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広報・プレスリリース最新情報(2018年(平成30年))

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遺伝情報を正確に守るための新たなDNA修復メカニズムを発見
  ~ ヒトの体が持つ「がんにならないようにする」仕組みの一端が明らかに! ~

私たちの体の中にあるほとんどの細胞は、それぞれ一つずつ細胞核を持っていて、その細胞核の中にはDNAが折りたたまれて入っています。一つの細胞核に入っている全てのDNAを繋ぎ合わせると、全長2メートルになると言われていますが、実はそのうちのほんの一部分しか「遺伝子」として利用されていません。タンパク質を合成するために遺伝情報が頻繁に読み出される領域は細胞にとって非常に重要であるため、もしその領域でDNAが切断された場合には、他の部位に比べ正確に修復することが必要と考えられてきました。しかしながら、重要な遺伝情報が記録された領域のDNAが切断された時、細胞がどのようにして広大なゲノムから重要な部分を探し出しているのか、さらにはどのようにして正確に修復しようとするのかについては、ほとんど分かっていませんでした。

今回、東京大学大学院医学系研究科の安原崇哲助教、加藤玲於奈大学院生、宮川清教授、群馬大学大学院医学系研究科の柴田淳史研究講師らの研究グループは、重要な遺伝情報を含む領域にゲノム損傷が生じると、周辺にR-loop構造と呼ばれる、DNAとRNAからなる特殊な構造が形成されること、さらにタンパク質Rad52がこの構造を認識することが、その部位のゲノム損傷を正確に修復するきっかけとなることを発見しました。広大なゲノムの中で、その領域の重要性を認識し、正確な修復経路を誘導するために、R-loop構造はいわば、目印として利用されていることが判明しました。さらに、このメカニズムがうまく機能しない場合には、不正確なDNA修復によって生じるゲノム異常が顕著に増加することも分かりました。今回明らかになったメカニズムは、ゲノム異常を原因として生じるがんなどの疾患を防ぐために細胞が保持している防御機構の一つであることが示唆されます。

本研究成果は、米国科学雑誌『Cell』の2018年10月4日号(2018年9月20日オンライン版(米国東部夏時間))に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 331KB]をご覧下さい。

(2018/9/21)

リークカリウムチャネルの睡眠時間制御への関与を発見

東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻薬理学専攻 システムズ薬理学分野の上田泰己教授(理化学研究所生命機能科学研究センター合成生物学研究チーム チームリーダー兼任、東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構 主任研究者兼任)、吉田健祐学生(研究当時:医学部6年生)、史蕭逸助教(理化学研究所 客員研究員兼任)らの研究グループは、ホジキン・ハクスレーモデルをベースにした数理モデルと網羅的遺伝子ノックアウト技術(トリプルCRISPR法)・非侵襲で並列化可能な睡眠測定法(SSS法)を用いて、リークカリウムチャネルが睡眠時間の制御において重要な役割を果たすことを示しました。

ヒトをはじめとする哺乳類で睡眠時間がどのように制御されているかはよくわかっていません。睡眠中、特に徐波睡眠中は特徴的な大脳皮質の神経細胞の発火パターン(徐波発火パターン)が観察されます。これまで本研究グループの研究によって、徐波発火パターン形成と睡眠時間の制御は一部の制御機構を共有している可能性が示唆されています。今回、本研究グループはまず、神経細胞の数理モデルを用いた徐波発火パターン形成機構の解析を行い、リークカリウムチャネルが徐波発火パターンの形成に重要な役割を果たしている可能性を明らかにしました。その後トリプルCRISPR法とSSS法を組み合わせることで、リークカリウムチャネルがカルシウム依存的な過分極と協調的に徐波発火パターン形成に寄与している可能性を明らかにし、リークカリウムチャネルファミリーに含まれる遺伝子の網羅的ノックアウト実験から、Kcnk9が睡眠時間制御に重要な役割を果たすことを明らかにしました。この結果は、徐波発火パターン形成・睡眠時間制御におけるリークカリウムチャネルの役割を示すとともに、二つの現象の裏には共通する制御機構がある可能性を再度強調するものであり、睡眠時間の制御機構の解明に大きく貢献すると期待できます。

本研究は、米国の科学雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America』(9月17日付け:日本時間9月18日)に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 864KB]をご覧下さい。

(2018/9/18)

眼科手技を模擬した眼科手術シミュレータの開発
  ~ マイクロフックを用いた緑内障手術用眼球モデルの開発に成功 ~

名古屋大学大学院工学研究科の新井史人教授、小俣誠二特任助教の研究グループは、東京大学大学院医学系研究科の相原一教授の研究グループと東京大学大学院工学系研究科の光石衛教授の研究グループとの共同研究により、科学技術振興機構(JST)の原田香奈子(はらだかなこ)ImPACTプログラム・マネージャーのプログラムの研究成果として、人間そっくりな眼科手術シミュレータに搭載可能な緑内障手術用眼球モデルを、この度、開発しました。近年、医学教育の効率化や難手術の効果的訓練が求められており、我々は、以前より精巧な手術シミュレータを開発してきました。一方、より侵襲性の低い緑内障手術用の治療器具が開発されているにもかかわらず、練習用の模擬眼球が十分に開発されておらず、医師が基礎学習や術前訓練を十分に行うことができませんでした。本研究では、上記の課題を踏まえ、緑内障手術に必要な前眼部構造を形成することにより、近年の低侵襲緑内障手術に対応した眼科手術シミュレータを開発することに成功しました。これにより、従来では行うことのできなかった手技訓練を行うことが可能になりました。

この研究は、平成27年度から始まった内閣府ImPACTプロジェクト「バイオニックヒューマノイドが拓く新産業革命」の支援の下で行われたものです。

PDF名古屋大学 プレスリリース

(2018/9/18)

分子モーターたんぱく質KIF26Aによる痛みの体感短縮機構の解明

我々のあらゆる細胞の中には、微小管の線維に沿って細胞の中心と周縁を結ぶ物質輸送のシステムが張りめぐらされ、45種類以上のキネシン分子モーターが、さまざまな種類の積荷複合体を秩序だって輸送している。一方、それぞれの細胞の状態は「細胞内シグナル伝達」によってグローバルに規定されている。また細胞内のカルシウムを速やかに排出して神経細胞の興奮を収束させる「細胞膜カルシウムポンプ」は、活性型FAKによるリン酸化によってその機能が阻害される。これまで分子モーターは「シグナル伝達」の手足となるものと信じられてきたが、ここ数年の本グループの研究により、分子モーターがシグナル伝達分子を運び分けることによって、細胞内シグナルをさまざまに制御していることが明らかになりつつある。

東京大学大学院医学系研究科 寄付講座 分子構造・動態・病態学の廣川信隆特任教授、細胞構築学分野の田中庸介講師、分子構造・動態・病態学の王力特任研究員(研究当時)らは今回、KIF26A分子モーターがFAKを末梢感覚ニューロンの深部の微小管につなぎとめることで細胞外基質からインテグリンを介したFAKの活性化を阻害し、神経細胞からのカルシウムの排出を促進して、末梢神経細胞の興奮を早く鎮静化させる作用を明らかにした。まずKif26a遺伝子欠損マウスは、ごく軽く尾をつまんだだけで数分間にわたって疼痛反応が遷延していた。そこで末梢感覚ニューロンの性質を調べると、カプサイシンあるいは電気刺激によってニューロンが一度興奮すると、その刺激を取り去っても数分間にわたり細胞内カルシウム上昇が続き、痛みが遷延していくことがわかった。一方、超解像度顕微鏡の観察により、KIF26AがFAKを微小管につなぎとめており、KIF26AがないとFAKが微小管から外れて細胞周辺部に出てきてしまうことがわかった。このことによってノックアウトマウスではFAKが細胞膜直下のインテグリン・SFK複合体に結合しやすくなり、FAKシグナル伝達が異常に活性化された結果としてPMCAによる細胞内からのカルシウム排出が妨げられていたことがわかった。このカルシウム排出と疼痛の遷延は両方とも、SFK阻害剤であるPP2を投与することで、細胞レベルでも個体レベルでも実際に治療できることがわかった。

本研究はKIF26A分子モーターによる細胞内シグナル伝達の新しい制御機構を発見したものであり、これらの成果により遷延性の疼痛、がん等の新規治療法の開発に道を開くものである。

本研究の成果はCell Reports(米国東部夏時間9月11日オンライン版)に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 746KB]をご覧下さい。

(2018/9/12)

パーキンソン病 病因タンパク質LRRK2の関わる新規ストレス応答機構の発見

パーキンソン病は主に高齢者に発症し、運動の障害をきたす代表的な神経変性疾患ですが、αシヌクレインなどの病因タンパク質が特定の神経細胞に蓄積し、細胞死に至る原因は明らかになっていません。パーキンソン病の一部には遺伝性を示す例があり、代表的な病因遺伝子の1つとしてLRRK2が知られています。従ってLRRK2の生体における機能を明らかにすることは、パーキンソン病の発症の仕組みを解明する鍵になると考えられます。今回、東京大学大学院医学系研究科の江口智也大学院生(研究当時)、桑原知樹特任助教、岩坪威教授、医学部の櫻井まりあ研究生らの研究グループは、LRRK2が細胞内のタンパク質などの分解に関わる小器官であるリソソームに対するストレスに応答して、その恒常性を維持する働きを持つことを発見しました。その仕組みとして、LRRK2がストレスを受けて肥大化したリソソームの膜上に移行し、Rabと呼ばれるタンパク質群をリン酸化して膜上にとどめることにより、過積載状態になったリソソームの形態や機能を調節することを示しました。この発見は、リソソームがストレスに応答する新たな機構を提唱するものであると同時に、病因タンパク質の細胞内での分解障害や細胞外への放出などの、パーキンソン病の病態メカニズムの理解と治療法の開発にもつながるものと期待されます。

なお、本研究は順天堂大学医学部・神経生物学・形態学・小池正人教授、東北大学大学院生命科学研究科・膜輸送機構解析分野・福田光則教授、大阪大学大学院医学系研究科・細胞生物学・原田彰宏教授との共同研究で行われました。

本研究成果は、米国科学アカデミー紀要 オンライン版に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 475KB]をご覧下さい。

(2018/9/11)

骨芽細胞のRANKLが骨形成を促進する創薬標的になることを発見
  ~ 骨粗鬆症の新規治療薬開発に繋がる可能性も ~

骨細胞に発現するRANKLは、破骨細胞に発現するRANKを刺激し、破骨細胞の成熟と骨吸収(老朽化した骨の除去)の促進を行うリガンド分子として知られ、RANKLに対する中和抗体は骨吸収を抑制する骨粗鬆症治療薬として臨床応用されています。一方、骨芽細胞に発現するRANKLに関しては、これまでその生理機能が不明瞭のままとなっていました。今回、東京大学医学部附属病院の本間雅講師らを中心とし、東京医科歯科大学など5大学による共同研究グループは、骨芽細胞に発現するRANKLが、破骨細胞から膜小胞の形で放出されるRANKを認識する受容体として機能しており、骨芽細胞分化の促進および骨形成の上昇に寄与していることを、RANKL遺伝子の点変異マウスを用いた解析などから明らかにしました。骨芽細胞に発現するRANKLは、骨形成を促進するための創薬標的になり得ると考えられ、骨粗鬆症新規治療薬の開発に繋がるものと期待されます。
本研究成果は、日本時間9月6日にNatureにて発表されました。

PDFリリース文書[PDF:380KB](東大病院HP掲載)

(2018/9/7)

予防医学センターと臨床研究支援センターP1 ユニットが機能を強化し新たなスタート

この度、東京大学医学部附属病院の予防医学センターと臨床研究支援センター P1(Phase1)ユニット(以下、P1ユニット)が、今年1月に開院した新しい入院棟Bの15階(予防医学センター)、12階(P1ユニット)に移転し、9月3日より新たなスタートを切りました。予防医学センターでは、先制医療を推進し受診者枠を大幅に増やすとともに、全基本検査と可能な限りのオプション検査を1フロア内に集約することで、人間ドックのために過ごす豊かな時間をスムーズに提供できるようになりました。P1ユニットでは、ベッド数が1病室13床から、4病室30床(15床室が1室、5床室が3室)となり、複数試験の同時期実施や、患者対象試験、少人数から大人数までの多様な試験への柔軟な対応が可能となりました。

PDFリリース文書[PDF:320KB](東大病院HP掲載)

(2018/9/04)

離れた脳領域の神経活動の大規模同時計測に成功

東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻生理学講座細胞分子生理学分野の寺田晋一郎特任研究員、松崎政紀教授、自然科学研究機構生理学研究所の小林憲太准教授、埼玉大学の中井淳一教授、大倉正道准教授らの共同研究チームは、顕微鏡の観察位置を高速に移動させる小型光学装置を開発することで、マウス大脳皮質の異なった領野よりほぼ同時かつ大規模な神経細胞活動の計測に成功しました。

脳の複雑な情報処理機構を明らかにするため、近年日・米・欧において脳機能の統合的理解を目指すプロジェクトがそれぞれ進行中ですが、詳細な脳活動の計測手法の開発はプロジェクト遂行において重要な位置づけにされています。本研究成果は、複数の領野における神経活動計測を簡便な機構によって実現するものであり、今後幅広く脳機能研究において用いられ、分野の発展に貢献することが期待されます。

本研究は、日本学術振興会特別研究員奨励費、文部科学省科学研究費助成事業、JST CREST『脳神経回路の形成・動作原理の解明と制御技術の創出』及び日本医療研究開発機構(AMED)『革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト』の一環として行われました。

本研究の成果はNature Communications誌(9月3日オンライン版)に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 661KB]をご覧下さい。

(2018/9/4)

運動学習における「課題の成功率」と「運動の安定性」
  ~ 視床から運動野への2種類のシグナルを発見 ~

東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 生理学講座 細胞分子生理学分野の田中康代特任助教、田中康裕助教、松崎政紀教授らのグループは、自然科学研究機構 生理学研究所 大脳神経回路研究部門の川口泰雄教授との共同研究により、光子顕微鏡によるカルシウムイメージング法を用いてマウス大脳皮質運動野に投射する視床皮質軸索のシナプス前部(ブトン)の神経活動を計測しました。マウスが新しい道具を使って運動課題を学習する際の計測を通して、視床から運動野へ送られるシグナルが2種類あり、互いに異なる時間変化(ダイナミクス)を示すことを明らかにしました。これら2種類のシグナルは「運動課題の成功率」あるいは「運動の安定性」と、それぞれ関連していました。また、シグナルは大脳皮質のどの部位に入力するかによってダイナミクスが異なり、それぞれが大脳基底核あるいは小脳に強い影響を受けることがわかりました。その一方で、どちらのシグナルを作り出すにも大脳基底核と小脳の両方の活動が必要であることも見出されました。本研究成果は、脳領域間ネットワークの視点から運動学習や運動制御のメカニズムを解明するという点で非常に重要であり、運動疾患の病態理解に貢献すると期待されます。

本研究は、JST戦略的創造研究推進事業(CREST)、文部科学省科学研究費助成事業、日本医療研究開発機構(AMED)、コニカミノルタ科学技術振興財団、武田科学振興財団の支援を受けて行われ、成果は雑誌Neuron(ニューロン)の電子速報版に日本時間2018年8月31日に掲載されました。

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(2018/9/3)

世界初のIntelligent Image-Activated Cell Sorterを開発
  ~ 細胞画像の深層学習により高速細胞選抜を実現 ~

ImPACTプログラム「セレンディピティの計画的創出」の合田圭介プログラムマネージャー(東京大学理学系研究科化学専攻教授)が率いる研究グループは、細胞の高速イメージングと深層学習を用いた画像解析で細胞を高速に識別し、その解析結果に応じて所望の細胞を分取する基盤技術「Intelligent Image-Activated Cell Sorter」の開発に世界で初めて成功しました。さらに本技術を用いて、微生物や血液細胞をその形状や内部構造を指標として分取する原理実証を行い、本技術の有用性や汎用性が確認されました。この快挙は、超高速蛍光イメージング技術、10ギガビットイーサーネットによる高速データ処理システム 、マイクロ流体技術を活用した高速分取技術や細胞制御技術など、複数分野にまたがる異分野融合での大規模な共同研究によって達成されました。本研究成果は、2018年8月27日(米国時間)に米科学誌「Cell」のオンライン版で公開されました。

本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のうち、合田圭介プログラムマネージャーの研究開発プログラム「セレンディピティの計画的創出」で実施されました。

詳細は理学系研究科ホームぺージ プレスリリースをご覧下さい。

【発表者】
 合田 圭介(科学技術振興機構 プログラムマネージャー/理学系研究科化学専攻 教授)
 新田 尚(科学技術振興機構 プログラムマネージャー補佐/理学系研究科化学専攻 客員研究員)
 上村 想太郎(理学系研究科生物科学専攻 教授)
 矢冨 裕(医学系研究科内科学専攻/医学部附属病院検査部 教授)

(2018/8/29)

レム睡眠に必須な遺伝子を発見
  ~ 睡眠はどこまで削れるか ~

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター合成生物学研究チームの上田泰己チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教授)、丹羽康貴基礎科学特別研究員(研究当時)、神田元紀研究員、山田陸裕上級研究員らの国際共同研究グループは、レム睡眠に必須なニつの遺伝子を発見し、レム睡眠がほぼなくなっても生存するマウスの作製に初めて成功しました。

本研究成果は、レム睡眠の誘導や睡眠覚醒における神経伝達物質アセチルコリンの役割の理解と、その異常により引き起こされる睡眠障害の病態解明や治療法の開発に貢献すると期待できます。

レム睡眠は、身体は寝ているのに脳は起きているという、覚醒とノンレム睡眠の中間の状態と考えられています。アセチルコリンはレム睡眠を誘導する分子として知られていますが、本当にレム睡眠に不可欠なものであるかはこれまで不明でした。今回、国際共同研究グループは、脳・神経系49部位のマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析、新しいマウス遺伝学ツール「tTR」の開発、トリプルCRISPR法などの個体レベルの遺伝学的手法を駆使することで、アセチルコリンの受容体遺伝子であるChrm1とChrm3が睡眠量の制御に重要な働きをしていることを明らかにしました。特に、その両方の遺伝子を同時に欠失させたマウスでは、レム睡眠がほとんど検出されないことを発見しました。

本研究は、米国のオンライン科学雑誌『Cell Reports』(8月28日付け:日本時間8月29日)に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 870KB]をご覧下さい。

(2018/8/29)

分子モータータンパク質KIF1Bβによるニューロンの生存・再生機構の解明

われわれのあらゆる細胞の中には、微小管の線維に沿って細胞の中心と周縁を結ぶ物質輸送のシステムが張りめぐらされ、45種類以上のキネシン分子モーターが、さまざまな種類の積荷複合体を秩序だって輸送している。ことに神経細胞(ニューロン)は軸索という長い突起を持つが、軸索の中ではほとんどタンパク質は合成されないので、その中で必要な物質は分子モーターによる「軸索輸送」によって供給されている。一方、それぞれの細胞の状態は「細胞内シグナル伝達」によってグローバルに規定されており、ことに細胞表面に提示されている「レセプター型チロシンキナーゼ」と呼ばれる受容体群は、おのおのの受容体に特異的な成長因子群(growth factors)を結合して細胞内のMAPK/PI3Kカスケード等の「シグナル伝達」のトリガーとなり、これが細胞の生存や再生を促進する。これらのシグナル伝達が十分でないと細胞は死んでしまうが、一部のがんにおいては、逆にこれらのシグナル伝達が異常に亢進したために細胞の増殖が止まらなくなっている。これまで分子モーターは「シグナル伝達」の手足となり細胞機能を直接的に調節する分子群と信じられてきたが、ここ数年の本研究グループの研究により、分子モーターが逆に、レセプター型チロシンキナーゼ等のシグナル伝達分子を細胞内の必要な位置に配置していくことが明らかとなってきており、細胞内シグナル伝達を空間的時間的に調節する新しいパラダイムとして脚光を浴びている。

東京大学大学院医学系研究科 寄付講座 分子構造・動態・病態学の廣川信隆特任教授、細胞構築学分野の田中庸介講師、分子構造・動態・病態学の徐方特任研究員(研究当時)らは今回、KIF1Bβ分子モーターがレセプター型チロシンキナーゼの一つIGF1Rを軸索輸送し、IGFシグナル伝達を通してニューロンの生存や再生に必須な役割を果たしていることを発見した。研究チームはマウスにおける実験的なKif1b遺伝子欠損ならびに、神経難病であるシャルコー・マリー・トゥース病の患者家系におけるKIF1Bβタンパク質の新しい遺伝的変異によってIGF1Rの軸索輸送が低下し、IGFシグナル伝達によるニューロンの軸索伸長過程と生存が障害を受けていたことから、KIF1Bβのニューロンの生存・再生における重要性を裏付ける証拠を得た。

この研究は、分子モーターによる細胞内シグナル伝達の新しい動的制御機構を同定するとともに、IGFシグナル伝達が関与する種々の神経難病、アルツハイマー病、パーキンソン病、がん等の新規治療法の開発に道を開くものである。

本研究成果は、Journal of Cell Biology 8月20日オンライン版(米国東部夏時間)に掲載された。

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(2018/8/24)

歯科医による口腔ケアが癌手術後の肺炎発症率と死亡率を減少

癌手術直後は体力が低下し、一時的に肺炎などにかかりやすくなります。肺炎が重症化すると死に至ることもあります。術後肺炎の発症の原因の一つとして、口腔内や咽頭に常在する細菌を含む唾液を気管内に誤嚥してしまうことがあります。歯科医が手術前に口腔ケアを実施することにより、口腔内の清潔を保ち、唾液中の細菌量を減らすことにより、術後肺炎の発症を低減できる可能性が、理論的には示唆されてきました。しかし、大規模な臨床データを用いてその効果を実証した研究はこれまでありませんでした。

東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学教室の石丸美穂(博士課程大学院生)、康永秀生(教授)らの研究グループは、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、歯科医による手術前口腔ケアが癌手術後患者の術後肺炎発症率や死亡率を減少させることを明らかにしました。

2012年から2015年の間に頭頸部、食道、胃、結腸直腸、肺、または肝臓癌の切除手術を受けた50万9,179人の患者のうち、8万1,632人(16.0%)が歯科医による術前口腔ケアを受けていました。歯科医による術前口腔ケアを受けなかった患者群と比較して、歯科医による術前口腔ケアを受けた患者群では、術後肺炎の発症率が3.8%から3.3%に低下し、手術後30日以内の死亡率は0.42%から0.30%に低下していました。

本研究成果は、実際の医療現場における歯科医による術前口腔ケアの有用性について、医療従事者・患者の双方にとって重要な情報の一つとなることが期待されます。

本研究は、厚生労働科学研究費補助金(厚生科研費)、科学研究費助成事業の助成のもとに行われ、研究の成果は英国の国際学術誌であるBritish Journal of Surgery誌(2018年8月8日オンライン版)に掲載されました。

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(2018/8/24)

水溶性化合物による組織透明化の化学
  ~ 包括的ケミカルプロファイリングに基づく化学的原理の体系化 ~

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター合成生物学チームの上田泰己チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教授)、新潟大学脳研究所システム脳病態学分野の田井中一貴特任教授、東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学の村上達哉日本学術振興会特別研究員らの共同研究グループは、水溶性化合物を用いた組織透明化の化学的原理の体系化に向けて、求められる透明化パラメータ(脱脂・脱色・屈折率調整・脱灰)の包括的なプロファイリングに基づいた合理的手法を開発しました。

本研究成果により、ヒト臓器全細胞解析に向けて、従来の偶発的発見に依存した透明化試薬の開発戦略から、化学的原理に基づく合理的な開発戦略へのパラダイムシフトが期待できます。

今回、共同研究グループは、それぞれのパラメータに対して約1,600種類の水溶性化合物の「包括的なケミカルプロファイリング」を実施しました。その結果、①脱脂には塩を含まないオクタノール/水分配係数(logP)の高いアミン(脂溶性アミンおよびアミノアルコールなど)が効果的であること、②脱色にはN-アルキルイミダゾールが効果的であること、③屈折率調整には芳香族アミドが効果的であること、④脱灰にはリン酸カルシウムのリン酸イオンのプロトン化(水素付加)が重要であることを見いだしました。さらに、各パラメータにおいて最適化されたケミカルカクテルを統合した一連の新しい「CUBIC」プロトコール(手順)を開発することで、マウスの各種臓器および骨を含むマウス全身、ヒト組織を含む大きな霊長類サンプルの高度な透明化に成功しました。

本研究は、米国の科学雑誌『Cell Reports』オンライン版(8月21日付け:日本時間8月22日)に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 1.16MB]をご覧下さい。

(2018/8/22)

パーキンソン病の新たな治療薬候補を同定
  ~ 悪性黒色腫の薬dabrafenibの新たな可能性 ~

パーキンソン病は、世界で最も多い運動症状を呈する脳の病気であり、進行を抑制する根本的な治療法がまだ見つかっていない神経難病です。今回、東京大学大学院医学系研究科神経内科学の戸田達史教授らは、悪性黒色腫に対する薬として承認されているダブラフェニブが、パーキンソン病の進行を抑制する可能性を持つことを見出しました。戸田教授らは、大阪大学の岡田随象教授が開発した薬剤データベースなどを利用した解析を用いて、パーキンソン病の治療薬候補を同定しました。そのうちの1つであるダブラフェニブが、培養細胞やマウスのパーキンソン病モデルにおいて実際に神経保護効果を示すことを世界で初めて証明しました。この成果により、パーキンソン病の進行を抑制する研究が進むことが期待されます。また、この薬剤スクリーニング手法は、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症などの他の神経難病のみならず、糖尿病や高血圧症といった様々な疾患で有用な可能性があります。

PDFリリース文書[PDF:488KB](東大病院HP掲載)

(2018/8/17)

ヒト全遺伝子を対象とした網羅的探索による新規オートファジー遺伝子の発見
  ~ 効率的なゲノム編集技術 CRISPR(クリスパー)法を用いたスクリーニング ~

マクロオートファジー(以後、オートファジー)は、オートファゴソームという膜構造体によって担われる細胞内分解システムです。細胞質の一部がオートファゴソームによって取り囲まれ、リソソームと融合することで分解されます。オートファゴソーム形成は数多くのオートファジー関連遺伝子が必要です。今回、東京大学大学院医学系研究科の水島昇教授らの研究グループは、同研究科の間野博行教授(現国立がん研究センター研究所)と同大学院理学系研究科の濡木理教授らのグループと共同で、ヒト全遺伝子を対象としたオートファジー関連遺伝子の網羅的スクリーニングを実施し新たなオートファジー関連遺伝子TMEM41Bを発見しました。TMEM41Bを欠損させた細胞ではオートファゴソームの形成がほぼ全く起こりませんでした。また、TMEM41Bは出芽酵母には存在しないため、本発見を契機として哺乳類オートファジーの分子機構がさらに明らかにされることも期待されます。

本研究は国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業ERATO「水島細胞内分解ダイナミクスプロジェクト」及び日本学術振興会 新学術領域研究「オートファジーの集学的研究」(領域代表:水島昇)の計画研究「オートファジーの生理・病態生理学的意義とその分子基盤」として行われました。

本研究成果は、「「The Journal of Cell Biology」8月9日(米国東部夏時間)オンライン版に掲載されました。

※詳細はPDFこちら[PDF: 417KB]をご覧下さい。

(2018/8/14)

ミクログリアが小脳神経回路の生後発達に不可欠であることを発見
  ~ 精神・神経疾患の病態の理解と治療方法の解明に期待 ~

広島大学大学院医歯薬保健学研究科 橋本浩一教授、中山寿子元助教(現 東京女子医科大学助教)、森本千恵元大学院生、新潟大学脳研究所モデル動物開発分野 阿部 学准教授、同研究所 﨑村建司フェロー、東京大学大学院医学系研究科神経細胞生物学 飯田 忠恒特任助教、岡部 繁男教授らの研究グループは、脳の免疫細胞であるミクログリアが、小脳皮質の神経回路の生後発達に重要な働きをすることを明らかにしました。

これまでミクログリアは、神経回路が形作られる過程において、脳の働きに必要ないシナプスをマクロファージのように貪食して取り除くことにより、機能的に必要な神経回路の精緻化に関わることが報告されていました。しかし本研究の解析の結果、小脳皮質においてミクログリアは貪食ではなく、神経細胞との相互作用を介して神経回路の精緻化に関わる、という新しい知見を発見しました。

今回の解析は、ミクログリアの機能破綻が病態の一端を担うと考えられている神経変性疾患や自閉症、統合失調症などの精神疾患の病態理解や治療方法の解明に新たな切り口を与えると期待されます。

本研究は、科学研究費補助金、脳科学研究戦略推進プログラムのサポートを受けて実施され、研究成果は、イギリス時間の2018年7月19日英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。

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(2018/8/2)

軽度認知障害における認知機能低下の加速因子を同定

J-ADNI研究では、234名のものわすれを主体とする軽度認知障害の被験者の認知機能を、最長3年間追跡しました。そのなかで、認知機能の低下に関与する要素を様々な角度から検討し、性差、教育歴がその進行に対して影響をもつことを見いだしました。女性の軽度認知障害被験者の認知機能は男性に比べて速く悪化しました。教育年数の長い男性の被験者では悪化は緩徐でした。軽度認知障害の背景にはアルツハイマー病以外の疾患も含まれますが、J-ADNI研究で女性が早く悪化する原因は、アルツハイマー病の方が多く含まれていたためではありませんでした。女性の軽度認知障害の方が悪化し易い要因として、慢性腎臓病のグレードが高いことが見出されました。その理由として、長年の高血圧や動脈硬化によって脳の小血管の障害を来たすことが、認知機能障害の進行に関係することを想定しました。

PDFリリース文書[PDF:276KB](東大病院HP掲載)

(2018/7/17)

学校給食が野菜・果物摂取量の格差を9.9%・3.4%縮小

東京大学大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野 近藤尚己准教授らは、首都圏に住む小学生(4都市)719人を対象に、家庭の社会経済状況と子どもの野菜・果物摂取量の関連を分析しました。その結果、家庭の社会経済状況によって野菜摂取量と果物摂取量に違いがあることが明らかになりました。しかし、学校給食からの野菜・果物摂取量には差が見られませんでした。このことから、児童全員を対象とした日本の学校給食制度が、家庭の社会経済状況の違いによる野菜・果物摂取量格差を縮小する可能性が示唆されました。

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(2018/7/13)

分子モーターたんぱく質KIF21Bによる恐怖記憶の制御機構の解明

恐怖の記憶消去の異常は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などに重要な役割を演じているが、そのメカニズムはほとんど明らかになっていなかった。

東京大学大学院医学系研究科分子構造・動態・病態学講座の廣川信隆特任教授、細胞構築学分野の田中庸介講師、分子構造・動態・病態学講座の森川桃特任研究員らは、KIF21B分子モーターがシナプスの構造を制御するRac1タンパク質の制御分子ELMO1複合体をダイナミックに輸送してRac1タンパク質の「活性サイクル」を終結させ、シナプス伝達効率の「長期抑圧」を通して恐怖記憶が消去されることを解明した。 本研究チームがKif21b遺伝子を欠損したノックアウトマウスを開発したところ、Rac1タンパク質の活性化が長く持続し、場所につながる恐怖の記憶がほとんど消去できないPTSD様の症状を示した。 そこで、このノックアウトマウスにELMO1複合体の阻害剤CPYPPを投与してみると、野生型マウスとまったく同じように恐怖記憶を消去できるようになった。 この研究により、キネシン分子モーターのかかわるシナプス可塑性の新しい分子機構が解明されたことは、記憶の書き換え障害が関与するPTSD等の難治性精神疾患の治療に道を開くものである。

本研究成果は、「Cell Reports」で公開されました。

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(2018/6/27)

がん細胞のDNA修復能力を規定する新しい因子の発見

DNA修復能力の異常はがんの代表的な特徴ですが、どのようなメカニズムでその異常が引き起こされるかについては、まだ十分に明らかになっていません。

このたび、東京大学大学院医学系研究科の細谷紀子講師と宮川清教授らの研究グループは、生殖細胞関連タンパク質SYCE2が、体細胞でDNAが存在する細胞核内の環境を変化させることにより細胞のDNA修復能力を増加させることを発見しました。 SYCE2は生殖において大切なはたらきをする一方、正常体細胞では殆ど存在しませんが、がん細胞では増えることが多く、いわゆる「がん精巣抗原」と呼ばれることになります。 今回、そのがんにおけるはたらきを初めて示したことになり、今後このような現象を狙った新しいがん治療の開発が期待されます。

本研究成果は、EMBO、Rockefeller University、Cold Spring Harbor Laboratoryにより創刊された生命科学系オープンアクセス学術誌「Life Science Alliance」に2018年6月22日に掲載されました。 なお、本研究は、文部科学省新学術領域研究「動的クロマチン構造と機能」、日本学術振興会科学研究費補助金などの支援を受けて行われました。

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(2018/6/25)

ゼブラフィッシュのべん毛の構造解析から軸糸ダイニン構築メカニズムの一端を解明
  ~ 繊毛・べん毛の解析手法として新たな脊椎動物モデルを開発 ~

JST 戦略的創造研究推進事業において、東京大学 大学院医学系研究科の吉川 雅英 教授と同大学院理学系研究科の武田 洋幸 教授らは、遺伝子操作を行ったゼブラフィッシュの精子べん毛について、はじめてクライオ電子顕微鏡法を用いた微細構造解析を行い、軸糸ダイニン構築メカニズムの一端を明らかにしました。

繊毛、べん毛は単細胞生物から我々ヒトまで共通して存在する細胞小器官であり、精子の運動や、気管粘膜についたゴミの除去など、ヒトでも重要な役割を持っています。 従来、繊毛、べん毛の構造解析にはクラミドモナスなどの単細胞生物や、ウニなどの無脊椎動物が主に利用されてきました。 しかし、ヒトの繊毛、べん毛疾患(繊毛病)との関連から、よりヒトと遺伝子機能の共通性が高い、脊椎動物のモデル生物の開発も求められていました。

本研究グループは、実験動物としてすでに広く利用されている小型魚類ゼブラフィッシュに着目しました。ゼブラフィッシュはCRISPR/Cas9を用いた遺伝子操作技術が確立されており、また精子の採集が容易であるという点で、繊毛、べん毛の脊椎動物モデルとして優れた特徴を有しています。

本研究では、繊毛病の原因遺伝子であるKTU、PIH1D3と、そのたんぱく質ファミリー遺伝子(PIH1D1、PIH1D2)についてゼブラフィッシュの変異体を作製し、クライオ電子顕微鏡法を用いて精子べん毛の微細構造を解析しました。 その結果、変異体では繊毛、鞭毛のモーター分子である軸糸ダイニンの構築ができなくなり、精子の運動に異常が生じることを明らかにしました。

本研究から、新たにPIH1D1、PIH1D2の2つの遺伝子が、その機能とともに繊毛病の原因遺伝子として示唆されました。 脊椎動物モデルを使用した本成果は、繊毛病が生じるメカニズムを解明する上で、今後の研究に役立つ知見になると期待されます。

本研究成果は、2018年6月19日(英国時間)に国際科学誌「eLife」のオンライン版で公開されました。

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(2018/6/19)

胚が子宮内膜に浸潤する着床のメカニズムを解明
  ~ 胚浸潤を可能にする子宮内膜の低酸素誘導因子HIF2αの作用 ~

着床障害は生殖医療の大きな課題となっていますが、有効な診断・治療法は確立していません。 着床は、子宮内に入ってきた胚が子宮内膜と接着する過程(胚接着)と、その後に胚が子宮内膜に入り込む過程(胚浸潤)を経て成立します。 着床の成立にはこれらの過程において子宮と胚の精妙な相互作用が必須と考えられてきましたが、その仕組みの詳細はこれまでわかっていませんでした。 東京大学医学部附属病院の廣田泰講師らは、遺伝子改変マウスを用いた研究を行い、低酸素で誘導される転写因子である低酸素誘導因子(HIF)が子宮内膜で作用して胚浸潤の過程を調節していること、子宮内膜間質のHIFが重要な働きを持っており、子宮内膜管腔上皮をはがして子宮内膜間質を露出させ胚が子宮内膜間質に入り込みやすくすると同時に、子宮内膜間質が胚とじかに接することによって胚が生存できるよう働きかけていることを明らかにしました。 この結果、子宮というブラックボックスのなかで起こる着床の仕組みが解明され、着床障害による不妊の一因が明らかとなりました。 今後ヒト子宮内膜におけるHIFの作用を検討することで、今回の研究が着床障害の新規診断・治療法の開発につながっていくことが期待されます。

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(2018/6/19)

CTやMRIなどの医用画像を誰でも簡単に見ることができるモバイルアプリを無料リリース

東京大学医学部附属病院脳神経外科(教授:齊藤延人)の金太一助教の研究グループは、スマートフォンやタブレットコンピュータでCTやMRI、レントゲンX線検査など医用画像を手軽に閲覧できるアプリケーションを開発しました。

医用画像は一般の方には馴染みの薄いものです。自分自身の画像であってもじっくり見る機会もツールもありません。また、医師や医療従事者、医学生、研究者であっても、画像を見るためには難解な操作を要するソフトウェアを使用しなければなりません。しかし本アプリによって、これまで敷居の高かった医用画像情報が広く社会に行きわたり、一般の方の医学的知識の啓発や医用情報の正確な共有化、および医用研究開発の促進が期待されます。また、どこでも簡単に閲覧できることによって、遠隔医療、災害地や医療過疎地での医療の質の向上につながることが期待されます。

本アプリは2018年6月12日に株式会社Kompathから無料でリリースされます(2018年6月12日時点ではiPhoneおよびiPadにのみ対応しており、その他のスマートフォンやタブレットコンピュータには対応していません)。データの取り込みはiTunes経由で簡単に行えます。

なお、本研究成果は、国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「研究開発成果実装支援プログラム」 プロジェクト名「医師の高度な画像診断を支援するプログラムの実装」による成果の一部です。

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(2018/6/12)

日本の給食が肥満を減らす

我が国は、思春期の肥満率が低いことが知られています。 低い肥満率の理由の1つとして、給食が挙げられてきました。 これは、日本の小中学校の給食では、適切な栄養基準のもとで提供された同じ食事をその学校の全員が食べているからです。 しかし、それを支持するエビデンスはありませんでした。

東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学の宮脇敦士(博士課程大学院生)、李廷秀(特任准教授)、小林廉毅(教授)のグループは、まず、政府統計の公開データから、「2006年から2015年の都道府県(以下、県)レベルの給食実施率」、および「県レベルの栄養状態の指標(過体重・肥満・やせの生徒の割合、平均身長、平均体重)」を性・年齢別に抽出しました。 解析方法としては、パネルデータ分析の手法を用い、前年の栄養状態の指標、県・年齢・観測年などを考慮した上で、前年の県レベルの給食実施率と翌年の栄養状態の指標の関連を調べました。

解析の結果、県レベルの給食実施率が10%増加すると、翌年の過体重の男子の割合は0.37%(95%信頼区間 0.18-0.56)、肥満の男子の割合は0.23%(同 0.10-0.37)低下していました。 一方で、女子については、過体重・肥満を減らす傾向が見られたものの、統計学的に有意な結果ではありませんでした。 また、やせの割合や県レベルの平均体重、平均身長については、統計学的に有意な効果は認められませんでした。

本研究の結果から、学校給食プログラムを介した、適切な栄養基準に基づいた食事の提供は、思春期の肥満を減らす有効な施策の1つであると示唆されました。 本研究成果は英国の国際学術誌「Journal of Public Health」(2018年6月5日オンライン版)に掲載されました。

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(2018/6/7)

マルファン症候群の原因遺伝子FBN1の変異型が大動脈瘤・解離症の進展に及ぼす影響について

マルファン症候群は、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、大動脈(大動脈瘤や大動脈解離)や骨格(高身長・細く長い指・漏斗胸・側弯など)、眼(水晶体(レンズ)がずれる)、肺(気胸)などの多臓器に障害が発生する遺伝性疾患(常染色体優性遺伝)です。 マルファン症候群の患者の約90%以上でフィブリリン1(FBN1)遺伝子に変異があり、幼少期から大動脈の拡大(大動脈瘤)は年齢とともに進行しており、急性大動脈解離を発症すると生命予後や生活の質は著しく低下します。 そのため、大動脈瘤の進展速度を予測して対応することは、患者・家族にとって大変有益と考えられます。

東京大学医学部附属病院循環器内科の武田憲文助教(特任講師(病院))、小室一成教授、小児科の犬塚亮講師らは、日本人患者でのフィブリリン1の遺伝子型(種類)と主要な大血管障害(Stanford A型急性大動脈解離、大動脈基部置換術および関連死)の発症時期に関する実態調査を行い、比較的簡便な方法で、遺伝子異常を早発型(HI群とDN-CD群)と遅発型(DN-nonCD群)とに分類できることを明らかにしました。 本研究は、ゲノム情報などの個々人の違いを考慮して予防や治療を行う医療(プレシジョン医療)の推進に向けた成果であり、一生涯に渡って患者・家族が抱く強い不安や悩みを和らげるための情報を提供するのみならず、本症の治療法開発や病態生理の解明にも繋がる研究への発展が期待されます。

本研究は日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業「マルファン症候群における長期多系統障害増悪機構の解明と新規薬物療法開発に向けた研究(研究代表者:武田憲文)」の支援により行われました。

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(2018/6/4)

バストサイズや月経痛など女性特有の体質と関連の強い遺伝子領域を新たに発見!

東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 大須賀穣教授ら、株式会社スタージェン 鎌谷直之らのグループは、株式会社エムティーアイの子会社である株式会社エバージーンの遺伝子解析サービスのプラットフォームを利用し、エムティーアイが運営する『ルナルナ』ユーザーの女性ボランティアの協力により得た11,348人の遺伝情報を用い、22の女性特異的な体質に関して、大規模なゲノムワイド関連解析を行いました。

11,348人、約54万SNPの遺伝子情報と体質に関するWEBアンケートの結果を用いて、GWASを行い、バストサイズや月経痛など女性特有の体質と関連の強い遺伝子領域をそれぞれ発見しました。

今後は本研究にて得られた結果をもとに、さらなる研究を進め遺伝因子および環境因子の全貌が明らかになることで、個人の体質に合わせた月経中の痛みや発熱などの改善への取り組みが可能となり、また、女性特有の体質とそれに関連する疾患との関係性が明らかになることで、一人ひとりに合った情報やアドバイス、疾患予防法の選択が可能になることが期待されます。

本研究成果は、日本時間5月31日にScientific Reportsにて発表されました。

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(2018/6/1)

8Kスーパーハイビジョンカメラによって生きたマウスの脳活動を大規模に計測することに成功

東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻生理学講座細胞分子生理学分野の松崎政紀教授、吉田恵梨子大学院生、寺田晋一郎研究員、自然科学研究機構生理学研究所の小林憲太准教授、埼玉大学の中井淳一教授、大倉正道准教授らの共同研究チームは、従来のハイビジョンの16倍に当たる3300万画素を持つ8Kスーパーハイビジョンカメラを世界で初めて脳神経活動の計測に用いることで、運動中のマウス大脳皮質から、軸索終末とよばれる神経細胞の一部における活動を大規模に計測する事に成功しました。

脳の複雑な情報処理機構を明らかにするため、近年日・米・欧において脳機能の統合的理解を目指すプロジェクトがそれぞれ進行中ですが、詳細な脳活動の計測手法の開発はプロジェクト遂行において重要な位置づけにされています。 本研究成果は、脳内における微細構造からの脳活動計測の新たなる方向性を示したものであり、今後、脳全体の活動の計測に向けたさらなる発展に繋がります。 神経細胞の活動や細胞内の分子動態といった生命現象の高精細かつ高速な記録により、様々な疾患の理解とその治療法開発に貢献することが期待されます。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)『革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト』(平成27年度より文部科学省から移管)の一環として行われ、研究の成果はScientific Reports誌に掲載されました。

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(2018/5/29)

日本人におけるレアバリアントの心筋梗塞発症への関与を解明
  ~ コレステロール値・発症年齢に大きく寄与する遺伝子変化 ~

東京大学大学院医学系研究科 循環器内科の森田啓行講師と小室一成教授、東京大学大学院医学系研究科 医学博士課程/理化学研究所生命医科学研究センター 研修生(研究当時) の田島知幸、理化学研究所生命医科学研究センター 循環器疾患研究チームの伊藤薫チームリーダーと基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀チームリーダーは、大規模ヒトゲノム研究を行い、日本人における心筋梗塞発症と強く関係する遺伝子変化を明らかにしました。

心筋梗塞と関係するSNP(一塩基多型)に関してはこれまでにも多くの報告がありますが、それらが単独で臨床所見に与える影響は小さく臨床的有用性は未だ明らかになっていません。今回発見された遺伝要因は、SNPよりも頻度は低いもののインパクトはより大きな遺伝子変化「レアバリアント」(一般人口の5%未満に分布)です。

2つの脂質関連遺伝子LDLRおよびPCSK9に起こるこの遺伝子変化は単独で血液中のLDLコレステロール値を規定し、心筋梗塞発症リスク、さらには心筋梗塞発症年齢にも影響を及ぼします。脂質異常症と関連するLDLRおよびPCSK9のレアバリアントを有する個人を血中脂質上昇前の早期に割り出すことにより、特にその個人を対象に積極的脂質降下療法を開始し将来の心筋梗塞発症を抑えることが可能となります。今回の知見は、近未来のゲノムガイド精密医療開発に大いに貢献すると考えられます。

本研究成果は、日本時間5月25日にScientific Reportsにて発表されました。なお本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)オーダーメイド医療の実現プログラム「疾患関連遺伝子等の探索を効率化するための遺伝子多型情報の高度化」(研究代表者:久保 充明 理化学研究所統合生命医科学研究センター・副センター長)等の支援を受けて行われました。

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(2018/5/28)

霊長類の大脳皮質で運動課題中の多細胞活動を2光子カルシウムイメージングで長期間・同時計測することに成功

東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻生理学講座細胞分子生理学分野の松崎政紀教授、蝦名鉄平助教、正水芳人助教、川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科の彦坂和雄教授、自治医科大学分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部の水上浩明教授、自然科学研究機構生理学研究所生体システム研究部門の南部篤教授、実験動物中央研究所マーモセット研究部の佐々木えりか部長、理化学研究所脳神経科学研究センター高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーらの研究チームは、霊長類コモン・マーモセットのための手を使って道具を操作する運動課題用装置と課題の訓練方法を開発し、2光子顕微鏡という脳の比較的深い層まで生きたまま“見る”ことができる顕微鏡で運動中のマーモセット大脳皮質から運動に関連した神経細胞の活動を計測する事に成功しました。

マーモセットはヒトと似た生体機能を持っており、遺伝子改変動物を含む疾患モデルの開発が積極的に進められています。今回の開発によって、認知や行動などヒトの高次脳機能の神経ネットワーク基盤の理解が大きく進展すると考えられます。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)『革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト』(平成27年度より文部科学省から移管)の研究開発課題「脳科学研究に有用性の高い遺伝子改変マーモセットラインの創出と普及」として行われました。本研究の成果は5月14日にNature Communications誌に掲載されました。

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(2018/5/15)

反復配列RNAの異常発現が膵癌発生を促進するメカニズムをマウスで確認

膵癌は抗癌治療の発展した現在においても予後不良であり、難治癌の代表的存在として知られています。この発癌の過程において、単純な塩基配列の繰り返しで構成される「反復配列RNA」と呼ばれるタンパク質情報を持たないRNA(ノンコーディングRNA)が、癌になる前段階から異常に発現していることが明らかになってきました。

東京大学医学部附属病院 消化器内科の岸川孝弘(留学中)、大塚基之 講師、小池和彦 教授らの研究グループは、以前、マウスの膵臓の良性腫瘍から樹立した細胞を用いて研究を行い、これまで機能を持たないと考えられてきた反復配列RNAの一種であるMajSAT RNAと呼ばれる「サテライト配列由来のRNA」がYBX1というタンパク質と結合すると、YBX1のもつDNAダメージ修復機能を阻害して、突然変異の蓄積を促進、細胞を癌化させることを見出しました(Kishikawa et al. Nat Commun 2016;7:13006)。

今回は、新たにMajSAT RNAを恒常的に発現するマウスを作製し、このマウスで膵臓に炎症を惹起したところ、膵組織内のDNAダメージが増え、さらに膵特異的Kras遺伝子変異マウスとの交配で膵臓の前癌病態の形成が促進されることを確認しました。これらの結果は、以前に、細胞レベルの検討で見いだした、反復配列RNAが「細胞内変異原」として機能し、発癌プロセスを進める重大な働きをしていることを生体でも確認したことになり、発癌機序の解明、発癌予防という観点からも重要な成果であるといえます。

本研究成果は、日本時間5月10日にMolecular Cancer Research(Online First)にて発表されます。なお、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)次世代がん医療創生研究事業「次世代の診断・治療・予防法の創生をめざした膵がん特異的リピートRNAの新規探索と応用」、「血中反復配列RNAの高感度測定による癌の早期診断と囲い込み法の開発」および文部科学省科学研究費補助金等の支援により行われました。

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(2018/5/11)

J-ADNI研究によりアルツハイマー病早期段階(軽度認知障害)の進行過程を解明

高齢化とともに本邦で急増しているアルツハイマー病(AD)の根本治療薬開発は急務です。 今後の予防・治療の対象として重要な軽度認知障害(MCI)などの早期段階を、画像診断やバイオマーカーを用いて精密に評価するAlzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)研究が米国で進み、本邦でもJ-ADNI研究が推進されてきました。 J-ADNI研究の主任研究者を務める東京大学大学院医学系研究科の岩坪威教授らのチームは、今回J-ADNIの全結果を詳細に解析し、アミロイドPET画像法などの最新技術によって診断された、ADを原因とするMCIについて、その症状や進行速度などの特徴が米国ADNIのMCIに極めて類似していることを明らかにしました。 J-ADNI研究では全国で総数537例、うちMCI 234例が3年間にわたり追跡され、今回米国ADNIチームと共同でデータの比較解析が行われました。 MCIからADへの進行過程の自然経過に日本人と欧米人で高い共通性が示され、AD根本治療薬の治験においても、認知症期よりもまだ進行のスピードが遅いMCIなどの早期段階で、治療薬の効果を精密に評価できる技術が確立しました。 これにより本邦のADの予防・治療薬開発が加速されるものと期待されます。

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(2018/5/10)

B型肝炎ワクチンの効果に影響を与える
  ~ HLA-DRB1-DQB1ハプロタイプとBTNL2遺伝子」 ~

世界の180カ国以上でB型肝炎ウイルス(HBV)に対してB型肝炎ワクチン(HBワクチン)接種が行われている。 HBワクチンの1つであるビームゲンはHBVの遺伝子型C由来であり、日本で主に使用されてきた。 しかしビームゲン接種者のうち、約10%はその中和抗体であるHBs抗体を十分に獲得できないという問題があった。 国立国際医療研究センターを研究代表施設とする多施設共同研究において、成人日本人1,193例を対象としたゲノムワイドSNPタイピングを実施し、ワクチン低反応群(107例)、ワクチン中反応群(351例)、ワクチン高反応群(735例)の3群に分けてゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施した。 ワクチン低反応群と高反応群を比較した結果、HLA class III領域に存在するBTNL2遺伝子が有意な関連を示した。 一方で、3群を比較すると、HLA class II領域に存在するDRB1-DQB1遺伝子とDPB1遺伝子がそれぞれワクチン応答性に関連することを明らかにした。 次に、ゲノムワイドSNPタイピングデータを用いてHLA imputationを実施し、HLAアリルおよびハプロタイプとHBワクチン効果の関連を詳細に解析した。 HLAアリルおよびハプロタイプの頻度をHBワクチン低反応群とB型慢性肝炎患者群で比較した結果、HBワクチン応答性に特異的に関わるDRB1-DQB1ハプロタイプが存在することを見出した。 さらにHBワクチン高反応群と健常対照群について同様の比較をした結果、HLA class II遺伝子(DR-DQ、DP)はワクチン高反応に有意な関連を示さなかった。 ワクチン高反応群と低反応群のGWASでBTNL2遺伝子が検出されたことから、BTNL2遺伝子はワクチン高反応に関連すると考えられる。 本研究により特定のHLA-DR-DQ分子によるHBs抗原の認識(ワクチン低反応)、およびBTNL2分子によるT細胞やB細胞の活性制御(ワクチン高反応)がHBワクチンの効果に重要な役割を果たすことが明らかとなった。 本研究の成果をもとに国際共同研究を進めることで、ユニバーサルワクチネーションが行われている日本やその他の国において、HBワクチンの適正かつ効率的な使用方法の確立が期待できる。
本研究成果は、米国日時3月14日にHepatology(オンライン版)に掲載された。

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(2018/4/5)