新着情報
HOMEホーム新着情報 広報・プレスリリース最新情報

広報・プレスリリース最新情報(2017年(平成29年))

一般一般向け情報   学内学内向け情報   プレス広報・プレス情報

小児の難治性てんかん症候群・ウエスト症候群/レット症候群の原因遺伝子CDKL5の欠損が大脳の興奮性を異常亢進するメカニズムの一端を解明

CDKL5遺伝子の変異は、ウエスト症候群/レット症候群という小児の難治性てんかん症候群を引き起こしますが、これまでその発症機序は全く分かっていませんでした。

東京大学大学院医学系研究科発達医科学分野の田中輝幸准教授、奥田耕助博士らは、CDKL5を欠損させたCdkl5ノックアウト(KO)マウスを作製し、東京大学医科学研究所神経ネットワーク分野の小林静香助教、真鍋俊也教授、北里大学医学部解剖学教室の深谷昌弘講師、阪上洋行教授らとの共同研究によって、このマウスでは大脳の興奮性シナプスにおいて興奮性神経伝達物質を受け取る受容体の一型(GluN2BタイプNMDA型)が過剰集積することで、ニューロンの興奮性が亢進し、痙攣感受性が異常亢進することを明らかにしました。 更に過剰集積する受容体蛋白に対する阻害薬がCdkl5 KOマウスのニューロンの興奮性と痙攣感受性の亢進を効果的に抑制することを示しました。

本研究は世界で初めて、CDKL5欠損が大脳の興奮性を異常亢進するメカニズムの一端を明らかにすると共に、興奮性シナプス受容体を構成する蛋白質に特異的に作用する薬物がCDKL5変異によるてんかんの治療原理となる可能性を示し、今後の小児難治性てんかんの分子病態機序と効果的治療法の解明への重要な基盤になるものです。

本研究成果は、学術誌 Neurobiology of Disease(2017年7月6日オンライン版)に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 217KB]をご覧下さい。

(2017/7/21)

日本の都道府県別の疾病負荷研究(1990~2015年)
  ~ 停滞する健康指標と拡大する都道府県間の健康格差 ~

日本は今日、超高齢化時代を迎え健康転換が進んでいる。健康転換のペースは国内の地域によって異なるため、地域的な健康格差に対する懸念が高まっている。 東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室と米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)では、この度、1990年から2015年における日本全国並びに各47都道府県における各種健康指標の変化について分析を行った。

1990年から2015年にかけて、 平均寿命は4.2歳上昇(79.0歳から83.2歳)した。 一方、都道府県の平均寿命の格差(最も寿命が長い県と短い県の差)も2.5歳から3.1歳に拡大し、健康寿命の格差も同様2.3歳から2.7歳へと増大を見せた。 死亡率に関しては同期間で大幅な減少を達成したものの、その減少率には都道府県間で顕著な差が見られた。 さらに、国全体の平均死亡率の低下は2005年以降鈍化の傾向にある。 2015年における死亡や疾病負荷の主要なリスク要因は、不健康な食事とタバコの喫煙であった。 都道府県レベルにおいて、保健システムの主なインプット(医療費・医療人材)と保健アウトカム(死亡率・疾病負荷)には統計学的に有意な関係は認められなかった。

本研究によって、1990年以降我が国では平均寿命・健康寿命ともに伸長し、死亡率も多くの疾患で減少していることが明らかになった。 しかし、健康の増進は2005年以降鈍化傾向にあり、また、都道府県間の健康格差は拡大傾向にあることがわかった。 都道府県レベルの保健アウトカムと保健システムへのインプットには限られた関係しか認められず、医療資源(医療費や人材)の増加は、必ずしも健康指標の改善に結びついていないことが示された。 健康指標の鈍化や国内の健康格差の要因の探索は喫緊の課題である。

本研究成果は、世界に先駆けて超高齢社会に突入した我が国の主要な健康課題を都道府県レベルで評価し、それらに対応する最善の方法を見つけるための新たなデータを提示するものである。 国レベルで、持続可能な保健システムの実現に向けた具体的施策を検討するのみならず、都道府県レベルで、健康格差是正に向けた保健システムに関する研究や政策立案などに生かされることが期待される。

本研究成果は「The Lancet」7月19日(英国夏時間)オンライン版に掲載された。

※詳細はPDFこちら[PDF: 217KB]をご覧下さい。

(2017/7/21)

後頭葉の脳回形成の変化が統合失調症発症を予測することを解明

富山大学附属病院神経精神科の笹林大樹助教、同大学大学院医学薬学研究部(医学)神経精神医学講座の鈴木道雄教授らのグループは、東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の笠井清登教授、東邦大学医学部精神神経医学講座の水野雅文教授、東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野の松本和紀准教授らと共同で、「統合失調症の発症高リスク群のうち、のちに発症する群は、発症しない群と比較して、左後頭葉の脳回の過形成を示す」ことを世界で初めて明らかにしました。 この知見は、統合失調症の発症メカニズムの解明や早期診断法の開発に繋がる可能性があります。

今回の研究成果は、7月11日に米国科学誌「Biological Psychiatry」にオンライン掲載されました。

詳細は下記URL(富山大学 プレスリリース)をご覧下さい。
PDFhttps://www.u-toyama.ac.jp/outline/publicity/pdf/2017/0704.pdf

(2017/7/13)

組織透明化による全身全細胞解析基盤の構築
  ~ がん転移を1細胞ごとに見ることが可能に ~

がんは局所に生じた後に全身に転移する全身性疾患です。 がんはそれを取り巻く微小環境と互いに作用し合いながら転移していくことが古くから知られていました。 しかし、これまで、がん細胞やがんの微小環境を1個の細胞ごとに高い解像度で、かつ全身・全臓器で包括的に観察することは極めて困難でした。

このたび、東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学分野の上田泰己教授(理化学研究所生命システム研究センター 合成生物学グループ グループディレクター 兼任)、久保田晋平日本学術振興会特別研究員と病因・病理学専攻分子病理学分野の宮園浩平教授、高橋恵生特任研究員らの共同研究グループは、すでに開発していた全身・全脳イメージングと解析技術「CUBIC」の透明化試薬を、屈折率の観点からさらに発展させることにより、マウス個体の全身・全臓器に存在するがん微小転移を1細胞レベルの解像度で解析することを可能にする技術を開発しました。 この技術を応用してがん転移の時空間的解析を行うことで、がん細胞による初期の転移巣の形成機構を解明したり、抗がん剤の治療効果を臓器や個体レベルで検証したりすることが可能となりました。

本研究成果は「Cell Reports」7月5日(米国東部夏時間)オンライン版に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 1.15MB]をご覧下さい。

(2017/7/6)

小児T細胞性急性リンパ性白血病における極めて高い悪性度に関連する融合遺伝子を発見
  ~ PU.1/SPI1融合遺伝子 ~

白血病は血液中の細胞のうち、白血球になるもとの細胞から発生する悪性腫瘍です。小児期の悪性腫瘍の中では最も高頻度に発生し、T-ALLは小児白血病の約15%を占めています。薬物療法を中心とした集学的治療の強化により全体として約70%の治癒が期待できますが、小児では特に成長障害、臓器機能障害、不妊など、治療後に発生する障害(晩期障害)が大きな課題となっています。また、治療抵抗例や再発した場合の治癒は極めて難しいのが現状です。従って、分子病態に立脚した治療の最適化は、小児T-ALL患者さんの治癒率改善と重篤な副作用や晩期障害の回避に重要といえます。

東京大学医学部附属病院小児科の滝田順子准教授、関正史助教、木村俊介研究員らは京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座の小川誠司教授らと共同で、次世代シーケンサー技術を用いて小児T-ALL 123例のゲノム上にみられる遺伝子異常や融合遺伝子を含む構造変化、遺伝子発現の異常の全体像を解明しました。その結果、極めて高い悪性度に関連するSPI1融合遺伝子を約4%の例に同定しました。SPI1融合遺伝子は、T細胞の分化の停止と細胞増殖をもたらし、それが白血病化を引き起こす可能性を示しました。また遺伝子発現パターンと分子学的特徴から小児T-ALLは5群に分類されることを見出し、それぞれの群を特徴づける遺伝子発現や遺伝子異常と臨床的特性を明らかにしました。SPI1融合遺伝子を有する群は、他とは異なる特徴的な一群であることを示し、新たなT-ALLのサブグループであることを示しました。この成果は、T-ALLの予後予測、精度の高い分子診断法の開発に貢献し、治療の最適化の実現に役立つものと期待されます。

本研究は、文部科学省「次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)」の一環として行われたものであり、その成果は2017年7月4日午前0時(英国時間7月3日午後4時)にNature Geneticsのオンライン版で公開されました。

PDFリリース文書[PDF:520KB](東大病院HP掲載)

(2017/7/4)

免疫機能の個人差に関わる遺伝子カタログを作成
  ~免疫疾患の遺伝的メカニズムの新しい解析手法を開発~

理化学研究所 統合生命医科学研究センター統計解析研究チームの石垣和慶特別研究員、自己免疫疾患研究チームの高地雄太副チームリーダー、山本一彦チームリーダー、東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科の藤尾圭志講師らの共同研究チームは、免疫機能の個人差に関わる遺伝子カタログを作成し、免疫疾患の遺伝的メカニズムの新しい解析手法を開発しました。

私たちの健康状態や免疫機能の一部は、DNA配列の個人差(DNA多型)によって決まります。近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって免疫疾患の発症に関与するDNA多型(リスク多型)が多く同定されています。しかし、その遺伝的メカニズムの解明は十分に行われていません。リスク多型がどの免疫細胞において、どの遺伝子の発現量に影響しているのかを明らかにすることが、免疫疾患の遺伝的メカニズムの解明には重要です。

今回、共同研究チームは、105人の健常人から5種類の主要な免疫細胞を回収し、遺伝子発現量の個人差を次世代シーケンサーを用いて網羅的に解析することで、免疫機能の個人差に関わる遺伝子カタログ(eQTLカタログ)を作成しました。複数の免疫細胞を対象とした研究はアジア初の試みです。また、この遺伝子カタログを応用し免疫疾患の遺伝的メカニズムの全体像を評価する新規手法を開発しました。具体的な例として、関節リウマチ患者と健常人の遺伝子情報を用いて、CD4陽性T細胞において176個の遺伝子がTNFパスウェイに与える影響を予測し、それらを総合評価し一つの活性情報に集約しました。これを解析した結果、CD4陽性T細胞におけるTNFパスウェイの活性化は関節リウマチの病態で重要な役割を持つことが確認できました。

本研究で得られたeQTLカタログや解析手法は、関節リウマチなどの自己免疫疾患に加えて、花粉症・喘息・がんなどの免疫が関わる多くの疾患に適応することができます。それらは今後、遺伝的メカニズムに基づいた創薬標的の探索と治療法の開発に貢献すると期待できます。

本研究は、米国の科学雑誌『Nature Genetics』オンライン版(5月29日付け:日本時間5月30日)に掲載されました。

本研究の一部は、武田薬品工業株式会社の支援を受けて行われました。

詳細は 理化学研究所 プレスリリース をご覧ください。

(2017/5/31)

統合失調症におけるグルタミン酸系神経伝達異常の一端を解明

東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻の笠井清登教授、千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授らの研究グループは、統合失調症を主とする初発精神病群において、NMDA受容体機能を反映するMMNが有意に小さく、血漿グルタミン酸濃度が有意に高いことを見出しました。また、血漿グルタミン酸濃度が高いほどMMNが小さいという有意な相関を世界で初めて報告しました。

本研究成果は、初発精神病の一群において、NMDA受容体機能低下などのグルタミン酸系神経伝達の変化を示唆するものであり、統合失調症を主とする精神病性障害の病態解明の一助となることが期待されます。

なお本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」および日本学術振興会・科学研究費補助金の助成により行われ、国際的な学術誌Scientific Reports(オンライン版)にて日本時間5月23日(火)に掲載されました。

PDFリリース文書[PDF:252KB](東大病院HP掲載)

(2017/5/24)

オートファゴソームはPI合成酵素が濃縮されている部位から形成される
  ~ オートファゴソーム形成初期過程の分子機構の一端を解明 ~

オートファジーは細胞内の代表的な分解システムです。オートファジーが誘導されると、オートファゴソームと呼ばれる二重膜構造体が細胞質の一部を取り囲みます。オートファゴソームを形成するためには多くのオートファジー関連タンパク質群(ATGタンパク質群)が必要ですが、実際どのようにオートファゴソームが形成されるかはまだ多くは不明です。

東京大学大学院医学系研究科の水島昇教授、西村多喜助教(研究当時)らの研究グループは、ATGタンパク質群のなかでも最上流に位置するULK複合体が、まず小胞体膜に局在し、次にホスファチジルイノシトール(PI)3-キナーゼ依存的にATG9A陽性の隔離膜構造体に局在することを明らかにしました。さらに、ULK複合体が局在する小胞体膜上には、PI合成酵素が豊富に存在していることを見出しました。PIを分解させるとオートファゴソーム形成が阻害されたことから、小胞体膜上のPI合成酵素を含む部位がオートファゴソーム形成に重要であることが示唆されました。本発見は、オートファゴソーム形成初期過程の分子機構の全容解明の糸口になることが期待されます。

本研究成果は、2017年5月11日に国際科学誌「EMBO Journal」のオンライン版で公開されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 249KB]をご覧下さい。

(2017/5/23)

薬剤のみを用いて多能性幹細胞(ES細胞・iPS細胞)から三次元的に骨様組織を作製することに成功

ES細胞やiPS細胞といった多能性幹細胞から種々の細胞を作製し、培養皿上で三次元的に組織様構造体を作ることは、再生医療のみならず、組織形成過程の理解や治療用薬剤の開発に貢献すると考えられます。 作製にあたっては、安全性やコストの観点から、従来から用いられてきたウシ胎仔血清のように組成が不明なものや、遺伝子導入、組換えタンパク質を使用せずに、目的とする細胞を三次元的に誘導できることが理想的です。

東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター臨床医工学部門の大庭伸介准教授と鄭雄一教授の研究グループは、薬剤のみを誘導剤として用い、組成が不明なものを一切含まない培養系(培地や担体の組成の全てが明らかな培養系)で、マウス多能性幹細胞から三次元的な骨様組織を作製する方法を開発しました。 本研究成果は、生体内の臓器を模倣した三次元組織を培養皿上や試験管内で作製する基盤技術となると期待されます。

本研究の内容は、2017年5月12日に、米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science: AAAS)のオンライン科学雑誌「Science Advances」で発表されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 476KB]をご覧下さい。

(2017/5/15)

オートファジーはマウスの聴覚に重要である

聴覚系の感覚細胞である、蝸牛有毛細胞は一度障害されると機能的回復は困難であり、その生存・恒常性維持は聴覚機能に非常に重要です。東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の藤本千里助教、山岨達也教授らは、細胞の恒常性維持に重要であるオートファジーが、マウスの聴覚機能に重要な役割を果たすことを明らかにしました。

藤本助教らは、オートファジーに必須の分子であるautophagy-related 5(Atg5)を有毛細胞にて欠損させた遺伝子改変マウスを作製し、有毛細胞におけるオートファジー活性が聴覚機能および細胞形態に及ぼす影響を検討しました。有毛細胞におけるAtg5の欠損により、マウスは先天性の高度難聴を呈しました。また、Atg5欠損マウス有毛細胞の組織学的検討では、14日齢において聴毛の変性、および一部の細胞の脱落を認めました。8週齢においては、有毛細胞の変性がさらに進行していました。

本研究により、有毛細胞における恒常的オートファジーは聴覚機能および細胞形態の維持に重要であることが示されました。オートファジーと聴覚障害の病態形成との関連性について、さらなる研究の進展が期待されます。

なお、本研究は、日本時間5月11日に英国科学雑誌「Cell Death & Disease」にて発表されました。

PDFリリース文書[PDF:765KB](東大病院HP掲載)

(2017/5/15)

可逆的リン酸化反応による自律的な空間パターン形成

東京大学大学院医学系研究科の上田泰己教授らの研究グループは、可逆的リン酸化という細胞内で最もよく見られるタンパク質の翻訳後修飾反応を用いて、自律的な空間パターン形成が起こりうることを、コンピュータシミュレーションによって示しました。 多くの生命現象において観察される空間パターン形成のしくみを説明するために、反応拡散系と呼ばれるモデルがしばしば用いられます。 リン酸化などのタンパク質の翻訳後修飾によって空間パターンが形成されることを説明しようとするこれまでの多くの反応拡散モデルでは、パターン形成を誘導するために空間的な不均一性や自己触媒的な酵素反応メカニズムを前提としていました。

今回、研究グループはそうした前提のない、可逆的リン酸化とそれに関わる酵素・基質分子の自由拡散のみからなる系において、均一な初期条件から自律的に不均一な空間パターンが生じることを明らかにしました。 さらに、分子的な性質を記述するパラメータが、パターン全体の形を制御する仕組みも明らかにしました。 この結果は、自然界のパターン形成のメカニズム解明や、その調節を人工的に行う際に役立つと期待されます。

本研究成果は、「Cell Reports」2017年4月25日版(アメリカ東部夏時間)に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 337KB]をご覧下さい。

(2017/4/26)

慢性胆管障害が胆管癌発症を促進するメカニズムを解明

胆管癌発症の危険因子として、原発性硬化性胆管炎や肝吸虫症などの慢性胆管障害・炎症の存在が以前から知られていましたが、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。 特に肝臓の外の胆管にできる肝外胆管癌においては、適切な動物モデルが存在しないことが、病態解明を遅らせる大きな要因となっていました。 今回、東京大学医学部附属病院消化器内科の中川勇人助教、小池和彦教授らは、遺伝子改変技術によってヒトの病態を模倣した新しい肝外胆管癌マウスモデルさらにはオルガノイドモデルを樹立し、その発癌機序を解明するとともに、治療標的の候補となる分子を同定しました。

このモデルでは障害をうけた胆管上皮細胞がIL-33という分子を放出し、胆管上皮の幹細胞が存在すると考えられている胆管周囲付属腺という組織を増殖させることで胆管再生を誘導していました。 しかしながら遺伝子の異常によりこの反応が持続して胆管付属腺の増殖を抑制できなくなると、結果としてそこからの発癌を促進していることがわかりました。 IL-33の中和抗体を投与することによって発癌が抑制されたことから、IL-33が治療標的の一つとなる可能性が示唆されました。 本マウスモデルは胆管の慢性炎症からの癌化過程を模倣した世界初の画期的なモデルであり、機序解明・治療標的探索のツールとして今後大いなる発展が期待されます。 なお、本研究成果は4月24日の週(米国東部夏時間)に米国科学アカデミー紀要にて発表されます。

PDFリリース文書[PDF:332KB](東大病院HP掲載)

(2017/4/25)

心不全の新しいメカニズムを解明

千葉大学大学院医学研究院・真鍋一郎教授、自治医科大学・永井良三学長、東京大学大学院医学系研究科・藤生克仁特任助教/科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者、九州大学大学院理学研究院・岩見真吾准教授の研究グループは、心不全に係わる新しいメカニズムを解明しました。心不全や慢性腎臓病の新たな治療法に結びつくと期待され、実用化に向けて開発を進めています。

なお、本研究成果は日本時間4月11日に英国学術誌Nature Medicineにて発表されました。

PDFリリース文書[PDF:430KB](東大病院HP掲載)

(2017/4/11)

コレステロール運搬体(LDL)は薬も運ぶ

一般に悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLは、血液中で水に溶けにくい脂質(コレステロールや中性脂肪など)を体の各組織に運搬する役割を担っています。LDLコレステロール値(濃度)が高いと、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患に繋がる動脈硬化症を発症する可能性が高まることから、これらの疾患のリスクを予測するためのバイオマーカーとして、多くの健康診断で検査されています。近年、LDLには脂質のみならず、ビタミンEやビタミンKなどの一部の栄養素も分布することが明らかとなり、さまざまな生体内物質の運搬にLDLが関わることが分かってきました。一方、病気の治療に用いられる薬も、服用後は血液中を循環して体の各組織に運ばれますが、薬の運搬にLDLが関与しているのかについては、これまで注目されていませんでした。

東京大学医学部附属病院薬剤部の山本英明大学院生(当時)、高田龍平講師、山梨義英助教、鈴木洋史教授らのグループは、水に溶けにくい性質をもつ薬の多くがLDLに分布すること、そして、それらの薬の体内挙動(血液中から体の各組織への移行)は、LDLコレステロールと同様にLDL受容体によって制御されていることを見出しました。

本研究の成果は、脂質のみならず薬の運搬体としても機能するLDLの新たな側面を明らかにするとともに、LDLの血液中濃度の変動を考慮した薬の投与設計や薬物治療の最適化に繋がるものと期待されます。

なお、本研究成果は日本時間4月4日にScientific Reportsにて発表されました。

PDFリリース文書[PDF:632KB](東大病院HP掲載)

(2017/4/5)