルツハイマー型認知症へ移行・進行していることが確認されました。このアルツハイマー型認知症への移行に関与する因子をさまざまに検討した結果、観察開始時点での血液中のカルシウム値が正常範囲ながらも低め(血清カルシウム値が補正後9.2 mg/dL未満)であることが関連因子として見出されました。一方で北米ADNI研究データでの解析ではそのような結果は見出されませんでした。

これまでの主に欧米からの研究報告では血液中のカルシウム値と軽度認知障害の進行の関連は不透明でした。本研究は、日本人の包括的な前向き観察データから軽度認知障害と血液中のカルシウム値との関連を示したアジアでは初の報告です。

血清カルシウム低値がアルツハイマー型認知症への移行に関連する理由は現時点では不明ですが、例えば、脳内の神経細胞の活動に影響を与える、またそれに伴い脳内のアミロイドβという物質の蓄積が促進される、などの機序が想定されています。一方でビタミンD欠乏も認知機能悪化に寄与することが知られていますが、J-ADNI研究ではビタミンDは測定されておらず、潜在的なビタミンD欠乏による低カルシウムを反映した結果である可能性もあります。また軽度認知障害に伴う屋外活動量や食生活の変化といった要素による影響の可能性も考えられます。

今後の認知症の観察・介入研究においては、これまで十分には検討されてはこなかった、血清カルシウム値およびビタミンD値、またそれらにかかわる活動量や食生活などの情報も検討していく必要があると言えます。

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(2019/4/2)